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慢性腎臓病(CKD)は健康寿命を損なう要因 生活改善で重症化予防できる 「若い世代の認知は不十分」という調査結果

 腎臓病は予防することが大切で、いわゆる「隠れ腎臓病」のうちに早期発見し、治療を行うことが重要となる。

 日本腎臓病協会などの調査により、とくに若い世代は腎臓病とその予防について十分に認知していないことが示された。

 慢性腎臓病(CKD)を「知っている」と回答したのは全体の45%で、若年層(20~40代)では3割程度だった。

 CKDに対する⽣活指導介⼊が、⾏動変容や⽣活習慣の改善などを促し、重症化予防をもたらすことが明らかになっている

「隠れ腎臓病」のうちに早期発見し治療

 日本腎臓病協会と協和キリンは、腎臓病に対する啓発活動の一環として、慢性腎臓病(CKD)の疾患認知に関するアンケート調査を実施している。このほど2023年11月に実施した最新の調査結果を発表した。

 CKDは、腎障害を示す所見や腎機能低下が慢性的に続く状態で、放置したままにしておくと、末期腎不全となり、透析や腎移植を受けなければ生きられなくなってしまう。

 CKDは脳卒中、心臓病、認知機能障害とも関係しており、国民の健康寿命を損なう要因となっている。日本には1,480万人の患者がいると推計されている。

 腎臓病は予防することが大切で、いわゆる「隠れ腎臓病」のうちに早期発見し、治療を行うことが重要となる。

 今回の調査は、20~70歳代の一般市民1,624人を対象に、CKDについての認知度などを調べたもの。両者が2019年に締結した「腎臓病の疾患啓発活動に関する連携協定」にもとづき実施している。

関連情報

若い世代の腎臓病とその予防についての認知は不十分

 その結果、慢性腎臓病(CKD)を「知っている」と回答したのは全体の45%だった。年代別にみると、70代では72%が認知しているが、若年層(20~40代)では認知度は3割程度だった。

 CKDの予防策について、「定期的に健康診断や人間ドックを受ける」と回答した人が60%で、次いで「減塩・減量や禁煙など、生活・食習慣に気を付ける」と回答した人は47%だった。

 また、健康診断については、「尿タンパク陽性やeGFR低下を指摘されたら、指示通りに医療機関を受診する」と答えた人は38%、治療については、糖尿病や高血圧など「慢性腎臓病(CKD)の原因となる疾患の治療を継続する」と答えた人は33%で、それぞれCKDに対する理解が十分ではない現状が浮き彫りになった。

 健康診断などを定期的に受けない理由は、「費用がかかるから」が37%と最多で、とくに30代では46%、40代では43%と多かった。また40代では、健康診断などを受けることに「不安・抵抗がある」という回答が26%に上った。

 調査結果について、日本腎臓病協会理事⾧で、川崎医科大学高齢者医療センター病院⾧および特任教授の柏原直樹先生は次のように述べている。

 腎疾患対策検討会報告書で、通知後5年目の中間評価では、さらに推進すべき事項として、「勤労世代への啓発」が強調されています。
 慢性腎臓病(CKD)は、自覚症状が乏しくても、重症化すると健康上の影響が大きいことから、今後も健康診断での尿タンパクやeGFRの認知を高めることを含め、継続した啓発活動を行うことが重要です。
 その一方で、CKDに罹患している方の重症化を防ぐためのサポート体制や早期の診断・適切な治療の体制を全国でさらに整備していくことも望まれます。

慢性腎臓病(CKD)の認知度
若年層(20~40代)では認知度は3割程度

出典:日本腎臓病協会、2024年

腎臓病の検査
尿タンパク  正常な腎臓では、タンパクは尿のなかには漏れないが、慢性腎臓病では、血液をろ過する糸球体にさまざまな異常が生じて、尿にタンパクが検出されることがある。
 尿タンパクと尿クレアチニンの値を定量し、尿タンパク/クレアチニン比を求めることで、より正確なタンパク尿を知ることができる。
eGFR  血液検査では、血清クレアチニン値を調べる。腎臓は血液のなかの老廃物を排泄する大切な役割をもっており、クレアチニンは老廃物を代表する物質。腎臓が正常の場合には尿に出るが、腎臓の働きが低下すると十分に排泄されず、血液にとどまる量が増える。
 「GFR」は、クレアチニンの値から算出される、腎臓の働きをあらわす指標。腎臓の機能が悪化すると、血清クレアチニン値が上昇する。腎臓の機能を評価するには、年齢、性別、クレアチニン値で算出されるeGFR(推算GFR)の値も用いられる。

慢性腎臓病(CKD)の重症化を予防
生活指導介⼊が重症化予防をもたらす

 慢性腎臓病(CKD)は、糖尿病、⾼⾎圧、脂質異常症などの⽣活習慣病が原因で発症する⼈が多く、重症化すると、末期腎不全や⼼⾎管病などにつながるので、発症予防と重症化予防が課題となっている。

 筑波⼤学と新潟⼤学の研究グループは、2008年から3年半にわたり、全国の49の医師会のかかりつけ医に通院する40歳以上75歳未満の慢性腎臓病患者2,379⼈について、医師会ごとに、かかりつけ医による通常診療群と、専⾨医による定期的な慢性腎臓病診療プログラムを⽤いた⽣活指導介⼊群に無作為に分け、介⼊の効果を調査した。

 しかしその期間では、重症化する患者は少なく、透析の導⼊や、⼼⾎管病の発症などの差はなかった。そこで、観察期間を10年間まで延⻑し、⻑期的な介⼊の効果を検証した。

 その結果、⼼⾎管病の発症、透析導⼊、腎機能の50%低下などを複合した評価では、⽣活指導介⼊群の⽅が通常診療群よりもわずかに低いことが示された。

 詳しく分析すると、⽣活指導介⼊群では、⼼⾎管病の発症が有意に抑えられるとともに、腎機能の低下の年間進⾏速度が、腎機能指標eGFR45以上60未満(正常値90以上)の患者で有意に抑制されており、かかりつけ医と腎臓専⾨医との診療連携も⾼率に⾏われていた。

 「研究により、慢性腎臓病の患者さんに対する定期的・⻑期的な⽣活指導介⼊が、⾏動変容や⽣活習慣の改善、および、かかりつけ医と腎臓専⾨医の診療連携を促し、重症化予防をもたらすことが明らかになりました」と、研究者は述べている。

 「⻑期間にわたる継続的な介⼊プログラムが、慢性腎臓病の重症化予防に効果があることが明らかになりました。今後、介⼊プログラムが効果的に作⽤した部分を解析し、さらなる慢性腎臓病の重症化予防策を明らかにする予定です」としている。

 研究は、筑波⼤学医学医療系腎臓内科学/スマートウェルネスシティ政策開発研究センターの⼭縣邦弘教授らによるもの。研究成果は、「Nephrology Dialysis Transplantation」に掲載された。

NPO法人 日本腎臓病協会 慢性腎臓病に対する生活習慣改善の指導は長期の診療継続と重症化予防に効果がある (新潟⼤学 2022年05月17日)
[Terahata]
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