産業保健専門職育成現場レポート
②日本産業保健師会「新任期産業保健師養成研修」【前期】
産業保健活動の実践と考え方、産業保健師の「キャリア」を捉える研修
一般社団法人 日本産業保健師会(会長:岡田睦美氏)では、キャリア半年~5年未満の産業保健師を対象とした「新任期産業保健師養成研修」を実施している。本研修は、産業保健師のキャリアラダーを取り上げ、演習を通じた実践的なプログラムを中心に据えていることが特色である。
毎年定員となる人気の研修となっており、今年も約30名が参加している。本レポートでは、10月に開催された前期研修の模様をお伝えする。
一般社団法人 日本産業保健師会産業保健活動の「実践」を重視したプログラム
本研修では「新任期保健師に必要な能力を、講義や事例発表、自組織の課題を用いた演習を通じて強化する」ことを目的に掲げている。研修に際して「事前課題」があり、今年は自組織で実施している健康診断について、産業保健師の関与をレポートにまとめて提出することが求められた。
研修で実施するプログラムの一部を紹介する。
【前期研修】2023年10月開催
<講 義>
- 日本産業保健師会の産業保健師育成について(研修意図の解説、キャリアラダーなど)
- 最近の労働衛生行政の動向
- 健康診断の実施から保健指導までの計画・実施・評価
<演 習>
- 健康診断に対する考え方や関与の必要性について
【後期研修】2024年1月開催
<講 義>
- 新任期保健師としての基本とあるべき姿
<演 習>
- (前期・後期間の)実践内容に関する発表
- キャリアラダーの自己チェック
- 各自の今後の実践計画について考える
産業保健師の「考え方」を知ることができるプログラム
2008年に「日本保健師連絡協議会」として発足した日本産業保健師会は、職能団体として15年間の活動を続ける中で、産業保健師の育成やキャリア形成について実績と知見を積み重ねてきた団体である。
研修の冒頭で岡田会長が挨拶に立ち、本研修を「産業保健師としての考え方を学べる」と紹介。
最初の講義「日本産業保健師会の産業保健師育成について」では、同会理事・亀ケ谷律子氏が研修意図と産業保健師のキャリアラダーについて解説した。ここで取り上げられた「産業保健師版キャリアラダー」は日本産業保健師会の知見を盛り込み作成されたもので、産業保健師として求められる活動・能力が客観的に明確化されている。講義の構成は、着任して日が浅い産業保健師が得ることが難しい「産業保健全体を見渡す視点」が得られるような示唆に富んでおり、受講者が産業保健師としてのキャリアを重ねる中で、産業保健活動のあり方の本質を自ら考えるための足がかりとなる内容だった。
続いての講義「最近の労働衛生行政の動向」では、第14次労働災害防止計画や、新たな化学物質管理における健康管理などの話題が取り上げられ、調査・統計データなどを参照しながら、国や厚生労働省の方向性が解説された。国の動向が明確になることで、産業保健師の今の仕事が明確になるということが、本プログラムが編成された理由である。
最新ニュース
- 2025年01月30日
- 2月1日から初めての「化学物質管理強調月間」を実施 化学物質による労働災害や健康リスクの減少を目指す(厚生労働省)
- 2025年01月27日
- 座位時間の長い労働者は睡眠の問題を抱えやすい 立ち上がって体を動かし対策 運動で血流を改善
- 2025年01月27日
- 働く人のストレスに効果的に対策 わずか10分間の「マインドフルネス」でメンタルヘルス改善 スマホアプリの効果を検証
- 2025年01月27日
- コロナ禍のウェルビーイング格差は所得格差に連動 コロナ禍に孤独を感じている人が増加 健康的な高齢化に関する調査
- 2025年01月27日
- 「孤独」と「社会的孤立」は心臓病・脳卒中・感染症などのリスクを高める 人との交流は健康を維持するために必要