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体幹筋量が減ると「腰痛」は悪化 日常生活の動作が困難に 世界で初めて大規模データで解明

 「立ち上がる時に腰や背中が痛む」「起き上がるのが辛い」「足腰が重い」「頭痛がする」――。多くの人が腰痛に悩まされている。
 体幹筋量が腰痛に関わることを大阪市立大学の研究グループが世界ではじめて大規模データで解明した。
 体幹筋量が少ないほど、腰痛などは悪化することが明らかになった。
体幹筋の衰えが腰痛の原因に
 腰痛は日常生活を障害する主な病因のひとつで、日本人の腰痛の生涯有病率は83%とされている。超高齢社会を迎えた日本で、要介護を防ぎ、健康寿命を延伸することが喫緊の課題となっており、運動器疾患の克服は重要だ。

 高齢者の主な腰痛の原因として腰曲がりがあり、近年脊柱バランス不良を矯正する手術が広まってきている。しかし、こうした手術は侵襲や合併症の問題があり、高齢者の腰痛を根本的に解決する手段とはいえない。

 そこ大阪市立大学の当研究グループは、背筋や腹筋を中心とした体幹筋に着目し、調査を行った。体幹筋は背骨を支えるうえで非常に重要な役割を果たしており、体幹筋量は体組成計を用いて簡便に測定できる。

 体幹筋とは、体の中心となる腹部の筋や背部の筋などのことで、体を安定させるために必要だ。体幹筋が衰えると、日常生活の動作が困難になっていく。

 体幹筋機能の低下は腰痛や腰椎機能の低下、脊柱バランス不良、さらにはQOL低下につながることが予想されるが、これまでに体幹筋量と腰椎機能や脊柱バランスとの関連を調査した報告はなく、体幹筋量の臨床的意義は明らかになっていなかった。
体幹筋量が減少するにつれ腰痛の影響が拡大
 研究グループは体幹筋量の臨床的意義を明らかにするために、千葉大学、北里大学と共同で大規模な多施設研究を計画し、各施設の脊椎外来通院患者2,551例のデータを横断的に調査した。

 このうち、体内に金属を有する者、30歳未満の人を除いた1,738例(平均年齢70.2歳、男性781例、女性957例)を対象とし、体幹筋量と「ODI」、腰痛の「VAS」、「SVA」、「EQ5D」との関連を調べた。

 ODIは腰痛が日常生活に与える影響を評価する指標、VASは痛みの程度を本人に直接表現してもらう指標、SVAは第7頚椎から引いた垂線と仙骨後上縁との距離で、腰曲がりによって第7頚椎垂線が前方にシフトしてくる長時間の立位や歩行が困難となるとされている。EQ5Dは健康関連QOLの尺度となる調査表。

 その結果、体幹筋量は腰痛による生活障害度(ODI)と有意な関連を示し、体幹筋量が減少するにつれODIが悪化することが分かった。同様に体幹筋量が少ないほど、腰痛(VAS)、脊柱後弯(SVA)、健康関連QOL(EQ5D)も悪化した。
体幹筋量を減らさないトレーニングが必要
 体幹筋を鍛えるために、ヒップリフト、クランチ、仰向けでももを上げる運動など、下半身に負荷をかけて行うトレーニングが効果的だ。

 体幹の働きがよくなることで日常的な身体活動や運動において、より軽やかに効率良く動けるようになると期待される。

 最近のフィットネスクラブなどでは、高齢者向けのメニューを実施しているところが増えている。

 今回の研究では、脊椎病態では体幹筋量が重要な因子であり、QOLとも関連していることが判明した。大規模データを用いて体幹筋量の臨床的意義を解明した研究は世界ではじめてだ。

 ただし、体幹筋量が減少した結果、腰痛や腰曲がりが発生するのか、腰痛や腰曲がりの結果、体幹筋量が減少するのかは明らかになっていない。研究グループは、縦断研究を行い、これらの因果関係をつきとめたいとしている。

 研究は、大阪市立大学大学院医学研究科整形外科学の堀悠介氏、星野雅俊氏、中村博亮教授らの研究グループによるもの。詳細は医学誌「European Spine Journal」に掲載された。

大阪市立大学大学院医学研究科整形外科学
clinical importance of trunk muscle mass for low back pain, spinal balance, and quality of life--a multicenter cross-sectional study(European Spine Journal 2019年2月6日)
[Terahata]
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