オピニオン/保健指導あれこれ
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No.2-2 受診率向上は保険者共通の課題

生活習慣病予防研究センター 代表、医師
岡山 明

市区町村国保の受診率向上策

 受診勧奨の効果は、基本的には実施密度が主な決定要因だと考えるとわかりやすいといえます。最も密度が高い個人面接とは、未受診者の考え方を尊重しながら健診の重要性を説明していくことです。

 対象者が気になっていることがあれば相談に乗り、健診を受けることで安心できること、リスクが見つかっても治療すれば大きな病気を予防できることを説明すると、長期未受診者でも「一回くらいなら」と思って受診してくれる可能性があります。

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 面接の場所が訪問先ではなく、窓口や図書館などであっても同様です。面接の機会を受診勧奨の場とすることで、定期的な働きかけが可能となります。また、面接者は行政の担当者に限らず、医療関係者や住民など幅広くとらえることも大切です。

受診勧奨の様々な種類

 電話による受診勧奨は面接と比較して相手の表情がわからないこと、不在などで話せない可能性があることなど効果が下がる要因はありますが、一度にたくさんの対象者へ働きかけが可能なことから幅広く採用されています。

 電話の際には相手の基本的な回答(忙しい、治療中など)に対して「次のひとことが言える」トレーニングが必須であり、これが効果を高める要因だと考えられます。実施効果を高めるには、マニュアルの作成やトレーニングなど、電話をかける前の準備を十分に行ってからにしましょう。

 また、集団面接は講習会などで時間がとれたときに実施するものを指します。「受診しましょう」だけでは効果はそれほど期待できないので、健診未受診者における実際の脳卒中の発症事例や、治療することで大きな病気のリスクが下がること、健診を受けないと血圧や血糖値に異常はないかどうかはわからないことを説明するとよいでしょう。

 その上で、戦略的に健診の意義を説明するには、保険者機能を発揮して、実際の例に基づく情報を加工して迫力のある事例を作ることです。こういった事例を何種類か作成しておくと、色あせない集団面接用の資料となります。

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 はがき(郵送)による受診勧奨は、前述の面接や電話に比べると対象者にプレッシャーをかけにくいものです。従って、はがきのみで長期未受診者へ働きかけを行っても、大きな効果は期待できないことを念頭におく必要があります。

 一方で電話勧奨を行う前振りとしては、詐欺の電話だと思われることを防ぐなどの意義があります。はがきの見栄えや内容を工夫して、対象者にとって読みやすくすることも重要です。最近では様々な工夫がなされている事例がありますので、他の保険者の情報を入手して参考にするとよいでしょう。

 ポスター・チラシ(広報)は、受診勧奨手段の中では最も効果が期待しにくいため、関係者の意識付けや受診勧奨策の地ならしと考えて使用する方がよいでしょう。もちろん作り方が効果に影響することは他の策と同様なので、内容や見栄えに工夫することは重要です。

 以上をまとめると、面接や電話による受診勧奨には固有の効果があることに着目し、できるだけ効果の高い方法で行う策を考えるべきです。資料を工夫する、ロールプレイイングなどを取り入れた研修会を開催するなど、効果を高めるための工夫も重要となります。

医師・医療従事者への説明のポイント

 医療機関への受診状況別にみると、定期的に治療を受けている人は医療機関での受診勧奨に対する効果が最も期待できます。

 65歳以上の加入者は、半数程度が医療機関で定期的に治療を受けているので、仮に医療機関で治療を受けている人が全員受診すれば、この年齢層の受診率は確実に50%以上になります。

 受診勧奨には、医療機関との協力体制をどのように築くかも重要な課題です。医療関係者の理解を得るには、特定健診を患者の健康管理に活用することの利点を説明した資料の作成が必要です。医師・医療従事者への説明のポイントは以下の通りです。

1.特定健診を受診してもらえれば、抜けのない検査を行うことができること
・治療中以外の疾病の検査を行っても査定されない
・疑い病名の付与、中止などの処理が不要である
・検査結果を基に特定保健指導・受療勧奨などの保健事業が実施される

2.患者負担がない(少ない)こと
・特定健診として、一般診療とは別に無料(あるいは少額の負担)で実施できる
・健診結果は診療情報としても活用できるため、検査は一度ですむ
・診療前に実施(迅速検査)できれば、当日の診療にも活用できる
・次回の診療までに受診してもらえれば、検査結果が活用できる

3.心電図や眼底検査などの詳細検査も医師の判断で実施できること
・心電図や眼底検査は詳細検査として位置付けられており、一定の所見があり医師の判断で必要と考えられた場合は実施できる。

 医師・医療関係者には、特定健診の必要性と医療機関としてのメリット、患者のメリットを十分理解していただいた上で、治療の流れのどこで受診勧奨を行うのが効果的かを検討してもらうとよいでしょう。

【参考】
生活習慣病予防研究センター

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