ニュース

低所得が糖尿病リスクに 1.2〜1.4倍の格差 ストレスや就労困難が原因か?

 所得の低い群は高い群に比べ、糖尿病リスクが男性で約1.2倍に、女性で約1.4倍に上昇することが、千葉大学などの研究グループが65歳以上の約1万人を対象に行った調査で明らかになった。
 「糖尿病にストレスや社会的な要因が影響している。所得などの背景要因に目を向けることが必要」と、研究グループは指摘している。
1万人を調査 JAGESプロジェクト
 研究は、高齢者の予防政策の科学的な基盤づくりを目的とした研究プロジェクト「JAGES(日本老年学的評価研究)」の一環として行われた。プロジェクトは、約30万人の高齢者を対象に行われており、全国の大学・国立研究所などの30人を超える研究者が参加している。

 研究グループは、JAGESプロジェクトが65歳以上の要介護認定を受けていない高齢者を対象に実施したアンケート調査に回答し、かつ健康診断の結果がある愛知県の9,893名を対象に解析。

 すでに糖尿病で治療されている人、およびまだ診断はされていないがHbA1cが6.5%以上、かつ空腹時血糖が126mg/dL以上、もしくは随時血糖が200mg/dL以上の人を「糖尿病あり」と判定した。

 所得については、2010年の調査に回答された全国約10万人の所得データから所得層を4分割し、もっとも高い群からもっとも低い群まで4群に分けた。

 さらに、糖尿病の有病率に関連するとされる年齢、性別、婚姻状況、BMI、高血圧、HDLコレステロール、中性脂肪、喫煙歴、飲酒歴、1日の歩行時間、食習慣で調整した。

関連情報
所得が低いと糖尿病リスクが男性で1.2倍、女性で約1.4倍に
 その結果、とくに女性において、所得が低いほど、糖尿病になるリスクが高いことが分かった。男性では、他と比べて所得がもっとも低いことが糖尿病リスクを高めることが分かった。

 男性の15.2%、女性の10.2%が糖尿病に該当した。「糖尿病あり」の割合は、男性では、「もっとも所得が高い群(Q4)」に比べ、「2番目に所得が高い群(Q3)」で1.02倍に、「2番目に所得が低い群(Q2)」で0.93倍に、「もっとも所得が低い群(Q1)」で1.16倍になった。女性では糖尿病リスクが、「Q3」で1.22倍に、「Q2」で1.33倍に、「Q1」では1.43倍に上昇した。

 いずれももっとも所得が低い群で糖尿病リスクが高いことが示された。なお教育歴や最長職では、明らかな糖尿病有病率の差はみられなかった。
女性で格差が顕著 社会的な要因が影響
 死亡率や要介護リスクに社会経済的な要因が関わっていることが知られている。糖尿病をはじめとする慢性疾患には、必ずしも患者の食生活や運動習慣など当人の責任に帰する生活習慣だけではなく、その生活習慣を規定する社会的な要因が影響していると考えられる。

 所得が低い層は、何らかの精神的ストレスを抱えているなどの要因で、医療機関を繰り返し受診したり、仕事ができなくなってしまうことも知られている。今回の研究はそれを裏付けるものだ。

 英国、米国、中国、韓国など、各国のデータ分析でも、糖尿病の有病率に所得格差、教育格差があることが示されている。また、糖尿病の有病率における格差には男女差があり、女性で格差が顕著である傾向があることも分かっている。

 「所得などの背景要因に目を向け対策を講じることは、糖尿病のコントロールや医療費適正化に資する可能性がある」と、研究者は指摘している。

 研究は、千葉大学医学薬学府先端医学薬学専攻の長嶺由衣子氏らによるもので、詳細は医学誌「Journal of Epidemiology」に発表された。
糖尿病と経済格差
 日本医療政策機構の世論調査によると、日本では「医療は社会全体で支え合うべき」と考えている人が多い。

 日本の医療保険制度では、年齢や所得に応じて、自己負担比率が決まっている。また、所得の多少に関わらず、同じ疾患について、同じ治療が行われれば、同じ診療報酬と薬剤費が必要となり、治療にかかる負担は平等だ。また、医療費が高額になる場合は、「高額療養費制度」と呼ばれる、自己負担の上限を定める仕組みがある。

 所得の低い層では、望ましい医療制度として「低負担低給付・平等」型を求める声が多い。これは、標準的な公的医療を国民に等しく給付しながら、所得の多い層の負担を増やすなどして、社会保険料の負担を抑えるという考え方。

 所得の低い層では、安い後発(ジェネリック)医薬品を効果的に使うなど、医療費が少なくて済む、費用対効果の高い治療法を望む声も多い。

一般社団法人 日本老年学的評価研究機構
Socioeconomic disparity in the prevalence of objectively evaluated diabetes among older Japanese adults: JAGES cross-sectional data in 2010(Journal of Epidemiology 2018年11月17日)
日本の医療に関する2007年世論調査(日本医療政策機構)
[Terahata]

「保健指導リソースガイド」に関するニュース

2019年11月20日
なぜ漢方便秘薬は効くのか 腸の水分分泌メカニズムを解明 便秘以外にも応用
2019年11月13日
女性が妊娠中に味噌汁を飲むと子供の睡眠不足が減る 親の腸内細菌叢は子供に受け継がれる
2019年11月13日
11月14日は世界糖尿病デー ウォーキングで世界につながろう 糖尿病の半分以上を予防できる
2019年11月12日
がん患者の食事の悩みを解消するサイトを公開 料理教室と連携しレシピを作成 国立がん研究センター
2019年11月12日
インフルエンザシーズン到来にそなえて 感染前の最後の砦「のどバリア」を高める習慣とは
2019年11月12日
認知症の原因は酸化ストレス 新開発の抗酸化サプリメントで認知症を予防 岡山大が臨床試験で実証
2019年11月06日
【申込開始】あらゆる世代・分野の健康づくりをサポート 保健指導・健康事業用「教材・備品カタログ2020年版」 
2019年11月06日
肥満やメタボに対策し「フレイル」を予防 心身の活力低下を防ぐ3つの条件とは
2019年11月06日
腸内細菌が内臓脂肪に影響 内臓脂肪の少ない人に多い菌が判明 健診のビッグデータを分析
2019年11月06日
妊娠中の長時間労働や夜勤が健康リスクに 全国の約10万人の女性を調査 エコチル調査
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
  • 週1回配信(毎週木曜日)
  • 登録者数 8,889 人(2019年10月現在)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 2.7%
  • 保健師 44.8%
  • 看護師 10.8%
  • 管理栄養士・栄養士 19.8%
  • その他 22%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶