老年学など多方面から「高齢者は75歳以上」を検証
『高齢者および高齢社会に関する検討ワーキンググループ報告書2024』より
日本老年医学会は6月13日、『高齢者および高齢社会に関する検討ワーキンググループ報告書2024』を発表した。
同学会および日本老年学会は、2017年に高齢者の定義を「75歳以上」と提言して反響を呼んだが、今回の報告書はそれを医学的な立場から検証してまとめたものである。
2017年に高齢者の定義を「75歳以上」と提言
日本老年学会・日本老年医学会は、2017年3月に『高齢者に関する定義検討ワーキンググループ報告書』を発表し、高齢者の定義を「65歳以上」から「75歳以上」とし、65~74歳を「准高齢者」、90歳以上を「超高齢者」とすべきであると提言した。
その理由として、平均余命が延伸していること、日本人高齢者の若返りが見られること、国民の意識の変化などを挙げていた。
提言から約7年が経過し、その間、新たなエビデンスが蓄積され、日本老年学会の構成学会を中心に、老年学的な見地のみならず、工学的・経済学的見地からも議論を行い、今回の報告書はまとめられた。
ワーキンググループ代表で日本老年学会理事長の荒井秀典氏(国立長寿医療研究センター理事長)は、「年金や定年に関する政府の議論とは無関係であり、今回の報告書ではあくまで医学的な立場から高齢者の定義を検証した」と説明している。
余命を考慮した新たな高齢者基準
国際的にみてみると、国連の報告書『World Population Ageing 2019』では、高齢者の基準を一律65歳として計算する老年人口指数(OADR:Old-Age Dependency Ratio)だけでなく、余命を考慮した新たな高齢者基準の考え方を適用したPOADR(Prospective OADR)を用いた議論が行われている。PODARは、「平均余命が15年と期待される年齢」を老後の始まりとしている。
日本の簡易生命表をもとに平均余命15年の値を算出してみると、2017年:73.5歳、2020年:74.1歳、2021年:73.8歳となり、「2017年に同学会が提言した高齢者定義の75歳以上とほぼ一致している」とされた。
出展:「高齢者および高齢社会に関する検討ワーキンググループ報告書2024」P.15(2024.6)より
「高齢者」に関するニュース
- 2024年07月29日
- 高齢者の転倒リスクが分かるツールを開発 7つの質問でリスクを判定 40~50歳代から転倒リスクは上昇
- 2024年07月29日
- 「歩きスマホ」は転倒リスクを高める 半数が「ぶつかる」などの危険を経験 なぜ歩行が安定しなくなるかを解明
- 2024年07月25日
-
老年学など多方面から「高齢者は75歳以上」を検証
『高齢者および高齢社会に関する検討ワーキンググループ報告書2024』より - 2024年07月22日
- 夏はビールの飲みすぎにご注意 アルコールは心臓病やがんのリスクを高める 男性だけでなく女性も健康リスクが
- 2024年07月22日
- 運動は認知機能を高め認知症予防に有用 ストレスによるメンタルヘルス不調を抱える人で運動の効果はとくに高い
- 2024年07月22日
- がん発症の40%とがんによる死亡の半数は予防が可能 タバコの健康影響が大きい 肥満や過体重にも対策
- 2024年07月22日
- 健診で発見された心電図異常で将来の心血管疾患リスクが分かる 将来の重症化予防に貢献 協会けんぽ加入者のデータを解析
- 2024年07月16日
- 慢性腎臓病(CKD)は健康寿命を損なう要因 生活改善で重症化予防できる 「若い世代の認知は不十分」という調査結果
- 2024年07月16日
- 「熱中症搬送者数予測サイト」を公開 1週間先までの熱中症搬送者数を予測 名古屋工業大学
- 2024年07月08日
- ストレスはメタボ・肥満のリスクを高める 労働者の長期休職をストレスチェックで予測