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「アルコール」は健康に悪い? 総合的にみて安全な飲酒量はないと結論
2018年08月29日
アルコールは適量であれば健康に良いという研究は少なくないが、アルコールの重大な健康リスクを示した研究も多い。
ワシントン大学は「アルコールを少し飲み過ぎただけで健康リスクがある。安全な飲酒量など存在しない」という研究を発表した。
ワシントン大学は「アルコールを少し飲み過ぎただけで健康リスクがある。安全な飲酒量など存在しない」という研究を発表した。
少し飲み過ぎただけでも健康リスクが
これまで、コーヒーの健康上のメリットについてご紹介した。一方、アルコールはどうか。
「酒は百薬の長」ということわざがある通り、アルコールは健康に良いという研究は少なくないが、アルコールの重大な健康リスクを示した研究も多い。
ワシントン大学の研究チームがこれまでに行われた飲酒についての膨大なデータをまとめた研究によると、アルコールは少し飲み過ぎただけでも健康リスクを引き起こすという。
「飲酒によって得られるデメリットはメリットを上回ります。アルコールの摂取量が増えると、それだけ健康リスクも増大するのです」と、ワシントン大学のエマニュエラ ガキドゥ教授は言う。
関連情報
年間に300万人がアルコールが原因で死亡
研究には40ヵ国以上の研究者が協力し、アルコール摂取についての694件の調査と、592件の研究を解析した。研究は国際的な医学誌「ランセット」に発表された。
世界の2016年の飲酒者の数は20億人以上で、63%が男性だ。一方、アルコールが原因で死亡した15~49歳の男性の数は2016年に300万人に上るという。これは全死因の12%に相当する。
アルコールの飲み過ぎは、心筋梗塞、脳卒中、がん、肝硬変、2型糖尿病、膵炎などの原因になり、交通事故などの傷害も引き起こす。
アルコールは2016年に、死亡を早め、DALY(障害調整生命年)を縮める7番目のリスク要因だった。アルコールを原因とする死亡率は、男性で6.8%、女性で2.2%に上る。年齢層を50歳以上に絞ると、死亡率は男性で18.9%、女性で27.1%に跳ね上がる。
安全なレベルの飲酒は神話に過ぎない
今回の研究では、アルコール摂取量の基準とされるお酒の1ドリンクを、純アルコールに換算して10gで算出した。お酒の1ドリンクに相当する量は、ビール(アルコール度数 5%)なら250mL、ワイン(同13%)なら100mL、ウィスキー(同40%)なら30mLだ。
たとえば米国の食事ガイドラインでは、アルコールの適切な摂取量を、男性は1日に2ドリンク、女性は1ドリンクとしているが、「この程度の制限では十分ではない」と研究者は指摘している。
研究によると、2ドリンクのアルコールを毎日飲むと、まったく飲まない人に比べ、アルコールが原因の障害が起こるリスクが7%上昇する。飲む量が7ドリンクに増えるとリスクは37%跳ね上がるという。
「アルコールは死亡の主要な原因になっています。世界で数百万人の命を救うため、緊急に行動する必要があります」と、ワシントン大学のマックス グリスウォルド氏は言う。
「1日1~2ドリンク程度の飲酒量であれば健康に良いと言われていますが、それはまったくの神話です。今回の調査は、それが幻想であることを明確に示しています。安全な飲酒量など存在しないのです」と、グリスウォルド氏は強調している。
アルコールが糖尿病リスクを下げるという調査結果も
アルコールを飲む習慣は、糖尿病リスクにどう関わっているだろうか? 南デンマーク大学の研究で、週3回から4回飲酒する人は、まったくく飲まない人に比べ、2型糖尿病になる可能性が低いことが分かった。この研究は、欧州糖尿病学会(EASD)が発行する医学誌「Diabetologia」に発表された。
研究チームは7万551人の男女を4.9年間(中央値)追跡して調査。期間中に男性859人、女性887人が糖尿病を発症した。解析した結果、適量のアルコールを週に3~4回飲んでいる人は、飲酒の頻度が週に1度以下の人に比べ、糖尿病リスクは男性で27%、女性で32%それぞれ低下したことが分かった。
糖尿病リスクを下げる効果がもっとも高かったのは赤ワインだった。赤ワインに含まれるポリフェノール「レスベラトロール」には、血管の弛緩を減少させ動脈硬化を改善する作用があるとみられている。
「だからといって、アルコールを推奨量以上を飲んでも大丈夫というわけではありません」と、南デンマーク大学のヤネ トルストロプ教授は言う。「ただし、アルコールを一度に大量を飲むよりも、4回以上に分けて少しずつ飲んだ方が、良い効果を得られることが示されています」と指摘している。
過度のアルコール摂取はがんや心臓病、肝臓病、胃腸疾患、膵炎などを引き起こす。専門家は「アルコール摂取が2型糖尿病に及ぼす影響は人によって異なるので、慎重になるべきです」と述べている。
Alcohol use and burden for 195 countries and territories, 1990-2016: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2016(ランセット 2018年8月23日)The Lancet: Alcohol is associated with 2.8 million deaths each year worldwide(ランセット 2018年8月23日)
New scientific study: no safe level of alcohol(ワシントン大学保健指標・保健評価研究所 2018年8月23日)
Alcohol drinking patterns and risk of diabetes: a cohort study of 70,551 men and women from the general Danish population(Diabetologia 2017年7月27日)
People who drink 3 to 4 times per week less likely to develop diabetes than those who never drink(Diabetologia 2017年7月27日)
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