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チーズなどの発酵乳製品に含まれる「βラクトリン」が中高年の記憶力を改善

 チーズなど乳製品に含まれる「βラクトリン」が中高年の記憶力を改善するという研究を慶應義塾大学が発表した。「βラクトリン」が多く含まれる乳由来の食品素材も開発されている。
βラクトリンが記憶力を改善
 慶應義塾大学などの研究グループは、乳由来の認知機能改善ペプチドである「βラクトリン」が、健常の中高年を対象としたランダム化比較試験で記憶力を改善することを確認したと発表した。

 乳製品に認知症を予防する効果があり、カマンベールチーズなどの発酵乳製品に多く含まれるペプチドである「βラクトリン」に認知機能を改善する効果があるという研究が報告されている。

 これまでキリンホールディングスの研究グループは東京大学との共同研究で、白カビで発酵させたカマンベールチーズの摂取に、アルツハイマー病を予防する効果があり、その有効成分として認知機能改善ペプチドである「βラクトリン」を発見し、老化にともなう認知機能低下を改善することを非臨床試験で確認した研究を報告している。

 「βラクトリン」は、βラクトグロブリン由来のテトラペプチド(GTWY)で、海馬や前頭皮質のドーパミンなどのモノアミン量を増加させることで空間作動記憶やエピソード記憶などを改善することが非臨床試験で確認されている。しかし、これまで「βラクトリン」のヒトの認知機能へ及ぼす作用はよく分かっていなかった。

 そこで研究グループは、「βラクトリン」が多く含まれる乳由来の食品素材を独自に開発し、健常中高年を対象にランダム化比較のヒト試験を実施した。その結果、「βラクトリン」摂取群ではプラセボ摂取群と比較して、認知機能を、とくに記憶力を改善することを確認した。

 研究は、慶應義塾大学文学部心理学研究室の梅田聡教授、キリンホールディングスR&D本部健康技術研究所の研究グループによるもの。その成果は国際学術誌「Frontiers in Neuroscience」に掲載された。

関連情報
ヒトでの効果をはじめて確認 食品も開発
 研究グループは、健常な中高年114人を無作為に、「βラクトリン」が高含有なサプリメントを摂取する群(βラクトリン摂取群)およびプラセボ摂取群に無作為に割り付け、12週間摂取させる2重盲検試験を行った。

 摂取12週目で、ウェクスラー成人知能検査を用いて記憶機能を評価した結果、手がかり再生記憶を評価する視覚性対連合試験の結果が、βラクトリン摂取群でプラセボ摂取群と比較して有意に改善していた。その他、標準言語性対連合学習検査等の記憶検査でも、βラクトリン摂取群はプラセボ摂取群よりも高い改善作用を示した。

 これらは前頭葉が関わる機能とされており、非臨床試験の結果もふまえると、「βラクトリン」の記憶力改善(とくに想起機能)には、前頭葉の背外側前頭前野の関与が示唆される。

 今回の研究は、疫学調査にもとづいた研究より見出された認知機能改善ペプチドである「βラクトリン」の、ヒトでの効果を確認したはじめての報告となる。「βラクトリン」が高含有な食品素材は、ホエイプロテインを特定の酵素で分解することで調製される食経験が豊富な素材であり、安全な食品素材として日常生活で継続的に摂取することが可能だ。

 今後は、「βラクトリン」が活性化する脳の領域について、ヒトを対象とした試験で明らかとすることで、さらなる作用機序の解明が期待される。「βラクトリンを活用した飲食品が開発すれば、高齢化で大きな社会課題となっている認知症予防や、認知機能改善への食を通じた貢献できる可能性がある」と、研究グループは述べている。

慶應義塾大学文学部心理学専攻 梅田研究室
Supplementation with Whey Peptide Rich in β-Lactolin Improves Cognitive Performance in Healthy Older Adults: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Study(Frontiers in Neuroscience 2019年4月24日)
[Terahata]

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