ニュース

アルコールが高血圧の原因に 飲酒量が少ない人も血圧が上昇 2万人弱を調査

 アルコール飲料を飲む習慣のある人は、血圧が高くなりやすいことが、日本・米国・韓国の成人2万人弱を対象とした研究で明らかになった。少量の飲酒をしている人でも、時間の経過とともに血圧は高くなるという。

 「アルコール摂取のみが、血圧上昇の原因となるわけではないにしても、お酒の飲むことが血圧上昇に寄与していることはほぼ確かです」と、研究者は述べている。

 「血圧が高めの人は、アルコール飲料を飲むのを控えるべきです。まったく飲まないのは、さらに良いことです」としている。

アルコールを飲むと血圧が上昇 少量の飲酒でも悪影響

 アルコール飲料を飲みすぎている人は、血圧が高くなりやすいことが、2万人弱を対象とした研究で明らかになった。

 研究は、米国心臓学会(AHA)が発表したもので、その成果は、同学会が刊行している学術誌「Hypertension」に掲載された。

 研究グループは、日本・米国・韓国の20歳から70代前半までの成人1万9,548人(男性65%)を対象とした7件の研究のデータを分析。

 その結果、毎日のアルコール飲料の摂取量が多いことと、収縮期(最高)血圧と拡張期(最低)血圧の上昇とのあいだに、明確な関連があることが判明した。

 アルコールを飲みすぎている人は、最高血圧は4.9mmHg上昇する。アルコール摂取量が少ない人でも、血圧値は継続的に上昇した。さらに、高血圧のない成人でも、毎日のアルコール飲料の摂取量が多いと、血圧値は年々、急激に上昇するおそれがあるという。

 「アルコール摂取のみが、血圧上昇の原因となるわけではないにしても、今回の研究で、アルコールが血圧上昇に寄与していることが裏付けられました」と、イタリアのモデナ大学で疫学・公衆衛生学を研究しているマルコ ビンセティ教授は言う。

 「少量のアルコールを飲んでいる人でも、時間の経過とともに血圧は高くなるという結果になり、少し驚いています。少量飲酒は大量飲酒に比べると、血圧上昇は少ないにしても、多くの人にとってアルコール飲料を飲むことは高血圧につながります」としている。

 少量のアルコールは、短期的には血管を広げて血圧を下げることがあるが、飲み続けていると、やはり血圧は上昇するという。今回の研究では、少量のアルコールが健康に有益な効果をもたらすという証拠はえられなかった。

高血圧予備群もアルコールの飲みすぎには注意が必要

 「高血圧は心血管イベントなどのリスクを高めます。多くの国のガイドラインでは、アルコール摂取量を制限することが推奨されています。アルコールを飲まないのは、さらに良いことです」と、ビンセティ教授は指摘している。

 研究グループは5年以上にわたり、7件の研究の参加者の健康データを解析した。彼らは、アルコールを習慣的に飲んでいる成人と飲んでいない成人を比べ、次のことを明らかにした。

 国によってアルコール含有量は異なるものの、340mLのビール、150mLのワイン、42mLの蒸留酒には、それぞれおよそ14gのアルコールが含まれる。

  • 1日に純アルコール換算で平均12gを飲んでいる人は、収縮期(最高)血圧は1.25mmHg上昇した。
  • 1日に純アルコール換算で平均48gを飲んでいる人は、最高血圧は4.9mmHg上昇した。
  • 1日に純アルコール換算で平均12gを飲んでいる人は、拡張期(最低)血圧も1.14mmHg上昇した。
  • 1日に純アルコール換算で平均48gを飲んでいる人は、最低血圧は3.1mmHg上昇した。
  • アルコールと高血圧の関連性は、とくに男性で強くみられたが、女性では影響は比較的少なかった。

 「血圧値が高い人は、アルコール摂取量と血圧の経時変化とのあいだに強い関連があることが示されました。さらに、血圧が上昇傾向にあるが、まだ高血圧と診断されるほどではない予備群の人も、なるべくアルコール摂取を控えることで恩恵を受けられる可能性があります」と、米国のチューレーン大学公衆衛生学部のポール ウェルトン氏は述べている。

飲酒のベネフィットとリスクについて相談

 対象となった7件の研究は、日本・米国・韓国で1997年~2021年に発表されたもの。参加者のなかには、これまでに高血圧やその他の心血管疾患、糖尿病、肝疾患、アルコール依存症、または暴飲暴食と判定された人はいなかった。

 収縮期(最高)血圧は、心臓が収縮するときに動脈壁にかかる力を測定するもので、その値は年齢とともに着実に上昇し、心血管疾患のリスクの強力な予測因子となる。高血圧の軽減・予防、さらには発症の遅延のために、効果的な血圧管理が不可欠となる。

 米国心臓学会(AHA)は、潜在的な健康上の利益を期待して、お酒を飲むのは危険としている。飲酒をする習慣のある人は、適度な飲酒のベネフィットとリスクについて、かかりつけの医師に相談することを勧めている。また、飲酒習慣のない人は、無理して飲むべきではないとしている。

Routinely drinking alcohol may raise blood pressure even in adults without hypertension (米国心臓学会 2023年7月31日)
Alcohol Intake and Blood Pressure Levels: A Dose-Response Meta-Analysis of Nonexperimental Cohort Studies (Hypertension 2023年7月31日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2025年06月10日
【アプリ活用で運動不足を解消】1日の歩数を増やすのに効果的 大阪府健康アプリの効果を8万人超で検証
2025年06月09日
【睡眠改善の最新情報】大人も子供も睡眠不足 スマホと専用アプリで睡眠を改善 良い睡眠をとるためのポイントは?
2025年06月09日
健康状態が良好で職場で働きがいがあると仕事のパフォーマンスが向上 労働者の健康を良好に維持する取り組みが必要
2025年06月09日
ヨガは肥満・メタボのある人の体重管理に役立つ ヨガは暑い夏にも涼しい部屋でできる ひざの痛みも軽減
2025年06月05日
【専門職向けアンケート】飲酒量低減・減酒に向けた酒類メーカーの取り組みについての意識調査(第2回)
2025年06月02日
【熱中症予防の最新情報】職場の熱中症対策に取り組む企業が増加 全国の熱中症搬送者数を予測するサイトを公開
2025年06月02日
【勤労者の長期病休を調査】長期病休の年齢にともなう変化は男女で異なる 産業保健では性差や年齢差を考慮した支援が必要
2025年06月02日
女性の月経不順リスクに職場の心身ストレスが影響 ストレスチェック活用により女性の健康を支援
2025年06月02日
自然とのふれあいがメンタルヘルスを改善 森が人間の健康とウェルビーイングを高める
2025年05月30日
都民の健康意識は高まるも特定健診の受診率は66% 「都民の健康と医療に関する実態と意識」調査
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,800名)
登録者の内訳(職種)
  • 医 師 3%
  • 保健師 47%
  • 看護師 11%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 20%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶