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乳がんの原因遺伝子を解明 日本人1万8,000人のデータベースを構築
2018年10月31日
理化学研究所は、乳がんの原因とされる11の遺伝子について、世界最大規模の合計1万8,000人以上のDNAを解析し、日本人遺伝性乳がんの「病的バリアント」データベースを構築したと発表した。
乳がんの原因となる遺伝子を解析
ヒトのDNA配列は30億の塩基対からなり、その配列の個人間の違いを遺伝子バリアントという。そのうち、がんなどの疾患の発症原因となるのが「病的バリアント」。
乳がんは、日本人女性で最も患者数の多いがんであり、12人に1人の割合で罹患することが知られている。
乳がんの発症には、飲酒や肥満、身体活動度などの生活習慣要因だけではなく、遺伝的要因も大きく寄与している。乳がん患者の5~10%は病的バリアントが原因になると推定されている。
患者の近親者や家族内に多くの乳がん患者がいる女性に遺伝子検査を実施し、病的バリアントをもっていることが分かれば、乳がんの早期発見や治療につながる可能性がある。
遺伝子検査により2013年、米国の女優アンジェリーナ・ジョリーさんが病的バリアントを持っていることが判明し、乳がん・卵巣がんともに発症しやすさが通常の10倍以上になることから、乳房と卵巣を切除したことが話題となった。
日本では、遺伝子検査を受けたのは数千人にとどまる。その理由のひとつは、遺伝子バリアントは人種によってその頻度が大きく異なり、日本人の情報が非常に少ないことだ。
病的バリアントは人種によって大きく異なるため、日本人独自のデータベースの構築が求められている。
日本人独自のデータベースを構築
そこで研究チームは、1万8,000人の日本人のDNAを用いた世界最大規模の解析を行い、乳がん患者における病的バリアントが明らかにした。研究が進めば、患者1人ひとりにあった「ゲノム医療」の体制を構築できる可能性がある。
今回、研究グループは11の原因遺伝子について、バイオバンク・ジャパンにより収集された日本人の乳がん患者群7,051人および対照群1万1,241人のDNAを、独自に開発したゲノム解析手法を用いて解析した。
その結果、244個の病的バリアントを同定するとともに、日本人に多い病的バリアント、遺伝子ごとの乳がんのリスク、病的バリアントを持つ人の臨床的特徴などを明らかにした。
患者1人ひとりにあったゲノム医療を目指す
これらの解析結果は、病的バリアントデータベースとして構築されており、今後、そのサマリー情報は国内外の公的データベースにも登録され、活用される予定だ。
今回の研究成果について、研究グループは、「他の種類のがんについても同様の手法を用いて大規模解析を行っていくことで、患者1人ひとりにあったゲノム医療が可能となると期待できる」と述べている。
この研究は、理化学研究所生命医科学研究センター基盤技術開発研究チームの桃沢幸秀チームリーダー、統合生命医科学研究センターの久保充明副センター長(研究当時)らの国際共同研究グループによるもの。成果は英科学雑誌「Nature Communications」オンライン版で公開されている。
理化学研究所統合生命医科学研究センター
Germline pathogenic variants of 11 breast cancer genes in 7,051 Japanese patients and 11,241 controls(Nature Communications 2018年10月4日)
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