オピニオン/保健指導あれこれ
保健師の活動と放射線について

No.1 原発事故後の復旧期における保健師活動―放射線防護文化をつくるために

保健師の活動と放射線 研究班
 1. 原発事故後、保健師の取り組みは今も続いている
麻原きよみ
聖路加国際大学
経歴:
聖路加看護大学卒業。長野県松本市保健師。その後、聖路加看護大学大学院看護学研究科修士課程修了、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(博士(保健学))。信州大学医療技術短期大学部助手、長野県看護大学助教授、信州大学医学部保健学科教授等を経て、2003年4月より聖路加看護大学地域看護・公衆衛生看護学教授。
 東日本大震災に伴う福島の原発事故から4年が経ちました。表面的には落ち着いてきたようにみえますが、汚染水の問題など、状況が変化すると、再び住民に不安が広がります。

 また、放射線を恐れて子どもの外遊びが減ったり、外出や活動の減少などによる健康の問題(子どもの肥満やビタミンD欠乏症、高齢者の要介護状態など)がみられます。避難している住民や避難先からの帰宅者、あるいは放射線に対する強い不安が継続する住民への対応も必要です。

 さらに、現状では住民間で放射線について話題にしない雰囲気もあり、自分の不安や心配を表出できない母親もいます。住民とその健康に直接関わる保健師の取り組みの努力は、変わることなく続いています。

 2. 実際的な放射線防護文化をつくる:鍵となるのは保健師
 国際放射線防護委員会(ICRP)1)は、原子力災害復旧期を焦点とした勧告において、「公衆の健康と教育を担う専門職による実際的な放射線防護文化の普及が災害復旧の鍵である」と述べています。

 まず、「公衆の健康と教育を担う専門職」とは、保健医療職者や学校の教師などです。なかでも保健師は、「公衆の健康を担う専門職」としてとくに重要です。なぜなら、保健師は公衆衛生の専門職であり、住民の身近で実践し、地域の生活実態をよく知っています。住民が健康に関する知識とスキルをもち、より健康的なライフスタイルとなるための活動、つまり健康文化をつくる活動を日常的に行っているからです。

 つぎに、「実際的な放射線防護文化」とは、原子力事故・災害の復旧期に低線量の環境下で暮らす人々が、実際的な放射線の知識をもち、放射線のリスクと生活上の他のリスクとの折り合いを考えながら健康的な生活上の選択をしていく、という意味です。

 すなわち、「放射線防護文化」は「健康文化」という大きな枠組みに含まれると考えることができ、だからこそ、地域に放射線防護文化をつくっていくには、健康文化の実践をしている保健師の関わりが必要なのです。とくに、放射線のリスクと生活上の他のリスクとの兼ね合いを考えることは非常に大切で、そこへの保健師の関わりは、災害復旧の要となるように思われます。

 そこで私たちは、環境省からの事業費(平成24-26年度原子力災害影響調査等事業(放射線の健康影響に係る研究調査事業)を得て、原発事故影響下の自治体で、放射線防護文化をつくるために有効な活動を明らかにするために、保健師と放射線防護の専門家および公衆衛生看護の研究者がチームを組んで、協働で研究に取り組みました(アクションリサーチ)。

 3. 放射線防護文化をつくるために有効な活動を見出す
 私たちの活動は、次の3つからなり、それらは互いに関係しあっています。

1)住民に対する活動:保健師が地区で行っている子育てひろばや高齢者のデイクラブなどの既存事業に、放射線に関する講話やQ&A方式の相談を組み込み、保健師と放射線防護の専門家および公衆衛生看護の研究者が協働で計画・実施・評価しました。既存の事業に組み込むことで無理なく継続できること、対話による講話・相談が有効であることなどがわかりました。

2)保健師活動を支援する活動: 前項の1)で保健師と協働する際に、放射線防護の専門家が保健師からの放射線に関する相談に乗ったり、皆で今後の活動について話し合う機会をもちました(協働ミーティング)。また、保健師が住民支援のために活用できるツールとして、6種類のリーフレットを協働で作成しました。

3)1)2)で得られた有効な活動の普及・啓発活動:ホームページ(2019年10月まで開設)を開設するとともに、関係団体に情報やリーフレットの提供、学会等での発表などを行いました。

 今月から1年間(12回)、「保健師の活動と放射線」について、保健師活動に必要な放射線の知識や活動のヒント、私たちが3年間、保健師と協働で取り組み、明らかになった放射線防護文化をつくるために有効な活動、保健師に必要な放射線教育などをシリーズで掲載していきます。皆様の日頃の活動にどうぞお役立て下さい。

1) International Commission on Radiological Protection: Application of the Commission's Recommendations to the Protection of People Living in Long-term Contaminated area after a Nuclear Accident or a Radiation Emergency. ICRP Publication 111, Elsevier, London, 2009.

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