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食事の改善で「腎臓病」のリスクを減らせる 高血圧・糖尿病・肥満がCKDの要因
2019年10月23日
健康的な食事スタイルが、腎臓病の予防に役立つことが、63万人以上を10年間調査した研究で明らかになった。健康的な食事により、慢性腎臓病(CKD)の発生リスクを30%減少できるという。
高血圧・糖尿病・肥満がCKDの要因
腎臓は血液を濾過して、老廃物を尿として体外に排泄し、体の中をきれいに保つ。体液の量や浸透圧・血圧の調整を行ったり、ナトリウム・カリウム・カルシウムなどのミネラルのバランスを保つ働きもしている。
「CKD(慢性腎臓病)」とは、腎臓の働きが低下したり、あるいはタンパク尿が出るといった異常が続く状態。治療をしないで放置していると、腎臓の機能が低下し、やがて腎不全になり人工透析が必要になる。
CKDは、心筋梗塞や脳卒中など、命を脅かす深刻な病気の危険因子でもある。
高血圧、糖尿病、コレステロールや中性脂肪が高い(脂質異常症)、肥満やメタボリックシンドロームなど、腎臓に負担をかける他の病気によって、CKDが引き起こされることが多い。
食事改善でCKDリスクを減少
健康的な食事により、慢性腎臓病(CKD)の進行を抑えられることが、オーストラリアのボンド大学の研究で明らかになった。研究チームは、合計63万108人の成人が参加したコホート研究18件を解析した。追跡期間の平均は10.4年間だった。
その結果、CKDを予防する効果のある食事スタイルは、▼塩分や脂肪の多い動物肉や加工肉を減らす、▼野菜、豆類、ナッツ、全粒穀物、魚、低脂肪の乳製品、果物の摂取量を増やす、▼糖質の多い菓子類、清涼飲料を減らす、▼アルコールは適量に抑える――ということだった。
こうした健康的な食事スタイルにより、CKDの発生リスクを30%減少でき、初期の腎障害の指標であるアルブミン尿のリスクも23%低減少できることが明らかになった。
腎臓病は通常の健康診断では、タンパク尿または血液中のクレアチニン値によって発見される。しかし糖尿病が原因の慢性腎臓病は、それだけでは早期発見できない。腎臓で血液を濾過している糸球体は、タンパク尿が検出される以前から壊れはじめるからだ。
腎臓病の早期の段階では、タンパクの主成分であるアルブミンがわずかに尿に混じる。そのアルブミン尿の検査が早期発見には不可欠だ。
腎臓病は初期の段階では自覚症状が乏しく、発見されたときにはかなり進行してしまっているというケースが少なくない。早期発見して治療を開始するために、医療機関や健診で定期的に検査を受けることが重要となる。
腎臓病を防ぐための食事スタイル
米国のメイヨークリニックによると、CKDを防ぐための食事スタイルとは次のことだ。
● 食塩を摂り過ぎない |
日本高血圧学会が「減塩」を呼びかけ
慢性腎臓病(CKD)の予防のための血圧コントロールの目標は130/80mmHg。
通常は生活習慣の改善だけでは降圧目標を達成するのが難しい場合には、降圧薬による薬物療法が開始される。降圧薬であるアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)によって、腎機能の低下を抑制する効果も期待できる。
しかし、降圧目標を達成するためには、やはり減塩などの食事の改善が必須となる。多くの場合で、薬物療法だけで降圧目標を達成するのは難しいからだ。
1日の食塩量は、調味料などにより加えられる食塩と、もともと食品に含まれている食塩を合計した量だ。ただし、調理されてしまった食塩は目で見えるものではなく、塩分の多い濃い味付けに慣れてしまうと、減塩するのは難しくなる。
毎日の食事で塩分の少ない薄味に慣れる必要がある。香辛料・薬味を使えば、塩分が少なくとも、味わいが深くなり満足しやすくなる。
日本では、コンビニ弁当などの加工食には栄養表示があるものが多いが、従来はナトリウムの量の表示のみが義務付けられていて、食塩相当量が分かりにくかった。
それが、日本高血圧学会などの働きがけにより、栄養表示の「ナトリウム」は「食塩相当量」で表示されることになった。2020年までに、新基準の栄養表示が見られることになる。
減塩調味料や減塩食品の利用するのもひとつの方法だ。日本高血圧学会のホームページでは、日本の代表的な減塩食品の一覧を見ることができる。
● 肥満は腎臓病の原因になる |
● まとめ食いは肥満や糖尿病につながる |
● 食物繊維の多い食品を食べる |
● 飽和脂肪酸を摂り過ぎない |
● アルコールを飲み過ぎない |
糖尿病や高血圧の食事療法は腎臓病の予防にも良い
「糖尿病や高血圧の予防・改善に有用とされる食事スタイルは、腎臓病の予防のためにも良いことが明らかになりました。これまで地中海ダイエットやDASHダイエット、米国の食事ガイドラインで推奨される食事スタイルなどは、CKDの予防にも役立つ可能性があります」と、ボンド大学公衆衛生学部のジャイモン ケリー氏は言う。
米国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所(NIDDK)のよると、米国人の14%がCKDが疑われ、その半数以上が診断を受けておらず、自分がCKDであることに気付いていない。
「健康的な食事スタイルの選択が腎臓病の発症の抑制に関係していることを明らかにするために、十分な追跡期間をともなう大規模なランダム化比較試験が必要ですが、これまでに報告された観察研究にも多くのエビデンスがあります。医師や保健指導に携わる医療者は、食事の改善を広く呼びかけるべきです」と、ケリー氏は指摘している。
Chronic kidney disease(メイヨークリニック)A healthy diet may help prevent kidney disease(米国腎臓学会 2019年9月24日)
Healthy Dietary Patterns and Incidence of CKD: A Meta-Analysis of Cohort Studies(Clinical Journal of the American Society of Nephrology 2019年9月24日)
Can Dietary Patterns Modify Risk for CKD?(Clinical Journal of the American Society of Nephrology 2019年9月24日)
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