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ウォーキングなどの運動で認知症を予防 軽めの運動でも十分な効果 中年期に運動不足だと脳の健康に悪い影響が

 アルツハイマー病のリスクがある人が、軽めのウォーキングなどの運動に取り組むと、認知機能の低下を抑えられることが、新しい研究で明らかになった。

 「低強度の運動であっても、軽度認知障害のリスクのある高齢者の脳の健康を促進し、認知機能の低下を防ぐために、安全で実行可能な戦略になることが示されました」と、研究者は述べている。

 45歳~65歳の中年期に、ウォーキングなどの運動や身体活動を取り組むと、認知症の予防効果を期待できることも確かめられている。

 逆に、中年期に運動不足であると、脳の健康に悪い影響があらわれる可能性があるという。
低強度の運動に認知機能の低下を抑える効果が

 アルツハイマー病のリスクがある人が、ウォーキングなどの運動に取り組むと、認知機能の低下を抑えられることが、米カリフォルニア大学などによる新しい研究で明らかになった。研究成果は「Alzheimer's & Dementia」に発表された。

 「軽めのウォーキングなどの低強度の運動であっても、認知症のリスクのある高齢者の認知機能の低下を抑えられる効果を得られることが分かりました」と、同大学公衆衛生・人間長寿科学部のアラジン シャディヤブ氏は言う。

 記憶障害や客観的な記憶力の低下を特徴とする軽度認知障害のある人は、アルツハイマー型認知症を発症するリスクが高く、この症状をもつ人の16%が毎年アルツハイマー病に進行することが知られている。

低強度の運動と中・高強度の運動を比較

 研究は、軽度認知障害(MCI)のある高齢者を対象に運動の効果を調べているEXERT研究に参加した高齢者を対象に行われた。研究は2件行われ、それぞれMCIと診断された高齢者が296人と214人が参加した。

 研究グループは、参加者を低強度の運動に取り組むグループと、中・高強度の運動に取り組むグループに分けて、12ヵ月間の認知機能の変化を調べた。

 運動には、ウォーキングなどの中等度から高強度の有酸素運動、低強度のストレッチ、バランス運動、関節可動域を改善するための運動などが含まれた。

 その結果、運動に取り組んだ高齢者は、どちらの運動であっても、研究に参加しなかった高齢者に比べて、認知機能の低下が有意に少ないことが示された。

運動は認知機能の低下を防ぐための安全で実行可能な戦略

 「研究には専門の運動トレーナーが参加し、参加者にとってより身近な運動の介入を実現することを目指しました。研究成果は、地域社会での認知症予防に役立てられるものです」と、同大学と米国国立老化研究所(NIA)が共同で開始したアルツハイマー病研究プロジェクトのハワード フェルドマン所長は言う。

 「運動は、軽度認知障害のリスクのある高齢者の脳の健康を促進し、認知機能の低下を防ぐために、有望で安全かつ実行可能な戦略であることが示されました。運動は、健康のほぼあらゆる側面に有益であることは十分に証明されています」としている。

 治療法に関わらず、研究に参加すること自体が、高齢者に知的な刺激と社会的な刺激を与え、それが認知機能の低下の予防につながった可能性も指摘している。

 「認知症の予防では、まだ解明するべきことはたくさんありますが、今回の研究結果は、たとえ低強度の運動であっても、定期的に続けることで高齢者の認知機能の低下を遅らせるのに大いに役立つ可能性を示しいます。これは認知症のリスクが高い人々にとって明るいニュースです」と、シャディヤブ氏は述べている。

中年期から運動に取り組むと認知症予防につながる
運動不足だと脳の健康に悪い影響が
 食事や運動などのライフスタイルを改善することで、脳の老化を抑えられるという研究は、世界中で増えている。

 45歳~65歳の中年期に、ウォーキングなどの運動や身体活動を取り組むと、認知症の予防効果を期待できることが、別の新しい研究でも確かめられた。逆に、中年期に運動不足であると、脳の健康に悪い影響があらわれる可能性があるという。

 研究は、スペインのバルセロナ国際保健研究所(ISGlobal)などによるもの。研究成果は、「Alzheimer's & Dementia」に発表された。

 研究グループは、アルツハイマー病の家族歴のあるカタルーニャ州に在住している45歳~65歳の男女337人を約4年間、追跡して調査した。

 その結果、運動ガイドラインで推奨されているレベルの運動や身体活動を行っていた人は、運動不足を維持した人や運動量を減らした人に比べ、脳のアミロイドβの蓄積量が少ないことが示された。

 アミロイドβは、脳内に蓄積すると神経伝達を阻害するタンパク質で、アルツハイマー病で最初に起こる病理学的変化とみられている。

 さらに運動不足の人では、アルツハイマー病に関連する脳の皮質の萎縮がみられた。側頭葉の皮質は記憶、聴覚、言語、感情などに関連しており、その萎縮などは神経変性の初期症状としている。

 「運動量が推奨されているよりも少ない人でも、運動不足の人に比べると、脳の皮質が厚くなっていることも分かりました。これは、少量の運動であっても、継続すればすれば脳の健康に良い効果があらわれる可能性を示しています」と、同研究所のムゲ アキンジュ氏は言う。

 「世界中のアルツハイマー病の症例の13%は、運動不足が原因と推定されています。これまでの研究で、運動は心血管とメンタルヘルスを改善することで、アルツハイマー病のリスクを低減することも分かっています。最近の研究では、運動がアルツハイマー病に関連する脳病変の発症に直接影響を与える可能性が示されています」としている。

Even Light Exercise Could Help Slow Cognitive Decline in People at Risk of Alzheimer's (カリフォルニア大学サンディエゴ校 2025年4月24日)
Effects of exercise on cognition and Alzheimer's biomarkers in a randomized controlled trial of adults with mild cognitive impairment: The EXERT study (Alzheimer's & Dementia 2025年4月24日)
Effects of exercise versus usual care on older adults with amnestic mild cognitive impairment: EXERT versus ADNI (Alzheimer's & Dementia 2025年4月24日)
Increasing Physical Activity in Middle Age May Protect Against Alzheimer's Disease (バルセロナ国際保健研究所 2025年4月3日)
Physical activity changes during midlife link to brain integrity and amyloid burden (Alzheimer's & Dementia 2025年4月30日)

[Terahata]
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