がんと就労 ~本人と職場を支える産業看護職のより良い支援とは~
錦戸 典子(東海大学大学院健康科学研究科)
No.5 産業医や医療機関との連携
東京医療保健大学 医療保健学部 看護学科
伊藤美千代
このコラムでは、がんを抱える労働者本人や上司・人事といった職場関係者に対して、より良い支援を行うための重要なポイントや具体的な内容について紹介しています。第5回となる今回は、産業医および医療機関との連携について述べたいと思います。
ヒント11. 産業医と役割分担し、定期的に情報交換します
復職時の労働条件の調整では、関係者間での会議では議論されにくい職場の同僚が感じている不安や不平といったデリケートな情報を、幅広く収集し、事前に職場の受け入れ態勢を確認すること、さらに産業医が適切な意見を会社(人事労務)へ伝えるための情報提供は大切です。
1. 普段からの社内ネットワークを活用した、幅広い情報収集を行います
産業医は非常勤である場合も多いので、限られた時間内で、労働者・会社にとって最良の判断ができるよう、産業看護職が普段から情報収集をしておくことが有用です。職場巡視等の機会を活用して、労働者が復職を予定する部署に足を運び、職場の雰囲気や人間関係を把握するとともに、関係者からのヒアリングを行っておくと良いでしょう。
2. 産業医との定期的な情報交換を行います
労働者の健康状態、治療内容とその効果、労働負荷、職場での様子、職場の受け止め、上司の意見など、産業医、産業看護職のそれぞれが得た情報を共有し、支援に当たることで、労働者と会社の双方にとってより良い支援を行うことができます。
3. 人事労務担当者に産業医との連携について助言します
人事労務担当者に対し、産業医に意見を聞く事項・タイミングに加え、限られた産業医の勤務時間内で、どのような内容を相談すると良いかについて助言を行うことが大切です。