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塩分のとりすぎが高血圧や肥満の原因に 代替塩を使うと高血圧リスクは40%減少 日本人の減塩は優先課題

 塩分のとりすぎは高血圧に大きく影響し、肥満とも深く関連していることが、明らかになった。

 日本人はとくに食塩摂取量が多く、減塩は優先して取り組むべき課題になっている。

 そこで減塩の新しい考え方として、「かるしお」が提唱されている。減塩を啓発するために「かるしお認定制度」も推進。

 食塩を代替塩に置き換えると、高血圧リスクは40%低下するという調査結果も発表された。

塩分のとりすぎは高血圧に大きく影響 心臓病・脳卒中・腎臓病の原因に

 塩分のとりすぎは高血圧に大きく影響する。世界保健機関(WHO)によると、高血圧は心臓病や脳卒中、腎臓病などの原因になる。世界中で14億人以上の成人が高血圧に罹患していて、毎年1,080万人が高血圧に関連して死亡しているという。

 日本人はとくに食塩摂取量が多く、その平均は男性 10.9g、女性 9.3gとなっている。高齢者はさらに、食塩摂取量が多い傾向がある。この10年間で、日本人の食塩摂取量は減ってはいるものの、まだまだとりすぎているのが現状だ。

 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、食塩の摂取量を、成人では1日あたり男性7.5g未満、女性では6.5g未満に制限することが進められている。高血圧や腎臓病のある人は、さらに少ない量が推奨されている。

日本人の食品摂取量の現状と目標

出典:国立循環器病研究センター

塩分のとりすぎは肥満とも深く関連

 塩分のとりすぎは肥満とも深く関連していることが、フィンランドのヘルシンキ大学の研究で示されている。

 「米国では1980年代から1990年代の15年間で、塩分の摂取量が50%以上も増えました。それにあわせて、肥満も増加しています」と、同大学薬理学部のヘイキ カルパネン教授は言う。

 「塩分の多い食品を食べすぎると、清涼飲料などの高カロリーの食品に対する渇望も増します。米国では同時期に、清涼飲料からのカロリー摂取量が平均して135%増加しました。これは、1人あたり1日に278kcal多くカロリーをとるようになったことを意味しています」。

 278kcalのカロリーを消費するために、1日に1時間10分多く歩いたり、掃除など体を動かす家事を行う必要があるが、こうした運動目標は達成されていない。

 「フィンランドで塩分摂取量を30~35%減らすと、75~80%の人が体重を減らし、平均血圧を10mmHg減らし、脳卒中や心臓病の死亡リスクが減少します。そうなると平均寿命を6~7年延長できると考えられます」と、カルパネン教授は指摘する。

塩を軽く使って食材のうまみを引き出す「かるしお」

 とくに塩分摂取量の多い日本で、減塩は優先して取り組むべき課題になっている。そこで国立循環器病研究センター(国循)は、減塩の新しい考え方として「かるしお」を提唱している。これは「塩を軽く使っておいしさを引き出し」、上手に減塩するということ。

 国循はこれまで、入院患者などを対象に、栄養バランスをかねそなえつつ、1日の塩分を6g未満におさえたおいしい病院食を提供してきた。

 その経験や研究成果、ノウハウをいかし、「知的資産の把握・発掘」をかねて、塩を軽く使って食材のうまみを引き出す「かるしお」を提唱している。

塩をかるく使って美味しさを引き出す減塩の新しい考え方

食塩をカットした「かるしお認定食品」

 国循は、減塩を啓発するために「かるしお認定制度」も推進。減塩しょうゆ、減塩みそ、減塩だしをはじめとして、加工食品、レトルト食品、生鮮食品、弁当、定食など、さまざまな製品が登録されている。

 しょうゆや味噌などの調味料類や、インスタント食品などの加工食品に、食塩を30%以上カットすることなどを求めている。

 たとえば弁当や飲食店の定食などには、1食あたり450〜600kcal、脂肪エネルギー比20~30%、食塩相当量2g未満、さらには海藻やきのこを含む野菜を150g以上使うことなどを求めている。

 日本高血圧学会も、減塩・栄養委員会を立ち上げ活動しており、「JSH減塩食品リスト」を公開している。

 国循などは「かるしお」の考え方にもとづき、おいしい減塩食を発掘するためのレシピコンテスト「S-1g(エス・ワン・グランプリ)」も開催している。

 第6回大会は2月に開催され、「鶏ささみ~秋の味覚ソース~」「さっぱり金平ごぼう」「牛乳で作ったカレーポテサラ」「挟んで時短さっぱり大根餃子」「高野豆腐の緑茶香る中華風煮込み」など、9つのレシピが選定された。

 大会に出場したチームが、受賞レシピを活用して料理講習会を実施するなど、全国各地で循環器病予防のための減塩に対する取り組みは広がっている。

食塩を代替塩に置き換えると高血圧リスクは40%低下

 食塩を代替塩に置き換えると、高血圧リスクは40%低下するという中国の調査結果を、米国心臓病学会(ACC)が発表した。

 代替塩は、食塩に含まれるナトリウムの一部をカリウムに置き換えたもの。薄味を自覚することなく、また味覚的な変化を感じることなく減塩ができる。

 研究グループは、中国の介護施設の居住者を対象にランダム化比較試験を実施し、食塩を代替塩に替えると、血圧にどのような影響があらわれるかを調査した。

 55歳以上の高血圧でない(140/90mmHg未満)、平均年齢71.4歳の男女611人を対象に、298人には通常の食塩を使った料理を提供し、313人には代替塩を使った料理を提供した。

 その結果、2年間の追跡期間中に、100人年あたりの高血圧の発症率は、通常塩群では24.3だったが、代替塩群では11.7であり、代替塩により40%のリスク低下がみられた。

 「代替塩を利用すると、血圧を高めることなく、食事を楽しみながら、心血管リスクを最小限に抑えられます。代替塩により健康を守れることが示されました」と、同大学臨床研究所のヤンフェン ウー氏は述べている。

 「塩分の少ない食品を選択し、減塩することが、健康に大きな影響をもたらすことを、より多くの人が知るべきです」としている。

Salt Intake Is Strongly Associated With Obesity (ヘルシンキ大学 2006年11月13日)
Salt Substitutes Help to Maintain Healthy Blood Pressure in Older Adults (米国心臓病学会 2024年2月12日)
Effect of a Salt Substitute on Incidence of Hypertension and Hypotension Among Normotensive Adults (Journal of the American College of Cardiology 2024年2月20日)
[Terahata]
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