がんと就労 ~本人と職場を支える産業看護職のより良い支援とは~
錦戸 典子(東海大学大学院健康科学研究科)
No.2 本人への支援
東海大学大学院健康科学研究科看護学専攻 修士課程
岡久 ジュン
このコラムでは、がんを抱える労働者本人や上司・人事といった職場関係者に対して、より良い支援を行うための重要なポイントや具体的な内容について紹介していきます。第2回となる今回は、がんをもつ労働者本人への支援について述べていくこととします。
ヒント1. 定期的に体調と仕事の状況を確認します
がんに罹患すると、がんによる症状や治療の副作用などによって様々な体調の変化が生じます。
産業看護職は、医学的知識と職場環境・作業内容に関する知識をもとに、そのような体調の変化が仕事に及ぼす影響について予測を立てながら、定期的に本人の体調を確認することが大切です。復職直後の体力が十分に回復していない時期においては、時間外勤務を制限したり、短時間勤務にするなどの就業制限が必要な場合があります。
しかし、がんであることが見た目で分からない場合も多く、周りから「今までと同じように働けるだろう」と誤解されたり、本人自身が休んだ分を取り返そうと無理をすることもあります。産業看護職は、体調を悪化させる働き方をしていないか、本人だけでなく職場の上司・同僚や人事労務担当者などからも情報収集し、本人や職場の状況を多角的にとらえることが大切です。
ヒント2. ちょっとした困りごとにすぐに相談対応します
産業看護職の強みの一つに、労働者にもっとも身近な保健医療専門職であることが挙げられます。主治医や産業医になかなか本音を話せない人や日常の困りごとを相談できない人でも、産業看護職には気軽に相談できるようです。産業看護職は、がんに罹患した労働者本人が抱えている不安をタイムリーにキャッチできるよう、常にアンテナを広げて対応していく必要があります。
具体的には、定期面談の際に困っていることがないかを尋ねたり、職場にこまめに出向いて適宜声かけすることを心掛けるとよいでしょう。看護専門職の立場で的確にアドバイスし、一つ一つの相談ごとに真摯に対応することで、お互いの良い関係性を構築することができます。