ニュース
「睡眠負債」は週末の寝だめでは解消できない 睡眠を改善するための6ヵ条
2019年03月13日
睡眠不足により、血糖を調整するインスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」が進みやすくなる。
「生活スタイルを工夫することで睡眠は改善できます。週末の寝だめは解決策になりません」と、専門家はアドバイスしている。
「生活スタイルを工夫することで睡眠は改善できます。週末の寝だめは解決策になりません」と、専門家はアドバイスしている。
週末の寝だめは睡眠負債の解消にはならない
睡眠不足が続くと健康への悪影響が借金のように積み重なる「睡眠負債」を抱えてしまう。睡眠不足を放っておくと、肥満や2型糖尿病などの代謝疾患のリスクが高まる。
睡眠不足は深刻な健康障害だ。平日に忙しくて十分な睡眠をとれなくても、週末に寝だめをすれば、睡眠負債を解消できるだろうか?
専門家は「週末の寝だめは効果的な戦略になりません。毎日きちんと睡眠時間をとるのがもっとも効果的です」と答えている。
睡眠不足によりインスリン感受性が低下
コロラド大学ボルダー校のケネス ライト教授(統合生理学)の研究では、睡眠不足が慢性化すると、夕食後に間食をとりたくなり、結果としてカロリー摂取量が増える傾向があることが示された。
肥満や2型糖尿病などの代謝疾患に対策するために、睡眠不足を解消する必要がある。ただし、週末の寝だめだけでは効果は不十分だ。「週末の寝だめにより体重が増加したり、インスリン感受性が低下する傾向がある」という。
今回の研究では、36人の健康な男女(平均年齢25.5歳)を対象に、睡眠パターンで3つの群にランダムに割り付けて、研究室で9日間観察した。
1つ目のグループには毎晩9時間までの睡眠をとってもらい、2番目のグループには睡眠時間を5時間に制限してもらい、3番目のグループにはまず5日間にわたり睡眠時間を5時間に制限してもらった後で、週末には好きなだけ遅くまで寝てもらい、再び、睡眠時間を5時間に戻して2日間過ごしてもらった。
その結果、睡眠不足だった2つのグループでは、血糖を調節するインスリンの感受性が低下する「インスリン抵抗性」が高まり、夕食後のカロリー摂取量と体重が増えていた。
さらに、週末に睡眠時間を多くとると夕食後のカロリー摂取量は減少するが、ふたたび5時間睡眠に戻るとカロリー摂取量は増え、インスリン感受性が低下することが分かった。
睡眠時間を十分にとることが大切
「今回の研究結果は予想していなかったものです。週末に寝だめをした人では、筋肉と肝臓に特異的なインスリン感受性が悪化していました」と、ライト教授は言う
インスリン抵抗性が続くと、2型糖尿病のリスクが上昇する。慢性的な睡眠不足は糖尿病や肥満と関連が深いことは、これまでの研究でも示されている。
「慢性的な睡眠不足は、疲れやすさ、集中力や注意力の低下、ストレスを高めるなど、メンタル面にも悪影響が及びます。毎日十分な睡眠時間をとることを心がけるべきです」と指摘している。
米国睡眠医学会は、ひと晩に7時間以上の睡眠をとることを推奨している。しかし、「多くの人は十分な睡眠をとっていません。米国ではひと晩の睡眠時間が6時間未満という人が7,000万人に上るという調査結果があります」と、米国睡眠医学会会長のロナルド シャービン氏は言う。
20分の昼寝は効果がある
睡眠を改善するための6ヵ条
睡眠を改善するために、ゴールドスタインは次の生活スタイルを勧めている。
・ 7〜8時間の睡眠をとるとることを目標に、スケジュールを調整する。就寝時間も一定にする。これを毎日続けることが大切だ。
・ 朝も一定の時刻に起き朝食とることで、体を目覚めさせる。朝に太陽の光を浴びて、運動するのも効果的だ。
・ 午後になったらカフェイン入り飲料を控え、夜もアルコールを飲み過ぎないようにする。これらは睡眠の質を低下させるおそれがある。
・ ウォーキングなどの運動を習慣的に行うとよく眠れるようになる。運動すると睡眠を促す神経伝達物質が増える。ただし、就寝の直前には行わない。できれば運動は午前や午後に行うと良い。
・ スマートフォンなどのブルーライトは、メラトニンの分泌を抑え、睡眠の妨げになる。スマホやタブレットなどの電子機器には、就寝の2時間前からさわらないようにする。
・ 寝室に入ったら、眠ることに集中する。仕事や雑務、悩みごと、コンピュータを使った作業などを、寝床にもちこまない。
Does extra sleep on the weekends repay your sleep debt? No, researchers say(Cell Press 2019年2月28日)Ad libitum Weekend Recovery Sleep Fails to Prevent Metabolic Dysregulation during a Repeating Pattern of Insufficient Sleep and Weekend Recovery Sleep(Current Biology 2019年2月28日)
5 Tips for Better Sleep (Counting Sheep Not Required)(ミシガン大学 2017年3月14日)
A Sleep Expert's Shut-Eye Setback: Join Dr. Goldstein's Challenge(ミシガン大学 2017年3月7日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2024 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「保健指導リソースガイド」に関するニュース
- 2024年01月18日
-
【アンケート:抽選でAmazonギフト500円プレゼント】
「健康課題」と「健康管理システム/健康支援サービス」の活用について - 2023年11月27日
- 2023年度版【保健指導アトラス】を公開!保健指導に携わる人が知っておきたい法律・制度
- 2023年10月20日
-
インスリン・フォー・ライフ(IFL)グローバル
最近の活動と取組みについて(アリシア・ジェンキンス代表) - 2023年09月15日
- 2023年インスリン・フォー・ライフ(IFL)のウクライナ支援(IDAF)
- 2023年09月12日
- 期間限定40%オフ!「健診・予防3分間ラーニング」DVDセール開催中!2023年10月13日(金)まで
- 2023年07月12日
- 【アルコールと保健指導】「飲酒量低減外来」についてのインタビュー/面談時に30秒でできるアルコール指導ツールの紹介
- 2023年07月04日
- 健康経営の推進に!課題解決に合ったものを探せる「健康管理システム」一覧をリニューアルしました【サイト情報】
- 2023年04月04日
- 【サイト情報】「よろず相談センター」終了のお知らせ
- 2023年02月20日
- 【サンプル提供】間食指導に♪糖類ゼロでおいしい甘さ「パルスイート® カロリーゼロ」&ヘルシーレシピ集
- 2023年02月10日
- 【オピニオン公開中】職域でのアルコール指導・減酒支援、多職種・チーム連携