オピニオン/保健指導あれこれ
保健師の活動と放射線について

No.8 対象者別協働実践報告(2) 高齢者

保健師の活動と放射線 研究班
小野 若菜子
聖路加国際大学看護学部 准教授
経歴:
聖路加国際病院内科病棟、訪問看護科勤務を経て、聖路加看護大学博士前期課程に進学。同博士後期課程修了後、聖路加看護大学(現聖路加国際大学)の教職に就く。訪問看護におけるターミナルケアやグリーフケアをテーマに研究活動に取り組む。
 原子力災害の影響を受ける地域に住む人々にとって、日々の生活や自然環境への不安が続いています。今回、A市において、高齢者保健事業の中で、放射線に関するミニ講座を実施しました。この地区は、美しい山々に囲まれた自然豊かなところです。高齢者が多く生活に不便がありますが、お互いに支え合って暮らしています。

 高齢者保健事業の中で実施した
 放射線に関するミニ講座
 A市では、介護予防の高齢者保健事業が年間を通して行われていました。今回、その事業の集まりの際に、地区の担当保健師、放射線防護専門家、公衆衛生看護研究者が、ミニ講座「放射線との付き合い方」や質疑応答、健康相談を行いました。参加者は、1回目22名、2回目23名(男性16名,女性29名,70-80歳代)でした。

 ミニ講座(約30分)の内容は、原子力災害による放射線の影響、除染や食品検査、健康管理調査、復興に向けた取り組み等でした。参加者は、すでに知識や対応策をそれぞれにお持ちでしたが、あらためて放射線の話を聞くことができてよかったという声が聞かれました。

 また、参加者からの相談内容としては、キノコを食べてもよいか、魚や野菜は大丈夫か、食品検査を行った方がよいか等がありました。さらに、除染に関する不安や内部被ばくの影響等、長期的な放射線影響が心配だという声が聞かれました。

 保健師や専門家・研究者は、参加者の血圧測定をしながら健康相談を受ける中で、生活状況や体調、放射線への不安を聞きました。このようにして一人一人と話をすることで、日々の生活を直に感じることができました。

 自治体の保健師は、その土地や人々をよく知っています。日々、保健事業を展開する中で、住民とよく対話をしています。こうしたベースを持ちながら、保健師は、放射線防護について、健康支援を通して住民と対話をすることができます。放射線の関心を話し合う機会は、参加者だけでなく、保健師や専門家・研究者にとっても貴重な時間になりました。

 保健師、放射線防護専門家、公衆衛生看護研究者との協働ミーティング
 保健師から、放射線の関心について、あらためて住民の話を聞く機会になったということでした。その他、放射線に関する疑問や原子力災害の不安が続いていること、住民にどのように関わるのがよいのかといった意見交換が行われました。

 高齢者支援のこれから
 高齢者保健事業のような機会を利用して、高齢者の放射線防護に向けた支援を継続していくことは大切です。また、A市の地区は、山間部で、過疎化、高齢化が進んでいました。もし若い世代が避難先から戻ったとしても、時を経て、互いに新たな生活があり、様々な課題が生じます。保健師は、こうした世帯に対して、放射線防護を含めた健康を支援する役割を担っているといえるでしょう。

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