オピニオン/保健指導あれこれ
がんと就労 ~本人と職場を支える産業看護職のより良い支援とは~
錦戸 典子(東海大学大学院健康科学研究科)

No.1 支援ガイドブックの開発経緯と概要

東京有明医療大学看護学部看護学科
吉川 悦子
1. がんと就労を取り巻く背景
 現在、我が国のがん患者の5年生存率は全がん平均で約6割に達し、甲状腺がん、精巣がん、乳がんのように5年生存率が8~9割を超える種類のがんもあります。がんはもはや「死に直結する病気」ではなく、「長くつきあう慢性病」に変化していると言えます。

 一方で、一般の人が抱く「がん」に対するイメージは、「不治の病」あるいは「命にかかわる病気」を連想する場合がまだまだ多く、がんと診断されたことで戦線離脱を余儀なくされ、早期退職など早まった選択をしてしまうケースもあるようです。

 がんは、私たちにとってきわめて身近な病気になっています。統計データをお示しすると、日本人男性の54%、女性の40%が一生のいずれかの時点でがんに罹患します。生産年齢人口(15~64 歳)に限ってみてみると、20 数万人が毎年新たに「がん」と診断されています。

 現在一部の企業で導入が勧められている定年年齢の延長や再雇用の促進、我が国の人口構造の変化、すなわち生産年齢人口の減少などを考えると、がんの好発年齢である高齢労働者の一層の需要拡大も見込まれます。

 今後、ますます「がんと就労」の両立支援は身近な課題となり、がんを持つ労働者が就業を継続できるように支援することは、職場の生産性向上のみならず日本の経済活動や社会全体の活性化に役立つはずです。

2. 産業看護職によるがんと就労支援
 そのような背景の中、平成22-24年度 厚生労働省がん臨床研究事業「働くがん患者と家族に向けた包括的就業支援システムの構築に関する研究」班(研究代表者:高橋 都先生)から、是非この研究に産業看護職の視点を入れてほしいとのお誘いをいただきました。

 そこで、平成23年度より錦戸が研究分担者として同研究班に参画させていただくとともに、産業看護の実務経験を持つ研究者が集まり、産業看護職グループとして研究を開始しました。具体的には、がんと就労の両立支援における産業看護職の機能・役割を明らかにすることを目的に、フォーカスグループインタビューや質問紙調査を実施しました。


研究班成果発表シンポジウム後の交流会にて
(左 錦戸、右 高橋 都先生)
 調査の結果、産業看護職は「がん診断前」・「がん診断後」・「治療のための休職中」・「復職時」・「復職後」の各支援プロセスにおいて、本人の思いや気持ちに耳を傾けながら、本人を取り巻く環境・資源との調整役としての機能・役割を重視していました。

 また、がんを持ちながら就労する労働者に対して、がんのステージや治療状況を踏まえながら、対象に合わせてきめ細やかな支援を行っていることも明らかになりました。

著者プロフィール

  • 吉川 悦子
  • 吉川 悦子
    東京有明医療大学看護学部看護学科

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