経団連調査、パワハラの相談件数が増加 コミュニケーションや理解不足が背景に
パワハラに対する社会の関心が高まりや、各社の相談窓口の強化が増加につながったと考えられるが、一方でコミュニケーションの希薄化やハラスメントの理解不足も背景にある。
職場におけるパワハラとは「優越的な関係を背景とした言動」「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」「労働者の就業環境が害される」ことの全てを満たすものを指す。
2020年6月に改正労働施策総合推進法が施行、パワハラ防止に関する企業の責務が明確になって1年が経過したことから経団連は2021年秋、会員企業400社を対象に職場におけるハラスメントについて調査を実施。回答率は26.9%、業種別では製造業が45%・非製造業が55%だった。
結果、5年前と比較してパワハラに関する相談件数が増えたと答えた企業は全体の44%。増えた理由は、法施行に伴う社会の関心の高まり、相談窓口の周知強化・相談しやすい雰囲気の醸成、経営者からのメッセージや研修実施による意識の向上、などが考えられている。
一方、セクシュアルハラスメントの相談は、「変わらない」が45.3%と最も高く、次いで「減った」が28.8%。「増えた」は11.5%にとどまった。
これらの結果を、職場におけるハラスメント課題への対応に関して積極的に多数の取り組みを実施している18社に絞ってみると、パワハラの相談は「増えた」が61.1%、セクハラの相談は「増えた」が16.7%と、いずれも全体の結果より高かった。コミュニケーションの活性化や組織風土改善などに取り組んでいる企業の方が、相談しやすい雰囲気や体制が整っていることが分かる。
調査結果では、ハラスメントに関する最近の相談動向・形態についてもまとめた。例えばコミュニケーション不足が原因と考えられる相談が増加。上司からの業務上の注意や指導をパワハラと捉えて相談するケースや、リモートワークによるコミュニケーション不足や希薄化からすれ違いが起きているケースなどがあった。
またパワハラの理解不足による相談も増加しており、「指導とハラスメントの境界線が線引きしづらい」「上司が適切な指導に対して、萎縮する懸念」といった影響を心配する声もある。
これらの課題を解決するため、コミュニケーション活性化のためには、コミュニケーション能力向上のための研修や「1on1」ミーティングを半数以上の企業が実施。またハラスメントの理解促進のためには、7割を超える企業がケーススタディーやロールプレーを含めた集合研修を開催していた。
相談しやすい体制の整備も各社力を入れており、「人事、社外、コンプライアンス等複数の相談窓口を設置」している企業は8割以上に上った。調査結果では、課題解決のための各社の取り組み事例を列記しており、参考にすることができる。
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