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なぜ今、ストレスチェックなのか ~労働安全衛生法改正をうけて~

No.1 なぜ今、ストレスチェックなのか~労働安全衛生法改正をうけて~

東京工科大学医療保健学部 産業保健実践研究センター長 看護学科地域看護・産業看護学 教授
五十嵐 千代

 平成26年6月に労働安全衛生法の一部を改正する法律が公布され、ストレスチェック制度が平成27年12月から施行されます。平成27年4月には、ガイドラインが出されました。

 ストレスチェック制度については、どのように実施していくのか、各事業場では現在検討中であるところが多いと思います。労働者数50人以上の事業場に、実施義務がされているこの制度。なぜ、このような制度が始まるのでしょうか?

 実はその発端は平成21年の冬までさかのぼります。私は平成19年から内閣府自殺対策推進会議(現在は自殺対策官民連携会議)の委員をしています。

 労働者の健康支援を担う産業保健分野の専門家であり、看護を代表する立場として参画していますが、当時年間の自殺者が3万人を超えており、その中の3分の2が労働年齢層という状況でした。その事態を重く見た当時の自殺対策担当の長妻大臣や政務3役の方が別の機会を設け、私に企業でのメンタルヘルス対策を説明するように言われました。

 当時、私は企業で産業保健師として働いていましたので、保健師がどれだけ労働者の心の相談をおこなっているか、また、管理者教育をおこなうことで職場の2次予防を促進しているかを説明しました。

 皆、保健師の活動に納得しながら、話を聞いていましたが、その際、長妻大臣の意向として「健康診断にうつ病のスクリーニングを入れてはどうか」という質問がありました。即座に私は「反対」であると答えました。その理由は2つでした。

 1つは年に1回スクリーニングをしてもうつ病は見つからない上、オーバースクリーニングで混乱する。それよりも、タイムリーに労働者の相談にのることが重要であると伝えました。

 2つ目の理由は、中小企業などでそのようなスクリーニングを行うと、うつ病のリスクが高いことで解雇になるなど、労働者の不利益が生じるとお答えしました。

 しかし、翌平成22年早々に、長妻大臣がテレビで「労働者の健康診断にうつ病スクリーニングを入れる」と公言し大変驚きました。

 その後、すぐに厚生労働省で「職場におけるメンタルヘルス対策検討委員会」が発足し、私もその一員となりました。委員である精神科医、産業医、産業保健師、経団連、労働組合総連合会など全ての人が反対をしました。理由は前述した私の理由と同じでした。

 当時、厚生労働省では、メンタルヘルス対策を講じている事業場を2020年までに、100%にするという目標がありました。そのようなことを鑑み、その実現のためには、なんとかよいアイディアはないかと、産業保健師仲間に相談しました。

 そして考えついたものは、定期健康診断の自覚症状の中に食欲や不眠、頭重感などの項目を定例の項目として加え、労働者自らがストレスの気づきを促すというものでした。

 そこから、今回のストレスチェック制度は動きだしたのです。当初平成23年春には法案が国会提出となるはずが、東日本大震災で延期となりました。その間、日本産業衛生学会(筆者も意見書メンバーの一人)からは、国際的な流れからはストレス対策は1次予防であることから、個人のストレス反応をみるだけでなく、労働環境の改善につなげるべきだという主張を行いました。

 その後、衆議院の解散により政権も変わり労働安全衛生法改正案は廃案になりましたが、自民党政権からあらためて現在のストレスチェック制度が提案され法案可決にいたっています。

 ストレスチェックを実施する職種として旧法案では、医師または保健師でした。なぜ、この2職種であったかといえば、ストレスチェックに際し、受診勧奨や保健指導を伴うからです。

 その保健指導も労働者個人のストレスマネジメントだけでなく、ストレスチェックから職場の問題をあきらかにする、つまり、組織のアセスメントと介入が必要とされていました。

 新案では、医師または保健師等となり一定の研修を受けた看護師と精神保健福祉士が含められましたが、この法案の大きなポイントは個別のストレス反応や職場要因のスコアから、問題となる労働環境の改善の必要性を検討するということなのです。よって、個人と集団・組織、事業場全体をアセスメントできる、公衆衛生看護に基づいた保健師は、それができる職種と考えます。そしてこのストレスチェック制度は、最終的には労働者の自殺予防につなげていくことが大切だということです。

 私はこれらの目的を果たすべく、一般社団法人日本産業保健サポートセンターを設立しました。メンタルヘルス対策を含む健康支援サービスを提供や、産業保健師などの産業看護職の教育機関としての役割を担っていく所存ですので、是非、ご活用ください。

【関連団体】
一般社団法人日本産業保健サポートセンター

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