第1回 全国健康保険協会(協会けんぽ) 【後編】
木村:保健指導の実態:1人あたりの実施時間についてお伺いします。
六路:保健指導の実施時間は、平均で30分程です(保健師専用パソコンからの実施時間報告より算出)。しかし実際には、初回面談の際、特定保健指導の制度説明を行うことも多く、指導時間は限られているのが現状です。また、制度周知ができるよう案内を事前に配布してもなかなか読んでくれず、説明に苦労することが多いのが実状です。
木村:よくわかります。私も健診機関に勤めていたときは、現場の有資格者の作成する文書や案内を、一般の方々(企業担当者等)に説明する時は苦労しました。あれもこれもと、文章に詰め込みすぎてしまうのですよね(笑)むしろ簡単な絵と、数値比較・効果、金額だけの方が、お客様(担当者や受診者)は読んでくれます。
わかりやすいものを、企画競争で新たに作成することもいいのではないでしょうか。他業種や保健指導を知らない方々が、素人目線で作成する方が良い案内ができるかもしれません。
アメリカのヘルシーピープル2010に記載されていますが、「ヘルスコミュニケーションは、『わかりやすさ』が一番大切だと唱われています。協会けんぽとして、受診者目線のわかりやすいアナウンスに挑戦していくことはいかがでしょうか。
特定保健指導の説明だけで貴重な指導時間が割かれるのであれば、事前周知でもっとシンプルに制度を伝えられるような案内を実現することで、ROI(投資対効果)も見えてきますよね。
六路:おっしゃるとおりですね。さっそく検討してみましょう。
また、協会けんぽは、加入者と健保の感覚的なキョリが遠いと感じます。みんなが頑張れば、医療費抑制につながるといっても、他人事と見なされ、事業主の協力を得るのが困難な現状です。
参考資料:全国健康保険協会
木村:ポピュレーションアプローチとして医療費ではなく、経営にメリットがあることを伝える必要がありますね。後ろ向きではなく前向きなメッセージとして。
メンタルヘルスでいえば、傷病手当金やプレゼンティーズム等。「健康経営」がより数値化され、シンプルに事業主が予防医療に注目できるアプローチがほしいところですね。
六路:事業主の協力姿勢を得ることが課題です。やはり移動等の長さのキョリより、対人間としての関係性のキョリを改善するほうが重要だと思います。
木村:保健指導の実態:運用についてはいかがですか。
六路:3割以上が同じ顔ぶれです。実施率30%ということは、ほぼ協力してくれる事業所の対象者は同一対象者にならざるを得ませんし、地方は対象者の母数が少ないことから、毎年同じ顔ぶれにならざるを得ません。支部から本部には、「保健指導実施を義務にしてほしい」といった声も届きます。
「全国健康保険協会(協会けんぽ)」もくじ
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