ニュース
アルコールが高血圧の原因に 飲酒量が少ない人も血圧が上昇 2万人弱を調査
2023年08月21日
アルコール飲料を飲む習慣のある人は、血圧が高くなりやすいことが、日本・米国・韓国の成人2万人弱を対象とした研究で明らかになった。少量の飲酒をしている人でも、時間の経過とともに血圧は高くなるという。
「アルコール摂取のみが、血圧上昇の原因となるわけではないにしても、お酒の飲むことが血圧上昇に寄与していることはほぼ確かです」と、研究者は述べている。
「血圧が高めの人は、アルコール飲料を飲むのを控えるべきです。まったく飲まないのは、さらに良いことです」としている。
アルコールを飲むと血圧が上昇 少量の飲酒でも悪影響
アルコール飲料を飲みすぎている人は、血圧が高くなりやすいことが、2万人弱を対象とした研究で明らかになった。 研究は、米国心臓学会(AHA)が発表したもので、その成果は、同学会が刊行している学術誌「Hypertension」に掲載された。 研究グループは、日本・米国・韓国の20歳から70代前半までの成人1万9,548人(男性65%)を対象とした7件の研究のデータを分析。 その結果、毎日のアルコール飲料の摂取量が多いことと、収縮期(最高)血圧と拡張期(最低)血圧の上昇とのあいだに、明確な関連があることが判明した。 アルコールを飲みすぎている人は、最高血圧は4.9mmHg上昇する。アルコール摂取量が少ない人でも、血圧値は継続的に上昇した。さらに、高血圧のない成人でも、毎日のアルコール飲料の摂取量が多いと、血圧値は年々、急激に上昇するおそれがあるという。 「アルコール摂取のみが、血圧上昇の原因となるわけではないにしても、今回の研究で、アルコールが血圧上昇に寄与していることが裏付けられました」と、イタリアのモデナ大学で疫学・公衆衛生学を研究しているマルコ ビンセティ教授は言う。 「少量のアルコールを飲んでいる人でも、時間の経過とともに血圧は高くなるという結果になり、少し驚いています。少量飲酒は大量飲酒に比べると、血圧上昇は少ないにしても、多くの人にとってアルコール飲料を飲むことは高血圧につながります」としている。 少量のアルコールは、短期的には血管を広げて血圧を下げることがあるが、飲み続けていると、やはり血圧は上昇するという。今回の研究では、少量のアルコールが健康に有益な効果をもたらすという証拠はえられなかった。高血圧予備群もアルコールの飲みすぎには注意が必要
「高血圧は心血管イベントなどのリスクを高めます。多くの国のガイドラインでは、アルコール摂取量を制限することが推奨されています。アルコールを飲まないのは、さらに良いことです」と、ビンセティ教授は指摘している。 研究グループは5年以上にわたり、7件の研究の参加者の健康データを解析した。彼らは、アルコールを習慣的に飲んでいる成人と飲んでいない成人を比べ、次のことを明らかにした。 国によってアルコール含有量は異なるものの、340mLのビール、150mLのワイン、42mLの蒸留酒には、それぞれおよそ14gのアルコールが含まれる。- 1日に純アルコール換算で平均12gを飲んでいる人は、収縮期(最高)血圧は1.25mmHg上昇した。
- 1日に純アルコール換算で平均48gを飲んでいる人は、最高血圧は4.9mmHg上昇した。
- 1日に純アルコール換算で平均12gを飲んでいる人は、拡張期(最低)血圧も1.14mmHg上昇した。
- 1日に純アルコール換算で平均48gを飲んでいる人は、最低血圧は3.1mmHg上昇した。
- アルコールと高血圧の関連性は、とくに男性で強くみられたが、女性では影響は比較的少なかった。
飲酒のベネフィットとリスクについて相談
対象となった7件の研究は、日本・米国・韓国で1997年~2021年に発表されたもの。参加者のなかには、これまでに高血圧やその他の心血管疾患、糖尿病、肝疾患、アルコール依存症、または暴飲暴食と判定された人はいなかった。 収縮期(最高)血圧は、心臓が収縮するときに動脈壁にかかる力を測定するもので、その値は年齢とともに着実に上昇し、心血管疾患のリスクの強力な予測因子となる。高血圧の軽減・予防、さらには発症の遅延のために、効果的な血圧管理が不可欠となる。 米国心臓学会(AHA)は、潜在的な健康上の利益を期待して、お酒を飲むのは危険としている。飲酒をする習慣のある人は、適度な飲酒のベネフィットとリスクについて、かかりつけの医師に相談することを勧めている。また、飲酒習慣のない人は、無理して飲むべきではないとしている。 Routinely drinking alcohol may raise blood pressure even in adults without hypertension (米国心臓学会 2023年7月31日)Alcohol Intake and Blood Pressure Levels: A Dose-Response Meta-Analysis of Nonexperimental Cohort Studies (Hypertension 2023年7月31日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2024 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「特定保健指導」に関するニュース
- 2024年04月30日
- タバコは歯を失う原因に 認知症リスクも上昇 禁煙すれば歯を守れて認知症も予防できる可能性が
- 2024年04月25日
-
厚労省「地域・職域連携ポータルサイト」を開設
人生100年時代を迎え、保健事業の継続性は不可欠 - 2024年04月23日
- 生鮮食料品店が近くにある高齢者は介護費用が低くなる 自然に健康になれる環境づくりが大切
- 2024年04月22日
- 運動が心血管疾患リスクを23%低下 ストレス耐性も高められる 毎日11分間のウォーキングでも効果が
- 2024年04月22日
- 職場や家庭で怒りを爆発させても得はない 怒りを効果的に抑える2つの方法 「アンガーマネジメント」のすすめ
- 2024年04月22日
- 【更年期障害の最新情報】更年期は健康な老化の入り口 必要な治療を受けられることが望ましい
- 2024年04月22日
- 【肺がん】進行した人は「健診やがん検診を受けていれば良かった」と後悔 早期発見できた人は生存率が高い
- 2024年04月16日
- 塩分のとりすぎが高血圧や肥満の原因に 代替塩を使うと高血圧リスクは40%減少 日本人の減塩は優先課題
- 2024年04月16日
- 座ったままの時間が長いと肥満や死亡のリスクが上昇 ウォーキングなどの運動は夕方に行うと効果的
- 2024年04月15日
- 血圧が少し高いだけで脳・心血管疾患のリスクは2倍に上昇 日本の労働者8万人超を調査 早い段階の保健指導が必要