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地域での看取り


(2016/06/16)
No.5 在宅での看取りの現状(がん末期・難病・老衰)
 在宅支援診療所の医師と訪問看護ステーションの信頼関係が無ければ、在宅での看取りは実現できません。そして何よりも「人生の最後を自宅で過ごしたい」という患者さんの強い気持ちが、周囲の人たちを動かす力になります。

 1. 在宅での看取り現状
 介護保険制度がはじまってからは、訪問看護ステーションの必要性が大きく取り上げられ、その活動内容も少しずつ理解されてきました。訪問看護師は自宅で療養する人を、医師やケアマネジャー、ホームヘルパーなどと協働して支えています。

 しかし、我が国では、がんの末期と診断された患者はそのまま病院で亡くなるか緩和ケア病棟へ行くか、または自宅へ帰るかの岐路に立たされます。痛みや苦痛の症状が比較的安定していると、患者は「自宅へ帰りたい」、そして家族も「帰らせたい」との思いから訪問看護ステーションの利用につながるケースが増えています。


末期がんの利用者を励ます特別養護老人ホーム専属のセラピードック
(自宅を訪問しています)

 2. 急な問い合わせに動く訪問看護ステーション
 昨年末にH病院のソーシャルワーカーから「がんの末期の患者さんなのですが、明日から外泊したいと言われています。そちらの訪問看護ステーションで受け入れてもらえますか?」との電話がかかってきました。患者さんは80代の男性で大腸がんの末期です。食事が殆ど取れないので、TPN(Total Parenteral Nutrition:完全静脈栄養)という高カロリーの点滴をするために、右胸の上部にCVポート(中心静脈カテーテル)が埋め込まれています。また、人工肛門が造設されていたので、病院では看護師が人工肛門の交換(装具や排泄物の交換)をしていました。

 おそらく最後の正月になるであろう1月1日を自宅で迎えたいという要望に、即座に病院へ駆けつけて、医師に医療処置を確認して必要な物品を受け取り、31日に自宅を訪問しました。その後「本当に家に帰れるかどうか不安だったけれど、看護師さんが1日に何回も来てくれ、24時間いつでも電話をかけたら来てくれると言ってくれたので、安心してお正月を家で迎えられた。本当によかった。」という患者さんの言葉が聞けたことは、訪問看護ステーションをやっていてよかったと思う瞬間です。

 3. 訪問看護ステーションにおける看取りの課題
 24時間体制で利用者・家族の要請に対応している全国の訪問看護ステーションのうち約8割が、家族が臨終間際に死亡場所を変更する事があると報告しています。なぜなら、家族が「本人が苦しそうにしているのを見ていられない」「このままでは死んでしまう」という不安や恐怖心に耐えられず、救急車を呼んでしまうかあらです。

 また、在宅療養支援診療所のかかりつけ医と訪問看護ステーションの連携がうまくいかずに、すでに呼吸が停止しているのに救急車を要請せざるを得なかった経験をもあります。なぜなら、在宅療養支援診療所と言っても、医師は一人で診療所を運営しているため、約7割が24時間体制について負担を感じており、患者や家族の意思を尊重し最期を見届けたくとも、実際にはそのように出来ない現状にあります。

 このように、家族ががんと診断されて自宅で看取りたいと思っても、近くに訪問看護ステーションや協力してくれる医師がいなければ、看取りは実現できません。そのうえ、自宅でがんの末期を看取ることの大変さを理解したうえでの覚悟も必要です。

 4. 難病や小児の在宅療養
 訪問看護ステーションは、がん末期や高齢者だけでなく特定疾患を持つ難病や小児の訪問看護を行っています。特定疾患とは、厚生労働省が実施する難治性疾患克服研究事業の臨床調査研究分野の対象に指定された疾患(2012年現在、130疾患)で、これらの人は一部負担金の助成があるため訪問看護を受けやすくなっています。

 近年、小児医療においても救命率が上がり、救うことができた子どもを自宅で養育する家族が増えています。余命がわずかでも、家族として我が子がいるべき場所(家庭)に帰すことが当たり前になりつつあります。


訪問看護師と利用者さん(交流会に差し入れをいただきました)

<参考文献>
1)厚生労働省.訪問看護ステーションの事業運営に関する調査詳細 別添1
2)石川美智.在宅に携わる訪問看護師が臨終時に困難と捉えた経験の社会制度上の考察.2010年度公益財団法人在宅医療助成 勇美記念財団 完了報告書11-12頁. 2011