オピニオン/保健指導あれこれ
高齢者の外出、移動の問題を考える

No.1 運転免許証の返納だけで問題は解決するのか?

医療・保健ジャーナリスト
西内 義雄

 道路交通法が変わりました

 高速道路の逆走やアクセルとブレーキの踏み間違いなど、高齢ドライバーによる交通事故多発問題を耳にする機会が増えています。これを未然に防ぐため、今年3月より施行された改正道路交通法は、従来より実施していた高齢者講習予備検査(認知機能検査)に加え、臨時認知機能検査や臨時高齢者講習制度が新設されました。

 臨時認知機能検査とは、75歳以上の方が認知機能が低下した場合に行われやすい一定の違反行為(信号無視、通行区分違反、交差点優先車妨害など18基準行為)をした場合に受けるものです。検査結果が前回より低下、もしくは運転に影響を及ぼすおそれがあると判断されると、臨時高齢者講習を受けるか医師の診断書提出命令などが出され、必要に応じ運転免許停止や取消しまで行うことになったわけです。

 ほか、自主的に免許を返納することを選んだ高齢者には写真付き証明書として使える「運転経歴証明書」を発行したり、返納すると地元の公共交通機関が割引になるなどのサービスを導入する自治体の話題も増えています。いずれも、高齢で運転に不安があるなら「自主的に免許を返納してください」とのメッセージが含まれているようです。

 地方の高齢者の足はどうなる?

 これらの制度により、都心では高齢者の認知機能低下による事故はある程度減ると思われます。しかし、地方は都心のように電車やバスなどの公共交通機関が整備されていないため、車を運転できない=外出の機会を奪うことに繋がってしまいます。

 たとえば、一般的な市街地で「車で10分」というと「近い」という感覚になるものです。しかしその距離は5㎞前後あるわけで、歩いたら約1時間。高齢者ならもっとかかるため、気軽に行ける距離でないことはお分かりいただけると思います。

 参考までに自転車で5㎞の距離を走ると、一般成人なら約20分、高齢者だ25分以上かかります。歩くよりマシと思えるものの、車の免許を返納するような高齢者がこの距離を自転車で走ることは、かなり不安がつきまといます。

 実際、皆さんもきっとフラフラと蛇行したり、左側通行を守らず車道の右側を逆走してくる高齢者(に限りませんが)の自転車をよく見かけているはずです。停車したときにバランスを崩し、転びそうになることも珍しくありません。

 保健指導従事者は何をすべきか

 前置きが長くなりました。ここからが本題です。

 保健指導従事者と高齢者の移動問題は「健康維持」や「介護予防」というキーワードで繋がっています。なので、まずは高齢になっても体力や認知機能が落ちないような事業を展開していくべきですし、実際にそれは各地で行われています。ところが、

・いつも同じ人しか来ない
・男性の参加が少ない
・本当に(指導・支援が)必要な人は来ていなくて、元気な人だけが来ている
といった指摘があります。

 そして、参加しない高齢者になぜ行かないのか尋ねると
・興味が沸かない
・女性ばかりで行きづらい(男性)
・集団が好きじゃない
・健康維持とか介護などのネーミングに拒否反応
・会場まで行くのが大変
などの理由があがります。

 私のよく知る90代の男性は通所リハビリなどの事業に対し
「あんな年寄りだらけの中に行っても面白くない」
と言い切りますし、

 別の80代女性は
「話が合わない」
「自分はまだそんな年じゃない」
との理由で拒絶します。

 一度試してみればと誘っても、完全否定します。自分の老いを認めたくないこと、最初に足を踏み入れるのに想像以上の抵抗があることが伝わってきます。

 中には一度体験してみたけど「やっぱりつまらなかった」で感想を持ち、より頑なになる人もいます。*その逆もありますけどね。

 要は、効果のあるなしよりも、高齢者がそこに「行きたいと思えるような魅力を感じられない」ことが問題と思うのです。あるいは「明るく楽しいイメージがもてない」と表現したほうが的を得ているでしょうか。

 参加してもらわなければ何も始まりません。もっと個々の興味を引くようなものを、あらゆるアンテナを駆使して拾い集め、より魅力的な事業にしていくことが、大切だと思うのです。

 そこで次回は、行政と民間企業などがタッグを組み、魅力あふれる事業を展開している例をご紹介しながら打開策を考えていくことにします。

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