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【国際女性デー】女性と男性はストレスに対する反応が違う メンタルヘルス対策では性差を考慮したアプローチを

 3月8日は「国際女性デー」だ。女性の健康を高め、ジェンダー不平等をなくすために、世界中でさまざまな取り組みが行われている。

 ストレスに対する反応は、女性と男性では異なり、女性はとくにストレスの影響を受けやすいという研究が発表された。

 女性のストレスを軽減し幸福を高めるために、社会的つながりを維持し、ソーシャル サポート(社会的支援)を提供することが必要であることが示された。

 女性は、心理社会的ストレスが多すぎると、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患のリスクが上昇することも明らかになっている。

ストレスに対する反応は女性と男性では異なる

 3月8日は「国際女性デー」だ。女性の健康を高め、ジェンダー不平等をなくすために、世界中でさまざまな取り組みが行われている。

 ストレスに対する反応は、女性と男性では異なるという研究を米フロリダ大学が発表した。

 「急性ストレスに対して、男性は外向きで攻撃的な反応を示すことが多いのに対し、女性は内向きに捉えることが多いと言えます」と、同大学薬学部のマルコ ボルトラート氏は述べている。

 「ストレスは不安症やうつ病のリスクを高め、女性の方がそうしたメンタルヘルス不調を経験することが多いことが知られています。ストレス対策でも性差に配慮することが必要です」としている。

 研究グループは、脳が合成する神経ステロイドが、ストレス負荷により変動することに着目し、それを生成する能力を調整することで、うつ病などのストレスに関連する障害を改善する治療法の開発に取り組んでいる。

女性は緊張やストレスに対して異なる反応を示す
メンタルヘルス改善のために社会的側面も考慮した支援が必要

 女性と男性は緊張やストレスに対して異なる反応を示すことが、ドイツのヴュルツブルク大学の調査でも示された。

 新型コロナのパンデミック期には多くの人が、行動の制限を受けた。在宅勤務が増え、コロナ対策は仕事への不安や家族への心配など、多くの人にストレスを与えた。

 研究グループは、新型コロナが拡大していた2020年6月~10月に、34歳~85歳の女性 1,520人と男性 1,370人を対象に調査を実施した。

 参加者に、メンタルヘルスに関する詳細な質問に回答してもらい、社会・職場・家庭環境についてや、悩みを相談できる人がいるかなどについても答えてもらった。

 その結果、「男性がストレスを感じやすいのは仕事に関してが多いのに対して、女性は家族や友人などとの強い結びつきを重視している傾向が示されました」と、同大学精神・心身医学部のグリット ハイン教授は言う。

 女性は家族をないがしろにしていると感じると、より大きなストレスを感じやすく、友人や家族などからサポートを受けられていると、心理的にうまく対処できる傾向が示された。

 「これは、ストレスを軽減し幸福を高めるために、密接な社会的つながりを維持し、ソーシャル サポート(社会的支援)を求める傾向が強いという、伝統的な女性の家族の役割と一致しています」と、ハイン教授は指摘する。

 「女性と男性のメンタルヘルスを改善するために、治療介入では社会的側面も考慮する必要があります」としている。

アルコール指導も性差を考慮して行うことが必要

 飲酒のコントロール障害に対するストレスの影響について、女性に関しては十分に解明されておらず、アルコール指導も性差を考慮して行うことが必要という別の研究を、米アリゾナ州立大学が発表している。

 これまでアルコール乱用は女性よりも男性で多いとみられていたが、最近では過剰なストレスを経験する女性が増えており、アルコール関連の障害は女性でも珍しくなくなった。

 研究グループは、105人の女性と、105人の男性を対象に、ランダム化比較試験を実施。その結果、ストレスにさらされると参加者全員の飲酒量は増えたが、とくに女性では過剰なストレスを経験することが大量飲酒につながりやすいことが示された。

 「アルコール摂取がもたらす結果は、男性と女性で同じではありません。男性向けに開発されたモデルを女性のために使い続けるのは適切ではありません」と、同大学のソーシャル依存症研究所のジュリー パトック ペッカム氏は言う。

 「ストレスを管理し飲酒のコントロール障害を改善する、女性のための効果的な治療法の開発が必要です」としている。

心理社会的ストレスは女性の狭心症や心筋梗塞などリスクを高める
 女性は、困難な環境への対処が難しいときなどに生じる心理社会的ストレスが多すぎると、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患のリスクが大幅に高まることが、大規模な調査で明らかになっている。

 研究グループは、米国で実施されている大規模調査「女性の健康イニシアチブ研究」に参加した、閉経後の女性8万825人を14年以上追跡したデータを解析した。

 その結果、冠動脈疾患の発症リスクは、生活上のストレスが多い女性では12%、社会的なストレスの多い女性では9%、それぞれ増加した。

 「配偶者との死別、離婚や別居、家庭での介護、身体的あるいは言葉による虐待、社会的ストレスなど、ストレスの多い出来事は、冠動脈疾患のリスクを高めることが示されました」と、ドレクセル大学公衆衛生大学院のイボンヌ マイケル氏は言う。

 「とくに家庭でのストレスに、仕事上のストレスや社会的ストレスが合わさると、冠動脈疾患のリスクは21%高くなりました。女性の健康を気づかう人達にとって、ストレスが健康に及ぼす影響を考慮することは重要です」としている。

UF scientists find key differences in male, female responses to stress (フロリダ大学 2025年2月6日)
Prefrontal 5α-reductase 2 mediates male-specific acute stress response (Science Advances 2025年1月22日)
What helps Stephanie may not help Stefan (ヴュルツブルク大学 2023年7月31日)
Differential network interactions between psychosocial factors, mental health, and health-related quality of life in women and men (Scientific Reports 2023年7月19日)
Stress, by itself, can lead to excessive drinking in women but not men (アリゾナ州立大学 2021年12月13日)
Effects of stress, alcohol prime dose, and sex on ad libitum drinking (Psychology of Addictive Behaviors 2021年12月13日)
Stress from Work and Social Interactions Put Women at Higher Risk of Coronary Heart Disease, Drexel Study Suggests (ドレクセル大学 2021年4月9日)
Associations of Job Strain, Stressful Life Events, and Social Strain With Coronary Heart Disease in the Women's Health Initiative Observational Study (Journal of the American Heart Association 2021年2月23日)

[Terahata]
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