オピニオン/保健指導あれこれ
保健師の活動と放射線について
No.9 対象別協働実践報告(3) 精神・社会的弱者
2016年01月21日
小林 真朝
聖路加国際大学看護学部公衆衛生看護学 准教授
経歴:
聖路加看護大学看護学部卒業、聖路加看護大学大学院看護学研究科博士前期課程修了、聖路加看護大学大学院看護学研究科博士後期課程修了、看護学博士。 看護師、保健師、日本公衆衛生学会認定専門家。 学部卒業後、行政保健師として勤務。聖路加看護大学助手、助教を経て、現職。 |
精神デイケア「日常生活での放射線との付き合い方を知ろう」
不安が表出されにくい人々への支援
精神疾患を抱えて生活する人々の普段の生活場面では、放射線への具体的な不安があまり出てきていませんでしたが、事業担当保健師は、参加メンバーが潜在的な不安を抱えていることを予測して、このミニ講座を企画・実施しました。実際にミニ講座において放射線をテーマに話し合ってみて、住民の具体的な支援ニーズを把握することが出来ました。
今回の事業参加者は、生活に何らかの不安を抱えながら暮らしている人々であり、平時からストレスに対する脆弱性を有すると予測され得る対象集団であるともいえます。放射線の問題だけでなく生活上の不安も大きいため、生活に根差した話題について話すことで、住民が生活全体を統合的にとらえられるような工夫が重要であり、今後も継続的にこういった表出されにくい不安に対処していく必要があると考えられました。
また、精神デイケア参加者以外の、地域で生活する精神障害者や精神疾患を抱える人々への支援をはじめ、精神疾患以外の障害や様々な疾病をもつ人々が、それぞれ特有の不安を抱えているであろうこと、また、それらが表出されにくいことを考慮し、健康弱者に対する長期的スパンの災害時支援についても考えていく必要があるということも分かりました。
不安の軽減がすぐ安心感につながるという保証はありませんが、過度の不安は、正確な情報の理解を妨げ、生活の支障となりえるのです。住民と行政としての立場との間でジレンマを抱えることも多いのが保健師ですが、継続的な信頼関係のなかで住民に一番近いところで寄り添い、日々の生活の中の様々な健康課題に接している保健師こそ、住民が安心感を得るためにもっとも力を発揮できるのではないでしょうか。
「保健師の活動と放射線について」もくじ
- No.1 原発事故後の復旧期における保健師活動―放射線防護文化をつくるために
- No.2 保健師活動に必要な放射線に関する基礎知識とは
- No.3 保健師の実践へのヒント(1) ベラルーシ視察報告から学ぶ
- No.4 保健師の実践へのヒント(2)川内村における放射線専門保健師の活動報告
- No.5 保健師の実践へのヒント(3)住民への放射線に関する支援(相談・教育)
- No.6 放射線と公衆衛生看護
- No.7 対象別協働実践報告(1) 母子
- No.8 対象者別協働実践報告(2) 高齢者
- No.9 対象別協働実践報告(3) 精神・社会的弱者
- No.10 対象別協働実践報告(4) 学校との協働実践
- No.11 保健師の健康支援に必要な情報と媒体
- No.12 保健師と看護学生に放射線を教える・学ぶ
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