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女性の認知症を防ぐために 女性ホルモンの分泌期間が短いと認知症リスクは上昇

 初経年齢が遅い、あるいは閉経年齢が早いなど、女性ホルモンであるエストロゲンに曝露する期間が短いほど、女性は認知症を発症するリスクが高まる可能性があることが明らかになった。
女性の認知症リスクを減らすために
 「女性は男性に比べ、生涯に認知症を発症するリスクが50%高いという報告があります。女性の認知症のリスクを上昇させる要因について調べ、介入できるポイントを突き止めることが必要です」と、カイザー パーマネンテの研究部門のパオラ ギルサンツ氏は言う。

 研究チームは、米カイザー ヘルスケアシステムに1964~1973年から登録を開始し、診療記録のある女性1万5,754人を対象に、エストロゲン曝露期間と認知症リスクとの関連を調べた。

 対象となった女性に、中年期(平均年齢で51.1歳)の時点での、初経年齢と閉経年齢、子宮摘出術の施行歴について尋ね、妊娠可能な年数を算出した。

 また、認知症の診断歴については、1996年から2017年までの診療記録から抽出した。
エストロゲンの曝露期間が短いと認知症になりやすい
 その結果、参加者の初経年齢の平均は13歳、閉経年齢の平均は45歳で、生殖年齢の平均は32年であることが分かった。

 参加した女性の34%が子宮摘出術を受けており、子宮摘出術を受けていない女性に限ると、閉経年齢の平均は47歳であり、生殖年齢の平均は34年だった。

 期間中に、参加した女性の42%が認知症と診断された。解析した結果、初経年齢が平均で13歳だった女性と比べて、16歳以降だった女性では認知症リスクは23%上昇した。

 同様に、自然閉経を迎えた年齢が47.4歳未満だった女性では、それ以降だった女性と比べて認知症リスクは19%高いことも明らかになった。

 さらに、生殖年齢が34.4年未満だと認知症リスクは20%上昇し、子宮摘出術を受けるとそのリスクは8%上昇した。

 喫煙、糖尿病、高血圧などの認知症の女性のリスクに影響を及ぼす他の要因を調整した後でも、こうした傾向は変わらなかった。
エストロゲンが脳の神経を修復
 「女性の生涯を通じて、女性ホルモンのエストロゲンのレベルは上下する可能性があります」とギルサンツ氏は言う。

 「調査結果は、生涯にわたりエストロゲンの曝露期間が短いほど認知症になりやすいことを示しています」。

 これは従来の研究を裏付けるもので、エストロゲンがエストロゲンが脳の神経の修復に有利に働くのではないかと考えられている。

 さらに、「今回の研究は規模が大きいものですが、妊娠、ホルモン補充療法、経口避妊薬の服用など、女性のエストロゲン曝露に影響を与える他の因子について、さらに調査が必要です」としている。

 なお、女性の更年期障害の治療法として、不足したエストロゲンを補う「ホルモン補充療法」が行われることが多いが、この治療だけでは認知症の予防効果が乏しいという研究も報告されている。

 認知症の多くは、生活スタイルを改善し、健康的な生活をおくることで予防が可能であると考えられている。女性の認知症を予防するための効果的な方法の開発が求められている。

Fewer reproductive years in women linked to an increased risk of dementia(米国神経学会 2019年3月27日)
Reproductive period and risk of dementia in a diverse cohort of health care members(Neurology 2019年3月28日)
[Terahata]
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