喫煙環境を全国調査 第一種施設の約86%が敷地内全面禁煙に-「喫煙環境に関する実態調査」より

厚生労働省はこのほど「喫煙環境に関する実態調査」を実施。
全国の施設を対象に受動喫煙対策の実施状況を調べたところ、学校や医療機関など「第一種施設」の約86%が敷地内全面禁煙を実施していることがわかった。
たばこを吸わない人も、他人のたばこの煙を吸い込んでしまう「受動喫煙」。受動喫煙が人々の健康に与える影響は大きく、がんや循環器疾患の原因となることが指摘されている。
このような健康リスクを減らそうと、政府は受動喫煙対策を強化。その柱となる「健康増進法」は2002年(平成14年)の施行以降、施設管理者に対して、受動喫煙を防ぐための措置を講じる努力義務を課すなどしてきた。
2018年(平成30年)には健康増進法の一部を改正する法律(以下、「改正法」)が成立。これにより、2019年(令和元年)7月の一部施行では、学校や病院など子どもや患者が主に利用する「第一種施設」において、敷地内禁煙が義務づけられた。さらに2020年(令和2年)4月の全面施行により、第一種施設および喫煙目的施設以外の、飲食店やオフィスなど多数の人が利用する施設(第二種施設)については、原則として屋内禁煙となっている。
このような中、調査は令和5年12月末時点の喫煙環境の実態を調査することを目的に実施された。調査対象は総務省の事業所母集団データベース(令和3年)をもとに、喫煙環境が類似する27産業区分から、全国の事業所・企業・法人・団体・地方公共団体など2万468施設を層化無作為抽出し回答を依頼。このうち有効回答数は9,026施設で、有効回答率は44.1%だった。
調査の結果、学校、医療施設、児童福祉施設、行政機関等(第一種施設)で、火をつけて喫煙するたばこや加熱式たばこを「敷地内全面禁煙」にしている施設の割合は、全体で85.7%。
施設の種別で見ると「病院」が100.0%で最も高く、「一般診療所、歯科診療所」は93.8%。
学びの場においては、「幼稚園、幼保連携型認定こども園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校」が95.8%だった一方、「専修学校、各種学校、職業・教育支援施設」は72.7%、「大学院を除く高等教育機関(大学、短期大学)」は72.1%にとどまった。
敷地内全面禁煙にしていない第一種施設のうち、特定屋外喫煙場所を設置している施設の割合は全体の 75.9%だった。
施設種別で見ると「大学院を除く高等教育機関(大学、短期大学)」は100.0%、「行政機関」は93.4 %、「専修学校、各種学校、職業・教育支援施設」は90.5%で、特定屋外喫煙場所の設置を進めていることがわかる。
一方、一般施設・事業所、飲食店(第二種施設)のうち、火をつけて喫煙するたばこを屋内全面禁煙にしている施設は全体の73.7 %で、喫煙専用室を設置している施設は11.0 %だった。
屋内全面禁煙かどうかを聞いた施設の中で、割合が低かったのは「パチンコホール」(10.4%)、「バー、キャバレー、ナイトクラブ、スナック」(21.9%)、「マージャンクラブ」(25.3%)などとなっている。
喫煙専用室を設置している施設として、高い割合だったのは「パチンコホール」(89%)、「空港旅客ターミナル」(69.8%)、「競輪・競馬等の競走場、その他の遊戯場、その他の娯楽施設」(40.9%)など。
加熱式たばこを屋内全面禁煙としている施設は全体の73.3%で、喫煙専用室で加熱式たばこの喫煙も可としている(喫煙のみ、飲食等は不可)施設は9.4%だった。
国の法規制に加えて、自治体独自でより厳しいルールを設ける動きもある。
大阪府では府民の健康を守ることを目的に、改正法を上回る基準の「大阪府受動喫煙防止条例」を2019年3月に制定。望まない受動喫煙を生じさせることのない環境づくりを進めている。
2025年(令和7年)4月1日から大阪府受動喫煙防止条例は全面施行となり、これまで飲食しながら喫煙できた飲食店のうち、客席面積が30平方メートルを超える飲食店は「原則屋内禁煙」とルールが変わった。
今回の調査により、病院や学校などの第一種施設では敷地内全面禁煙が広く浸透している一方、屋外喫煙所を設ける形で対応している様子もわかった。また、飲食店や遊興施設では屋内禁煙の実施率にばらつきがあり、業種間で対策の進捗に差があることも明らかになった。今後は、施設の性質や利用者の特性を踏まえたうえで、より実効性のある受動喫煙防止策が求められる。
令和5年度喫煙環境に関する実態調査の概況(厚生労働省) 大阪府の受動喫煙防止対策

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