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幼児の脳の発達に親の励ましが大きく影響 離婚は子のメンタルヘルスに影響
2019年03月06日

幼児の「成功/失敗」や「正解/不正解」といった認知処理では、親の応援や励ましが重要な役割を果たしているという研究を、東京大学と中部大学の研究グループが発表した。
親の応援があると、幼児は成功と失敗を脳内で区別して処理できるようになるという。
親の応援があると、幼児は成功と失敗を脳内で区別して処理できるようになるという。
親の応援や励ましが幼児の脳に働きかける
「成功・失敗」や「正解・不正解」といった外部からのフィードバックは、行動や学習に重要な役割を果たすことが知られている。
これまでの研究で、成人では「成功/失敗」のフィードバックに対する認知処理は明確に区別されていることが分かっている。
脳を調べ刺激に対して生じる電位を測定すると、「成功」「正解」などに対するポジティブなフィードバックに対しては「報酬陽性電位」が、「失敗」「不正解」などに対するネガティブなフィードバックに対しては「フィードバック関連陰性電位」が生じるという。
今回の研究では、親の応援や励ましが、幼児の成功に対する認知処理にどう影響するかを調べた。
研究グループは、21人の5歳児に対し、指定した動物のイラストがモニタの左側、右側のどちらに表示されたかを回答させる認知課題を実施。
課題の内容を理解してもらうために、「動物さんは逃げ足が早いので、できるだけ早く見つけてね。たくさんの動物さんたちとお友達になってね」などと幼児に説明した。
「幼児が1人で行うケース」と「親が応援しながら行うケース」に分けて事象関連電位を測定し、「成功/失敗」に対する脳活動を検討した。
その結果、1人で課題を行った場合は「成功/失敗」を区別して処理することができなかったが、親が応援しながら行った場合はこれらを区別して処理することができた。
また、成功に対する報酬陽性電位の振幅は1人で課題を行うよりも親の応援がある場合で大きかった。

幼児の良し悪しの判断や学習に親が強く影響
これらの成績は「幼児の脳の発達には親の応援が強い影響を及ぼす」「親の応援は成功に対する報酬の価値を高める」ことを示している。
今回の研究により、日ごろの親の関わり方が幼児の良し悪しの判断や学習に強い影響を及ぼすことが示唆された。
成功に対する認知処理は抑うつと関連することも知られており、子供の抑うつに対しても効果がある可能性があるという。
研究グループは、今後の研究では、親の個人差(子育て完全主義者か、子育てバーンアウトか)や環境要因(育児ストレスや周囲からのサポート)などが幼児の脳の発育にどのように影響するのかも検討するという。
研究は、東京大学大学院総合文化研究科教授の開一夫氏と中部大学人文学部心理学科講師の川本大史氏らによるもの。詳細は英科学誌「Social Neuroscience」オンライン版に掲載された。
関連情報
両親が離婚した子どもへのメンタルヘルスケアでは格別な注意が
子育てにおける環境要因は、子どもの発育に大きな影響を与えるが、とりわけ両親の離婚による影響は大きい。
日本人の2017年の婚姻件数が60万6,866組なのに対し、離婚件数は21万2,262組に上る(2017年人口動態統計)。日本でも離婚は珍しいものではなくなり、若い世代の離婚も少なくない。
離婚率の高いノルウェーで、両親の離婚は子どもに不利益をもたらし、将来の健康や幸福(ウェルビーイング)への影響も大きいという研究が発表された。
研究グループは、ノルウェーの親の離婚を経験した子ども18万人と経験がない子ども64万人のデータを解析。2004~08年に抗うつ薬の処方を受けた20~44歳の成人を対象に、両親が離婚した子どもの将来のメンタルヘルスとの関連を調べた。
その結果、両親が離婚したときに4歳未満だった子どもでは、成長後にうつ病の発症リスクが上昇することが示唆された。
両親の離婚時に15~19歳だった子どもでは、4歳未満だった子どもに比べ、成長後に抗うつ薬を服用するリスクが12%低かった。
「離婚を希望している夫婦でも、子どもが成長するまで離婚を思いとどまるケースがありますが、これが有益がどうかについてさらに調べる必要があります。確実なのは、両親が離婚した子どもへのメンタルヘルスケアでは格別な注意が必要なことです」と、ノルウェー公衆衛生研究所およびオスロ大学のオィスティン クラドォル氏は述べている。
東京大学大学院総合文化研究科Parental presence with encouragement alters feedback processing in preschoolers: An ERP study(Social Neuroscience 2018年10月9日)
Child's age at parental divorce can affect antidepressant use in adulthood(ノルウェー公衆衛生研究所 2019年1月23日)
Children's age at parental divorce and depression in early and mid-adulthood( Journal of Demography 2019年1月11日)
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