ニュース

「運動アプリ」がメンタルヘルスも改善 スマホアプリの導入は運動指導で障壁の低い介入に

 運動アプリを利用した自宅ででる簡単なトレーニングにより、ストレスやうつ症状が減ることが、医療従事者や専門職を対象とした12週間の試験で示された。

 新型コロナのパンデミックにより、医療従事者は過去3年間に、非常に困難な状況におかれ、メンタルヘルスの大幅な低下が報告されている。

 スマホなどの運動アプリは、世界的に増えているうつ病などのメンタルヘルス危機に対策するための効果的な主要なツールになる可能性がある。

運動アプリが医療従事者のストレスやうつ症状を軽減

 運動アプリを利用した簡単な12週間の自宅トレーニングは、医療従事者や専門職のストレスやうつ症状を軽減するのにも効果的という研究を、カナダのブリティッシュコロンビア大学が発表した。

 「新型コロナのパンデミックにより、医療従事者は過去3年間に、非常に困難な状況におかれました。多くの医療従事者でメンタルヘルスの大幅な低下が報告されました。燃え尽き症候群になる前に、プラスの効果をもたらす低コストの介入を行うことが求められています」と、同大学運動学部研究員のヴィンセント ゴセラン-ブーシェ氏は言う。

 研究グループは今回、2022年4月~7月にブリティッシュコロンビア州の都市部の医療機関からスクリーニングされた平均年齢41.0歳の288人の医療従事者を対象に、12週間のアプリベースの運動介入による、無作為化臨床試験を実施。医療従事者のうつ症状、燃え尽き症候群(burnout)、欠勤をどの程度軽減できるかを検討した。

 介入群は「Down Dog」と呼ばれる無料の家庭用運動アプリを使用。自重インターバルトレーニング、ヨガ、ウォーキング、ランニングなど、20分間で1セットの運動に週に4回(週に80分)、12週間取り組んだ。対照群は待機リストに登録されただけで運動アプリを使用しなかった。

運動アプリの利用によりうつ症状が41%減少

 その結果、介入群はうつ症状が有意に減少した。Feingold effect sizeによるうつ症状の判定では、介入群は試験終了時までに41%減少。燃え尽き症候群の2つの側面についても一貫して優位な効果が認められた[冷笑主義は33%、感情的疲労は39%、それぞれ減少した]。欠勤も0.15倍に減少した。

 なお、参加者のうち、246人(85.4%)が女性で、多くは看護師だった。試験終了までに定期的にアプリを使用していた参加者はわずか33人(23%)だった。

運動アプリを使用した自宅でできるトレーニングは効果がある

 「運動アプリを使用した自宅でできる簡単なトレーニングは、医療従事者のうつ症状を軽減するのに有用であることが示されました。スマホなどの運動アプリは、世界的に増えているうつ病などのメンタルヘルス危機に対策するための効果的な主要なツールになる可能性があります」と、同大学運動学部の身体活動・医療研究委員長のエリ プターマン氏は言う。

 研究者は、新型コロナのパンデミックが医療スタッフのメンタルヘルスに及ぼした影響に対処するために、世界中の医療機関が提供したメンタルヘルスへの取り組みには、運動などの行動的アプローチが欠けていたことを指摘している。

 一方で、運動アプリに取り組んだ介入群で、運動の遵守率が低かった点については、「今回の研究は、運動アプリの提供などの、障壁の低い介入の可能性を示すものですが、同時に運動の継続を妨げる要因についても解明する必要があります」としている。

 「今後は、運動を支えるフィットネスコーチなどが加わり、参加者のモチベーションを上げる支援を行うことで、運動習慣を定着させる介入を行う必要があります。こうした運動指導による、精神と身体、さらには経済的な影響に焦点を当てた長期的な試験を計画しています」と、プターマン氏は述べている

Exercise apps a good prescription to boost healthcare workers' mental health (ブリティッシュコロンビア大学 2023年8月9日)
Effects of 12 Weeks of At-Home, Application-Based Exercise on Health Care Workers' Depressive Symptoms, Burnout, and Absenteeism: A Randomized Clinical Trial (JAMA Psychiatry 2023年8月9日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2024年04月30日
タバコは歯を失う原因に 認知症リスクも上昇 禁煙すれば歯を守れて認知症も予防できる可能性が
2024年04月25日
厚労省「地域・職域連携ポータルサイト」を開設
人生100年時代を迎え、保健事業の継続性は不可欠
2024年04月23日
生鮮食料品店が近くにある高齢者は介護費用が低くなる 自然に健康になれる環境づくりが大切
2024年04月22日
運動が心血管疾患リスクを23%低下 ストレス耐性も高められる 毎日11分間のウォーキングでも効果が
2024年04月22日
職場や家庭で怒りを爆発させても得はない 怒りを効果的に抑える2つの方法 「アンガーマネジメント」のすすめ
2024年04月22日
【更年期障害の最新情報】更年期は健康な老化の入り口 必要な治療を受けられることが望ましい
2024年04月22日
【肺がん】進行した人は「健診やがん検診を受けていれば良かった」と後悔 早期発見できた人は生存率が高い
2024年04月16日
塩分のとりすぎが高血圧や肥満の原因に 代替塩を使うと高血圧リスクは40%減少 日本人の減塩は優先課題
2024年04月16日
座ったままの時間が長いと肥満や死亡のリスクが上昇 ウォーキングなどの運動は夕方に行うと効果的
2024年04月15日
血圧が少し高いだけで脳・心血管疾患のリスクは2倍に上昇 日本の労働者8万人超を調査 早い段階の保健指導が必要
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶