No.3 診断治療が仕事に及ぼす影響や両立の工夫について
がんと診断されたとき、これからの診断や治療について主治医から説明を受けます。
特に最初にがんと診断されたときは、聞きなれない専門用語や不安感などで、本人が治療計画を十分理解できていないことがあります。
また、緊急度が高く治療が優先される場合、病気によっては予想が難しい場合、予後が不良と考えられる場合、本人に全てを伝えていない場合、など様々な場合があります。
産業保健職は、そうした事情を考慮しつつ、本人が把握している内容を確認し、診断や治療のスケジュールを把握し、就業に及ぼすと考えられる影響を整理し、その対応を検討します。
人によって価値観は異なり、また、病気のステージによっても価値観は変化します。必ずしも仕事と治療の両立が可能でない場合や本人の価値観が仕事以外にある場合もありますから、本人の価値観や病気の現実を把握して、必要な支援をしていきましょう。
最近は、入院期間をなるべく短くし、出来る限り外来で診断、治療を行うようになっています。 診断は、血液検査、レントゲン、CT、超音波、MRI、PET、内視鏡、気管支鏡、アイソトープ検査、病理検査、遺伝子検査など、多岐にわたります。
病院で診断方法の詳しい説明をしてくれる場合もありますが、検査名だけで、内容や方法、身体への負荷、費用などの説明が十分でない場合もあります。検査のスケジュールを伺う際に、検査をよく理解しているか、不安に思っていることはないか、なども把握しましょう。
がん治療は、個別化が進み、多様化してきています。がんの三大治療と言われる手術、放射線療法、化学療法の中身も多様化しており、更に骨髄移植、先進医療、再建手術などもあります。
がんの種類やステージだけではなく、表面マーカーや遺伝子によっても受ける治療が異なります。主治医から説明を受けていても、良い情報は記憶に残るが悪い情報は記憶されない、ということもあります。
標準治療に関しては、がんセンターや日本乳癌学会、日本肺癌学会など各学会のホームページにガイドラインなどの情報が掲載されていますので、主治医の説明と合わせてこうした情報を利用するのも有用です。
国立がんセンター がん情報サービス 一般の方向けサイト 国立がんセンター 患者必携
主治医からの説明はなるべく文書や図で示してもらうこと、メモを取り内容を主治医に確認すること、前もって調べ疑問点をまとめておくこと、などをアドバイスしましょう。
検査のたびに休まなくてはならない場合、「有給が無くなってしまう」、「皆に迷惑をかける」、「病気であることを知られてしまう」、「解雇されてしまう」などが心配になります。
入院の場合は診断書で病気休暇が取得できても、飛び飛びにある検査には病気休暇が使えない場合が多いからです。
治療に関しては、複数の治療法がある場合は、治療のスケジュール、治療の利点・欠点、副作用や後遺症の出方、費用など比較表を作成し、仕事の両立のしやすさを検討しましょう。
図は、Aさん(乳がん)の場合です。
プラン1の場合、温存手術のため術創は小さい。放射線療法は短時間で済むが5週間かかる、疲労感、皮膚刺激症状など。ホルモン療法は服薬と注射のため、定期的な通院が必要。更年期症状が出る場合がある。
プラン2の場合、リンパ節郭清を行った場合はリンパ浮腫の可能性がある。放射線療法は行わない。再建を希望する場合は、二回の入院が必要になる。ホルモン療法はプラン2と同様。 プラン3は化学療法が必要になった場合。
化学療法が開始された場合、定期的通院が必要で約半年必要。脱毛、感染しやすさ、疲労感、吐き気などの消化器症状が起こる可能性があり、場合によっては短期入院が必要になる場合がある。
Aさんは、5週間放射線治療に通うことは困難と考え、プラン2を選択しました。再建も健康保険の適応となったので、費用的にも問題ないことがわかりました。
術前の相談でしたので、プラン3:化学療法が必要になるかどうかは確定していませんでしたが、長期療養となるため、検討しておく必要がありました。Aさんの仕事は対人業務が主体のため、化学療法中は半年仕事を休んで治療に専念することになりました。
1か月以上の療養の場合は、通常の病気療養と同様、産業医・人事による復職審査を受け、必要な就業措置を検討し、復帰すること、また、長期療養になるときはAさんの代替要員を考える、ということになりました。
診断のため、何度も休むことが難しい場合、同日に複数の検査を組むことはできないか、治療プランにもっと本人の希望に添うようなものはないか、副作用の緩和に役立つ方法はないか、を更に検討します。
セカンドオピニオン、がん拠点病院に置かれている相談センター、がん治療に関する有益な雑誌や本、web情報などとともに、早朝や夕方、土日の診療の可能性、拠点病院と地域の病院との連携、在宅医療の可能性の情報なども得られるように支援しましょう。
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