オピニオン/保健指導あれこれ
地域での看取り

No.6 特別養護老人ホームでの看取り

看護師、社会福祉士、介護支援専門員、MBA(経営学修士)
神山 欣子
 厚生労働省「人口動態調査」によれば、2012年に亡くなった高齢者(65歳以上)の死亡場所としては、病院・診療所が約8割と大半を占めています。それ以外では、自宅が11.8%、老人ホーム(特別養護老人ホーム、有料老人ホーム等)が5.3%、介護老人保健施設が2.0%と続きますが、なぜ特別養護老人ホームでの看取りが増えないのでしょうか。

 1. 看取りケアが増えない理由
 特別養護老人ホーム(以下、特養)の配置基準は、昭和38年に制定された老人福祉法における特養の設置及び配置基準の第12条において定められた通り、利用者50~130人未満の場合、看護師3人以上と医師の配置が義務付けられています。しかし、医師は常勤医でなくてもよいために、全国の特養のわずか2.5%しか常勤医師が配置されていません。看護職員の勤務形態は日勤帯が多く、夜間については9割が「オンコールで対応する」となっているため、医療を提供するには十分な体制とは言えない状況です。

 しかし、特養に入所している利用者の超高齢化や重度化のため、ほとんどの利用者は医療への依存度が高く、胃ろうによる経管栄養や常に吸引が必要な場合もあります。さらに、苦痛をともなう様々な症状を持つ高齢者の看取りの必要性が高まっていますが、十分な体制でないために、受け入れが困難であるといった声をよく聞きます。

 2. 介護と看取り
 介護職員の不足は社会問題であり、その労働力を諸外国に求める動きもあります。しかし、現状は「人の役に立ちたい」「お年寄りと話しをするのが好き」といった純粋な気持ちで介護の業務に興味をもち、採用される多くの若い職員は、利用者の入浴や排泄ケア、食事の介助を通して高齢者の立場に立って献身的にお世話をしています。そのような若い職員が、日本の介護の未来を支えていると感じます。

 介護職員は、長年にわたり利用者のお世話をしていると、家族のようにかけがえのない存在になり、終末期が近づいてもなかなか現実を受け入れることが難しいこともあり、不安や喪失感に心が揺れ動きます。医師や看護師が、介護職員を共に支えるという関係が無ければ看取りは難しく、やりがいを感じることは出来ないのです。

 3. 家族の思い
 特養に入所したからといって家族の役割がなくなるわけではありません。家族にとっては、親の老化や認知症が進むにつれて、急変時や今後の療養について判断する責任は重くなります。最善の終末期ケアとはどのようなものか、どうあるべきかを悩む家族の姿をよく目にします。最終的にはそれぞれの「死生観」によって決めていくことになりますが、兄弟姉妹が同じ考えを持っているとは限らないため、何が正しいか、どうすることが最も良いのかと結論つけることが難しいのです。

 特養では、家族と医師や看護師、介護職員など、さまざまな専門職がカンファレンスを行い、本人が現在どのようなステージにいて、今後どのような経過をたどるのかを話し合います。そして、治療することよりも、苦痛なく安心していつもの生活を続けることが最も幸せだと判断した場合、特養での看取りの同意書を得ることにしています。

 次回は、死の迎え方について考えを深めていきます。


お彼岸の法要では特養の中の仏様にお参りし、ご先祖様を偲びます。「そちらに逝ったときはよろしくお願いします」と心に念じている高齢者もおられます。

<参考文献>
1)社会福祉六法.ミネルヴァ書房.2003
2)株式会社三菱総合研究所. 介護サービス事業所における医療職の在り方に関する調査研究事業. 平成24年度老人保健健康増進事業.2013
3)みずほ情報総研.多死社会における看取りの選択肢.2014

■共同著者
栗岡 住子(保健師、産業カウンセラー、MBA、医学博士)
詳細はこちら≫(オピニオン連載)公衆衛生看護に必要なマネジメント

「地域保健」に関するニュース

2021年04月12日
【子宮頸がんを予防する日】予防ワクチンの接種を受ければ9割の感染を防げる 定期的な検診で女性の未来を守れる
2021年04月12日
【新型コロナ】新型コロナワクチンの副反応 発熱・頭痛・倦怠感は接種2回目に大幅上昇 年代・性別で差があり高齢者では低い 厚労省中間報告
2021年04月09日
【健やか21】「妊産婦のための食生活指針」の改定について(厚生労働省)
2021年04月08日
新型コロナ情報サイト「こびナビ」を開設~日米の医師らが協力
2021年04月07日
小児のがん患者体験調査を初めて実施(国立がん研究センター)
2021年04月06日
玄米や麦ごはんなどの「全粒穀物」が心臓病や脳卒中のリスクを低下 「超加工食品」の食べ過ぎにも注意
2021年04月05日
朝食は「1日でもっとも重要な食事」 朝8時30分までに食べると糖尿病リスクは低下 朝食を改善する4つの方法
2021年04月05日
【新型コロナ】コロナ禍でメンタルヘルスが悪化 都市の個人主義的な生活スタイルが原因? 貧困も大きく影響
2021年04月05日
【新型コロナ】東京オリンピック開会式での感染は7つの対策で防ぐ 99%のリスクを低減 東京大学などがシミュレーション
2021年04月05日
近くの薬局で生活習慣病の検査ができる「ゆびさきセルフ測定室」 全国に拡大中 コロナ禍でも自分の体をチェック
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
  • 週1回配信(毎週木曜日)
  • 登録者数 10,678 人(2021年04月現在)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 2.7%
  • 保健師 44.8%
  • 看護師 10.8%
  • 管理栄養士・栄養士 19.8%
  • その他 22%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶