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緑豊かな公園でウォーキング たった20分でもメンタルヘルスに良い効果が 主観的幸福度が向上
2019年03月27日
緑豊かな公園でウォーキングなどを行うと、2型糖尿病や高血圧、脂質異常症などの慢性疾患のコンディションが改善する。それに加えてメンタルヘルスにも良い効果を及ぼすという研究が発表された。
ウォーキングをする余裕がない場合でも、公園でたった20分間を過ごすだけで効果を得られるという。
ウォーキングをする余裕がない場合でも、公園でたった20分間を過ごすだけで効果を得られるという。
20分過ごすだけでメンタルヘルスが向上
自然の豊かな公園で20分を過ごすだけで、メンタルヘルスが向上し幸福感を得られるという研究が発表された。時間は長いほど良く、ウォーキングなどの運動を含めるとさらに効果的だが、たった20分間を静かに過ごすだけでも効果があるという。
アラバマ大学作業療法学部のホン ユェン教授らは、平均年齢42歳の男女94人に、アラバマ州バーミングハム近郊にある3ヵ所の都市公園を訪れてもらい、主観的幸福度にどのような変化が起こるかを測定した。参加者は継続した治療は受けていないが、血圧値が高い、血糖値が高いなど、健康上の問題を抱えていた。
公園で何を行うか、どれくらいの時間いるかなど、とくに予定を決めないでいてもらった。研究は6ヵ月間続けられ、参加者の公園での滞在時間は平均32分で、30%の人がウォーキングなどの中強度以上の運動を行っていた。
その結果、公園にいることで、60%の人の健康状態のスコアが上昇し、主観的幸福度が向上することが分かった。
これまでの研究でも、自然が豊富にある環境にいると、身体活動が促進され、気分が改善するなどメンタルヘルスが向上し、ストレス、血糖値、血圧、心拍数などがそれぞれ低下することが示されている。
「自然の豊かな場所にいるだけで、リラックスできストレスが軽減され、心身に好ましい変化がもたらされます。運動をするとメンタルヘルスはより改善しますが、その余裕がなければ、必ずしも運動をしなければならないわけではありません」と、ユェン教授は言う。
都市部では緑豊かな公園を活用
緑に囲まれて、ゆったりとした時間を過ごすことで、生理的なリラックス効果を得られる。今回の研究はそうした効果を、都市部にある公園でも十分に得られることを実証した。
米国では、高血圧や2型糖尿病といった慢性疾患をもつ人の治療に、自然の豊かな公園での屋外活動を取り入れる試みが開始されている。米国立公園局が実施している「公園健康増進プログラム(Healthy Parks Healthy People program)」では、公園を「慢性疾患の予防・改善に活用できる場所」として捉えている。
「ドクターと歩こう(Walk With a Doc)」は、米国のオハイオ州コロンバス在住の心臓病専門医であるデビッド サブジャー氏が提唱して開始された運動。きっかけは、サブジャー氏が、患者の行動変容を引き出すのに、臨床の現場での指導だけでは十分でないと考え、週末に地域の公園で患者たちをウォーキングに誘ったことだ。驚くことに、参加を希望する患者の数はすぐに100人を超えた。
「ドクターと歩こう」の活動は、多くの医師の協力を得て、いまでは全米規模に拡大している。医師が治療や運動療法の意義について解説した後、参加者が自分のペースでウォーキングを開始。コーヒーや健康的な間食、血圧チェックなどのサービスも受けられる。
「都市計画では、医療や健康増進の面で、緑豊かな公園を活用した戦略へのニーズが高まっています。都市部の公園を有効活用するための施策が必要です」と、ユェン教授は指摘する。
自然が豊かな地域に住むと心筋梗塞リスクが低下
自然の豊かな環境が2型糖尿病や高血圧に効果
自然の豊かな環境は、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症などの慢性疾患にも影響をもたらすとみられている。これらは、心臓病のリスク因子だ。「運動しやすい環境を整備することで身体活動を増やせます。運動は心臓病などを抑制する重要な因子です」と、ブラウン氏は言う。
過去の研究でも、公園をウォーキングすると、街路でのウォーキングに比べ、高齢者の血圧値や血糖値がより下がり、心血管系により大きなベネフィットをもたらすことが実証されている。
「都市の緑化を進めウォーキングを推奨することで、運動による心肺機能の向上など多くの医療上の便益を得られます。とくに緑化レベルの低い住宅地により多くの樹木を植えることで、心臓の健康を改善できる可能性があります」と、ブラウン氏は指摘している。
都市計画をたてるときには、都市全体の緑地の割合ではなく、住宅地近くの公園や街路の植樹など、緑化にも焦点をあてる必要があるという。緑地環境により大気汚染が軽減される効果も得られる。
緑の多い環境がメンタルヘルスを向上させる
自然の豊かな地域で暮らす子どもは、精神疾患にかかるリスクが55%減少するという、衝撃的な研究も発表されている。研究は、デンマークのオーフス大学によるもの。
研究チームは、1985~2013年に撮影された衛星写真を使い、0~10歳のデンマークの子ども94万3,027人がどれぐらい緑地の近くで暮らしていたのかが分かる地図を作成した。
さらに、子どもたちの居住地の環境、メンタルヘルス、社会経済的な状況といった時系列的なデータを収集し、子どもたちの「緑地へのアクセスしやすさ」と「メンタルヘルス」を比較。
その結果、精神疾患と、緑地へのアクセスしやすさとの間に顕著な関連性があることが判明した。小児期に緑の豊かな地域で育った子供は、成長してから精神疾患を発症するリスクが最大で55%低下することが示された。
なぜ緑の多い環境がメンタルヘルスを向上させるのかというメカニズムは不明だが、自然の近くで暮らすと子どもの身体活動レベルが高まり、社会的結合が強まり、認知発達が改善される可能性が示唆されている。これらはすべて精神疾患に影響をもたらす因子だ。
「自然環境がメンタルヘルスに果たす役割は、考えられていたよりもずっと大きいことが分かってきました。自然環境にも配慮したポピュレーションアプローチが必要とされています」と、オーフス大学のクリスティーン エンゲマン氏は述べている。
Urban parks could make you happier(アラバマ大学 2019年2月25日)Factors associated with changes in subjective well-being immediately after urban park visit(International Journal of Environmental Health Research 2019年2月13日)
Walk With a Doc
Healthy Parks Healthy People(米国立公園局)
Relationship of Neighborhood Greenness to Heart Disease in 249 405 US Medicare Beneficiaries(Journal of the American Heart Association 2019年3月5日)
If it's Green, it's Good – For Your Hear(マイアミ大学 2019年3月13日)
Relationship of Neighborhood Greenness to Heart Disease in 249 405 US Medicare Beneficiaries(Journal of the American Heart Association 2019年3月5日)
Respiratory and cardiovascular responses to walking down a traffic-polluted road compared with walking in a traffic-free area in participants aged 60 years and older with chronic lung or heart disease and age-matched healthy controls: a randomised, crossover study(Lancet 2017年12月5日)
Factors associated with changes in subjective well-being immediately after urban park visit
Being surrounded by green space in childhood may improve mental health of adults(オーフス大学 2019年2月25日)
Residential green space in childhood is associated with lower risk of psychiatric disorders from adolescence into adulthood(National Academy of Sciences 2019年1月14日)
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