老年学など多方面から「高齢者は75歳以上」を検証
『高齢者および高齢社会に関する検討ワーキンググループ報告書2024』より
80歳以下の年齢層は健康状態改善
報告書では、国民生活基礎調査や患者調査、人口動態調査の65歳から89歳までの日本人高齢者のデータを分析して、日本人高齢者の健康状態を解析した。
それによると糖尿病、肺炎、骨折、認知症では、特に75歳以上の年齢層で受療率の減少が認められなかったが、それ以外の疾患で受療率は男女ともに経年で低下していた。総死亡率、疾患別死亡率、80歳以下の年齢層における要介護率も、男女ともに経年で低下。
これらの結果から、「日本人高齢者、特に80歳以下の年齢層において、近年健康状態が改善していると考えられた」としている。
高齢者の身体的機能も向上
また、日本全国の代表的な16の老化コホート研究も解析し、身体的老化の経時的データが分析された。2007年と2017年(身体的フレイルは2012年と2017年)に各コホートで共通して取得した健康関連変数(身長・体重・BMI・通常歩行速度・握力・手段的ADL・身体的フレイル)の代表値から統合値を算出した。
その結果、歩行速度、握力、手段的ADL等は2007年から2017年にかけて増加しており、身体的フレイルの頻度は2012年から2017年にかけて減少。日本人高齢者の身体機能が向上している可能性が示された。
出展:「高齢者および高齢社会に関する検討ワーキンググループ報告書2024」P.34(2024.6)より
政府への提言も
「経済学、社会政策からみた高齢化・長寿化問題」では、長寿社会を迎え、人々の心身健康も維持され、就労能力は高まっており、60歳代後半の就業率は上昇を続けている状況を示す一方で、加齢とともに認知機能の低下は避けがたいことだと指摘。
そのような状況のもとでは、高齢者が経済活動から実質的に排除されないような仕組みが重要になってくると報告している。
政府に対して、人々が寿命の伸長に合わせて人生設計を見直すことを後押しし、社会保障や雇用制度など関連する制度を改革して、70歳まで就労できるような環境整備を行っていく必要があり、未来社会を想定したバック・キャスティングの視点から進める社会政策の必要性を提言している。
報告書は、そのほか「口の老化の経時的データ」や「人生100年時代の認知症とこころの健康問題」「高齢者の社会参加とエイジズム」など全11章(118ページ)で構成されており、日本の老年医学研究の現在地を示すものとなっている。
参考資料
日本老年医学会
高齢者および高齢社会に関する検討ワーキンググループ報告書2024(日本老年学会)
高齢者に関する定義検討ワーキンググループ報告書(日本老年学会・日本老年医学会)
World Population Ageing 2019(国連)


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