オピニオン/保健指導あれこれ
保健師の活動と放射線について
No.10 対象別協働実践報告(4) 学校との協働実践
2016年02月29日
三森 寧子
聖路加国際大学看護学部 助教
|
経歴:
聖路加看護大学看護学部卒業、聖路加看護大学大学院看護学研究科博士前期課程修了、千葉大学大学院教育学研究科修士課程修了。 学部卒業後、病棟看護師、養護教諭として勤務。2012年4月より現職。 主に学校保健、養護教諭養成に関することをテーマに研究活動に取り組んでいる。 |
学校保健と地域保健連絡会
養護教諭が語った学校の様子
専門職の集まりでしたので、これまでの住民の方々に対するミニ講座(No7~9)とは形式を変え、養護教諭の先生たちにまず放射線に対する思いについて聞いてみました。
保健師が「放射線について、どうですか?」と促すと、震災当時からこれまでの経過を一人ひとりの養護教諭が次々と生々しい体験を鮮明に語り始め、お互いに共感し、確認し合う様子が見られました。堰を切ったように、学校での子どもや保護者のこと、教職員の様子が話題に上がり、各学校の状況や抱えている課題を知ることができました。
具体的な内容としては、以下のようなことが語られました。
毎日欠かさず、学校の敷地の空間線量を測定し、校内の掲示や教育委員会への報告を行っていること。
保護者を意識しながら何事も放射線の測定を行い、運動会や遠足などの学校行事を計画していること。
以前は子どもがおこなっていたプール清掃や草むしりなどを、今は教職員と保護者がやっていること。
生活科の畑仕事は再開したが、収穫したものは検査し、保護者の同意を得てから調理実習に使用していること。
給食に関する保護者の要望が大きく、食材の産地の情報公開を求められるなど、震災後の1年はアレルギー以外の理由で、牛乳を飲まない子どもが多かったこと。
保護者が抱えている不安が子どもの肥満やストレスなどの子どもの健康問題につながっていること。
震災・原子力事故を境に教育活動に変化が強いられている状況が今も続いていることで、養護教諭は子どもの心身の健康や成長発達への影響を心配していました。
一方で、子どもを支える養護教諭や教員自身が抱えている放射線についての不安や放射線教育の実施への戸惑いについて、次のように語っていました。
保護者を意識しながら何事も放射線の測定を行い、運動会や遠足などの学校行事を計画していること。
以前は子どもがおこなっていたプール清掃や草むしりなどを、今は教職員と保護者がやっていること。
生活科の畑仕事は再開したが、収穫したものは検査し、保護者の同意を得てから調理実習に使用していること。
給食に関する保護者の要望が大きく、食材の産地の情報公開を求められるなど、震災後の1年はアレルギー以外の理由で、牛乳を飲まない子どもが多かったこと。
保護者が抱えている不安が子どもの肥満やストレスなどの子どもの健康問題につながっていること。
放射線教育については、理科の教員が教えたり、担任がおこなったりしているが、実際は何をどう教えたらよいか戸惑っていること。
震災後は講演会や放射線の専門家からの話など教員自身は研修を受けているが、実際の生活においてどのように考えたらよいかわからないこと。
県の教育委員会の計画として放射線教育の実施をするように決められているが、理解しているかどうか自信がないこと。
これらの現状や課題を聞いていく中で、配布した資料を用いながら、放射線防護の専門家が疑問に答えたり、放射線防護についての考え方を伝えたりしました。
震災後は講演会や放射線の専門家からの話など教員自身は研修を受けているが、実際の生活においてどのように考えたらよいかわからないこと。
県の教育委員会の計画として放射線教育の実施をするように決められているが、理解しているかどうか自信がないこと。
地域住民の健康を守るために学校と協働していくこと
保健師たちは、養護教諭の先生たちが語った震災に関連した学校や学校生活の様子について、知らないことばかりだったそうです。学校の教職員が子ども、保護者への対応に不安を抱いていたことに、「地域のことをわかっているつもりだった」「もっと早く放射線について話し合えていればよかった」と、そして被災者であり支援者である教員が、保健師と同じ立場であることへの気付きを語っていました。
養護教諭の先生たちの感想からも、「放射線について他の人が考えていることや、専門家の意見や数値に基づいた分析を聞けて貴重な機会だった。」「放射線に関して、理科や学級担任にまかせてしまっていたので、養護教諭も出来ることを考えて、かかわっていきたい」などが聞かれ、各学校一人しかいない養護教諭だからこそ、集まって話し合うことが大切であることを再確認していました。
「保健師の活動と放射線について」もくじ
- No.1 原発事故後の復旧期における保健師活動―放射線防護文化をつくるために
- No.2 保健師活動に必要な放射線に関する基礎知識とは
- No.3 保健師の実践へのヒント(1) ベラルーシ視察報告から学ぶ
- No.4 保健師の実践へのヒント(2)川内村における放射線専門保健師の活動報告
- No.5 保健師の実践へのヒント(3)住民への放射線に関する支援(相談・教育)
- No.6 放射線と公衆衛生看護
- No.7 対象別協働実践報告(1) 母子
- No.8 対象者別協働実践報告(2) 高齢者
- No.9 対象別協働実践報告(3) 精神・社会的弱者
- No.10 対象別協働実践報告(4) 学校との協働実践
- No.11 保健師の健康支援に必要な情報と媒体
- No.12 保健師と看護学生に放射線を教える・学ぶ
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2024 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「地域保健」に関するニュース
- 2024年10月10日
- 初めて「こころの健康」がテーマに ストレスが最大の健康リスクと感じる人は20年で3倍-『令和6年版 厚生労働白書』
- 2024年10月07日
- 【10月20日は世界骨粗鬆症デー】骨を丈夫にするためにカルシウムとビタミンDが必要 こんな人がビタミンD不足に
- 2024年10月07日
- 【気候変動は健康にも影響】猛暑により生活習慣や健康状態に変化が 屋外にいる時間が減り運動不足に
- 2024年10月07日
- 「腰痛」は座っている時間を減らすと予防・改善できる 座位時間が長い人は立ち上がり体を動かす工夫を
- 2024年10月07日
- 【高齢者の社会参加を推進】社会参加している高齢者は人生最後まで自立した生活をおくれる とくに女性は「自立を維持しやすい」