トピックス・レポート

7月28日は「世界肝炎デー」~『一無、二少、三多』で"生活習慣病肝炎"を予防しよう!~

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 世界保健機関(WHO)は毎年7月28日を「世界肝炎デー」とし、肝炎に関する啓発活動を行っています1)。日本でもこの活動に合わせ、厚生労働省が同日を「日本肝炎デー」、同日を含む1週間を「肝臓週間」として2)、各地域で啓発イベント(知って、肝炎プロジェクト)を実施します。

 肝炎を巡っては、近年、大きな変化が二つありました。
 一つ目は、かつて肝炎の主要な原因であった肝炎ウイルスに対する効果的な治療薬が登場し、治癒に至る人が増えている一方で、非ウイルス性の肝炎が増加していることです。非ウイルス性の肝炎とは、メタボリックシンドローム(メタボ)やアルコール性肝炎などの生活習慣病を要因とする脂肪肝を伴う肝炎、いわば、"生活習慣病肝炎"です。なかでも、非アルコール性脂肪性肝炎の増加が懸念されています。
 もう一つの大きな変化は、これらの非ウイルス性の肝炎の分類や名称が変更されたことです3)。従来のアルコール性か否かという分類から、代謝異常が関連しているか否かを重視した分類になりました。

 肝臓は"沈黙の臓器"と言われますが、生活習慣病は全般に、自覚症状がなく進行し、病気として自覚しにくいという問題があります。生活習慣病を予防するためには、「若いから大丈夫」「健康には自信がある」ではなく、日頃の体調、体重などの身体の些細な変化など、つねに自分自身の健康に目を向ける必要があります。
 当協会は、日常心がけたい生活習慣をわかりやすく表現した当協会のオリジナルな健康標語『一無、二少、三多』を推奨しています。『一無、二少、三多』で"生活習慣病肝炎"を予防しましょう。

日本生活習慣病予防協会 代表 和田 高士(監修)

日本生活習慣病予防協会

肝臓は"沈黙の臓器"

 肝臓には、有害物質の解毒、エネルギーの貯蓄と供給、消化液(胆汁)の産生、タンパク質の合成など、人が生きるために欠かせない働きがあります。ウイルスの感染やアルコールの飲みすぎ、肥満などにより肝臓への負担が過剰になると、肝臓の細胞が急速に壊れ(肝炎)、肝炎を放置していると、破壊された細胞の再生が間に合わずに肝臓の線維化(肝硬変の進行段階)が始まります。

 肝硬変が進むと、肝臓のさまざまな働きが失われ、死亡原因となります。また、肝炎から肝硬変と進行する過程で、肝細胞がん(肝がん)のリスクが上昇します。

 肝臓は"沈黙の臓器"と呼ばれ、肝炎から肝硬変へと進行する過程や、肝硬変になってもその初期には、ほとんど自覚症状が現れません。現在、肝硬変に対する原因治療(病気を元から治す治療)は肝移植以外になく、移植ができない場合は対症的治療(症状を和らげる治療)を中心に、進行速度をなんとか抑えるしかありません。

肝炎の原因が大きく変わってきた

 肝炎は、かつてはB型肝炎やC型肝炎などのウイルス性肝炎か、アルコールの過剰摂取が原因のアルコール性肝炎が多いとされていた時代がありました。しかしウイルス性肝炎に対する有効性の高い薬が登場し、現在はウイルス性肝炎の患者数が減少してきました。それと交替するかのように、脂肪肝に伴う肝炎が増加してきています。

 この脂肪肝は、エネルギーやアルコールの過剰摂取で起こるもので、成人の2~3割が該当するとされています。生活習慣に起因する、この"生活習慣病肝炎"ともいうべき肝炎も、肝硬変へ進行したり、肝がんが発生するリスクを孕んでいます。脂肪肝の人の10~20%くらいの人が、長い経過でみると肝硬変に進み、肝がんを発症するとされています4)

 日本肝臓学会の調査によると、肝硬変の原因として2017年までのは、C型肝炎ウイルスが48.2%とほぼ半数で、ついでアルコールが19.9%と約2割、B型肝炎ウイルスが11.5%と約1割でした。ところが最新のデータである2018~2021年の調査では、アルコールが28.8%、C型肝炎ウイルスが27.1%、非アルコール性脂肪性肝炎が12.7%と、原因が大きく変化していることがわかります5)

 3番目の原因として浮上した非アルコール性脂肪性肝炎は、アルコールを飲まない、あるいはさほど飲まない*脂肪肝による肝炎で、NASH**(ナッシュ)とよばれます。このNASHを含めて、ウイルスと飲酒がともに関与していない肝臓の病気のことを、非アルコール性脂肪性肝疾患NAFLD**(ナフルディー)とよばれ、NAFLDの急増が問題となっています。

 なお病態からいえば、NAFLDは肝細胞に脂肪が沈着するのみの単純性脂肪肝と、脂肪沈着とともに炎症や線維化がおこる脂肪性肝炎に大別されます。 NASHは、この肝臓の脂肪化に伴い炎症を起こし線維化が進行する病態で、肝硬変に至り、肝がんを引き起こす可能性があります。

*男性は1日にエタノール換算で30g、女性は20g未満の飲酒量にもかかわらず脂肪肝である状態
**NASH:non-alcoholic steatohepatitis; NAFLD:on-alcoholic fatty liver disease

▼つづきを読む
NAFLD/NASHからMASLD/MASHに名称変更

※日本生活習慣病予防協会ウェブサイトに移動します

参考文献

1)世界保健機関(World Health Organization;WHO)「World Hepatitis Day」
2)厚生労働省「日本肝炎デー・肝臓週間について」
3)A new definition for metabolic dysfunction-associated fatty liver disease: An international expert consensus statement. J Hepatol. 2020 Jul;73(1):202-209.doi: 10.1016/j.jhep.2020.03.039.
4)日本消化器病学会/日本肝臓学会編「患者さんとご家族のためのNAFLD/NASHガイド2023」
5)日本肝臓学会「肝硬変の成因別実態調査」速報

日本生活習慣病予防協会のご案内

日本生活習慣病予防協会

「一無、二少、三多(※)」のスローガンを掲げ、生活習慣病の予防、啓発を目的に、情報発信、企業との連携活動などを行っております。毎年2月を、全国生活習慣病予防月間とし、テーマを定め、講演会や関連団体、企業との協力関係のもと、全国的な啓発活動を行っています。
保健指導の現場でも役立つ、ポスター・リーフレット等の啓発資材配布などを行っています。
 ※一無:禁煙 二少:少食、少酒 三多:多動、多休、多接

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