オピニオン/保健指導あれこれ
がんと就労 ~本人と職場を支える産業看護職のより良い支援とは~
錦戸 典子(東海大学大学院健康科学研究科)

No.5 産業医や医療機関との連携

東京医療保健大学 医療保健学部 看護学科
伊藤美千代
ヒント12. 医療機関との連携の要否や方法、連携内容について検討し、調整します
 人事労務担当者が治療に関する情報を必要とした時に、何を、誰に、どのように尋ねれば良いかを助言することは、会社(人事労務)による合理的配慮の実践、労働者にとっての無理のない労働につながる大切なことです。

1.かかりつけ医や専門医からの意見が必要かどうかの助言
 がん治療には、がんの専門医に加え、かかりつけ医、場合によってはセカンドオピニオンなど複数の医師が関わります。職場復帰時はもちろんこと、治療によって健康状態に当初の予測を超えた変化があった場合、職場の様子が変わった場合などに、労働者の働く様子などから、会社の危機管理と労働者の健康を護るという両方の視点で、かかりつけ医や専門医に意見を仰ぐ必要があるかどうかの相談にのります。

2.かかりつけ医や専門医との連携の仕方を助言
 会社が労働者の疾病等を照会する場合、本人の同意または同席が必ず必要です。外来受診の場に電話をする、社内の産業保健スタッフからの手紙を本人を通じて渡す、本人が診察時に社内の関係者の同席を希望して説明を受けることを医師に申し出るなどがあります。意見を尋ねる医師の所属病院の特徴や本人の希望に基づき、どのようにコンタクトをとったらよいかの助言をします。

3.先を見据えた情報交換が大切
 予測される急な体調悪化と、その時の対処法に関して、前もって情報を得て準備することが必要です。その際の助言をします。

 がんをもつ労働者の健康管理(治療含む)と就労の両立、および会社側の危機管理をバランスよく推し進めるためには、労働者ご本人の気持ちや産業医、治療にあたる医師の意見のみならず、受け入れる職場の状況を丁寧に確認し、その情報を関係者に伝えること(コーディネーション)が必要です。事例により進め方は異なりますが、本コラムでご紹介させていただいたヒントを活用しながら、それぞれの状況に合わせてより良い支援を工夫していただければと思います。

著者プロフィール

  • 伊藤美千代
  • 伊藤美千代
    東京医療保健大学 医療保健学部 看護学科

    経 歴

    1993年~2001年 花王株式会社勤務
    2003年 千葉大学看護学科卒業
    2005年 東京大学大学院 医学系研究科修了(修士)
    2009年 東京大学大学院 医学系研究科博士課程満期退学
    2009年~2011年 順天堂大学 看護学科 助教 講師
    2011年 東京大学大学院医学系研究科
    2011年 東京医療保健大学 看護学科 講師
    現在にいたる

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