ニュース

認知症の発症を血液検査で予測 100%の的中率で判別に成功 長寿研

 国立長寿医療研究センターは、血液中の「マイクロRNA」を網羅的に検査するモデルを開発し、このモデルにより認知症の発症を高い精度で予測できることを実証した
「マイクロRNA」の検査は進歩している
 世界の認知症患者数は2030年には7,500万人、2050年までには1億3,500万人に増加すると予想されている。認知症の患者・介護者の負担と社会的コストを軽減するために、早期に正確に診断し、病態に適した進展予防などのリスクマネジメントを行うことが重要とされている。

 国立長寿医療研究センターは、血液中の「マイクロRNA」を網羅的に検査するモデルを開発したと発表した。軽度認知機能障害(MCI)患者を対象とした実験では、発症を100%の精度で予測できることを明らかにした。

 「マイクロRNA」とは、人間の血液や尿に含まれる生体分子で、2,000種以上があることが知られている。近年の研究で、遺伝子発現の調整などさまざまな機能を有しており、がんや認知症などの疾患の発症や進展と関係していることが明らかになってきた。

 マイクロRNAは、直径100ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)前後の小胞体「エクソソーム」に守られており、血液中でも分解されにくい。既存の方法では一度に収集できるマイクロRNAは200~300種類程度だが、より多数のマイクロRNAを収集する技術の開発も進められている。

関連情報
簡易的な血液検査で認知症をスクリーニング
 アルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症は、3大認知症とされている。

 現在行われている検査は、脳脊髄液中のタンパク質(アミロイドβ、総タウ、リン酸化タウ)を測定するもので、アルツハイマー病の診断に有効だが、他の認知症を知ることはできない。また、被験者への侵襲性が高いこともあり、早期診断のための実施はあまり行われていない。

 一方、アミロイドβやタウ蓄積を検出するPET検査、脳の特定部位の萎縮を検出するMRI検査は高額であり、実施施設も限定される。こうした現状から被験者の肉体的・経済的負担の大きい精密検査前に、簡便な方法で認知症をスクリーニングする方法が求められている。

 そこで研究グループは、3大認知症を一度の検査で判別できる簡易的な血液検査法の開発を目的に、血液中のマイクロRNA発現プロファイルに着目した認知症判別モデルおよび認知症発症リスク予測モデルの構築に着手した。
3大認知症をマイクロRNAで解析
 研究グループは、3大認知症を含む認知症群と認知機能正常高齢者群1,569例の血清を、高感度DNAチップ「3D-Gene」を用いて網羅的マイクロRNA発現解析した。

 得られたデータをもとに、高次元データを低次元に次元圧縮する機械学習の手法により、予測モデルの構築を行った。

 この予測モデルは独立した2つのデータセットで検証され、アルツハイマー病を感度93%・特異度66%、血管性認知症を感度73%・特異度87%、レビー小体型認知症を感度76%・特異度86%で判別できた。
100%の的中率で判別に成功
 認知症では、正常老化と認知症の境界領域である軽度認知機能障害(MCI)の段階から認知症に進行する患者を早期に発見することが重要とされている。

 そこで今回、縦断的に観察されていたMCI患者(初診時)32例について、初診時採取の血清を用いて認知症への進行予測を試みた。

 その結果、認知症に進行した10症例を感度100%で、進行しないと予測した4症例を陰性的中率100%で判別することができた。今回構築された予測モデルで使用されたマイクロRNAのターゲット遺伝子を調べたところ、脳機能との関連が示唆されるものが多く含まれていたという。

 血液検査による認知症発症リスク予測の可能性を示したこの手法を用いれば、被験者の負担が少なく、施設間差のない定量的な検査が可能となる。

 これにより、(1)検査手法の異なる3大認知症の検査を1度の採血で判定でき、2次検査コストを抑制できる、(2)疾患に適した治療法を早期の段階で選択できる、(3)MCIの段階で将来の認知症進行予測が可能となり早期介入ができる――といつたメリットを得られるという。

 研究グループは今後、認知症体外診断薬化に向け、多施設による検証と性能検査に取り組む予定だ。

 この研究は、国立長寿医療研究センターのメディカルゲノムセンター(新飯田俊平センター長)を中心とした研究グループによるもの。その成果は科学誌「Communications Biology」に発表された。

国立長寿医療研究センター メディカルゲノムセンター
Risk prediction models for dementia constructed by supervised principal component analysis using miRNA expression data(Communications Biology 2019年2月25日)
次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業
[Terahata]

「保健指導リソースガイド」に関するニュース

2019年07月17日
産官学連携で「糖尿病性腎症」に対策 AIでリスク要因を分析 保健事業に発展 大分県
2019年07月17日
産業医500人に聞いた「従業員のメンタル不調の原因」 1位は「上司との人間関係」
2019年07月17日
玄米への健康食としての期待が上昇 食べやすい新タイプの玄米も登場
2019年07月17日
コーヒーに脂肪燃焼を促す効果 体重減少や​​エネルギー消費の増加を促進
2019年07月09日
【認知症施策推進大綱】どんな具体策が盛り込まれたか? 認知症バリアフリー推進で「共生と予防」
2019年07月09日
運動が寿命を延ばす 中高年になってから運動をはじめても十分な効果が
2019年07月09日
高齢者の難聴は「外出活動制限」「心理的苦痛」「もの忘れ」を増やす 13万人強を調査
2019年07月09日
肥満が「聴力低下」のリスクを上昇させる 5万人の職域コホート研究「J-ECOH」で明らかに
2019年07月09日
「乳がん」はストレスにさらされると悪化 自律神経が深く関与 新しい治療法に道
2019年07月09日
運動+認知機能トレーニング 有酸素運動を可視化するシステムを開発 東北大学と日立の共同ベンチャー
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
  • 週1回配信(毎週木曜日)
  • 登録者数 8,441 人(2019年06月現在)
登録者の内訳(職種)
  • 保健師 44%
  • 看護師 20%
  • 管理栄養士・栄養士 22%
  • その他 14%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶