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大腸がんが50歳未満の若い人でも増加 肥満のある人は大腸がんリスクが高い 予防に役立つ3つの食品とは?

 50歳未満の若い成人の大腸がんが世界的に増えていることが、大規模な調査で明らかになった。

 大腸がんは、日本人がもっとも多くかかっているがんだ。肥満が大腸がんのリスクを高めることは、日本人を対象とした調査でも明らかになっている。

 大腸がんのリスクを減らす食事スタイルの解明が進められている。大腸がんリスクを下げる3つの食品が、最新の研究で明らかになった。

 「大腸がんを予防するために、健康的な食事、運動不足の解消、肥満の改善などが大切です。予防のための新しいツールが必要とされています」と、専門家は指摘している。

50歳未満の若い人の大腸がんの発症が増加

 大腸がんは、大腸(結腸・直腸)に発生する、日本人がもっとも多くかかっているがんだ。大腸がんにかかる割合は、日本、米国、欧州などの高所得国で上昇している。

 大腸がんが増えている原因のひとつは、食生活の欧米化と考えられている。米国がん協会(ACS)の新しい調査で、大腸がんの早期発症は、世界の50の国や地域のうち27ヵ国/地域で上昇していることが示された。

 さらに、米国や日本など14ヵ国では、50歳未満の若い成人の大腸がんの発症率も上昇しているという。

 「早期発症の大腸がんは世界的に増えています。とくに若い人の発症が増えているのは深刻です」と、同協会のがん監視研究の主任研究者であるヒュナ ソン博士は言う。

 「大腸がんを予防するために、健康的な食事、運動不足の解消、肥満の改善などが大切です。予防のための新しいツールが必要とされています。国や地域にあるリソースに合わせた効果的な予防戦略を開発するために、継続的な取り組みが必要です」としている。

関連情報

肥満のある人は大腸がんリスクが上昇

 過体重や肥満は、がんを含むさまざまな疾病のリスクを高める。日本人は、欧米人に比べると肥満はまだ少ないが、過体重や肥満の状態にある人は増えている。

 日本で実施された計30万人以上を対象としたコホート研究では、男性では体格指数(BMI)が1増えるごとに、大腸がんのリスクは1.03倍上昇することが示されている。女性でもBMIが1増えるごとに、大腸がんのリスクは1.02倍上昇した。

 肥満は、血糖値を下げるインスリンの働きを悪くし、インスリン抵抗性を引き起こし、高インスリン血症につながる。それにともない、がん細胞を増やすインスリン様成長因子(IGF-I)も高くなることが、大腸がんのリスクの上昇と関連しているとみられている。

大腸がんリスクを下げる食品1
食物繊維を十分にとると大腸がんリスクは減少

 大腸がんを予防するために、健康的な食事が必要だ。食物繊維を食事で多くとっている人は、大腸がんの発症が16~24%少ないことが、40年近く続けられた観察研究や臨床試験の解析で明らかになっている。

 食物繊維を多くとっている人は、全死因による死亡率や心血管疾患による死亡率も15~30%少ないことも示された。食物繊維が多く含まれる食品を食べることで、冠状動脈性心疾患、脳卒中、2型糖尿病などのリスクも減少するという。

 食物繊維が多く含まれる食品は、よく噛んで食べる必要があり、満腹感を高め、体重管理に役立ち、脂質や血糖の管理にも好ましい影響を与えるという。食物繊維は腸内の善玉菌のエサにもなるので、腸内環境を健康にし、大腸がんの予防など、幅広い効果を期待できるとしている。

 「精製穀物を全粒穀物に置き換えたり、野菜を十分に食べるなどして、食物繊維の摂取量を増やすことで、さまざまな病気の発症リスクと死亡リスクを減らすことを期待できます」と、ニュージーランドのオタゴ大学の糖尿病・肥満研究所のジム マン教授は述べている。

 「研究では、全粒穀物の摂取量を1日に15g増やすと、総死亡数と冠状動脈性心疾患、2型糖尿病、大腸がんの発症率が2~19%減少することが示されています」としている。

 「英国では、食物繊維を1日に30g摂取することが推奨されていますが、この目標を達成できている成人はわずか9%です。食事では、玄米や全粒粉パンなどの全粒穀物や野菜などを毎日食べるようにして、食物繊維を積極的にとることが勧められます」としている。

大腸がんリスクを下げる食品2
1日に1杯の牛乳が大腸がんリスクを減らす
アルコールの飲みすぎは大腸がんリスクを高める

 牛乳を1日に1杯飲むことが、大腸がんリスクの低下と関連していることが、英国のオックスフォード大学などの新しい研究で明らかになった。

 研究は、同大学ポピュレーション保健科学部のケレン パピエ氏らによるもの。研究グループは、英国の130万人超の女性が参加している大規模研究「ミリオン女性研究」に参加した54万2,778人を、16.6年間追跡して調査した。

 その結果、牛乳を1日にグラス1杯(300mg)飲んでいる女性は、ほとんど飲まない女性に比べ、大腸がんの発症が17%少なかった。

 逆に、アルコールの飲みすぎは大腸がんの上昇と関連していた。1日に純アルコールに換算して20gを飲んでいる人は、大腸がんの発症が15%多かった。

 アルコール20gが含まれるお酒の量は、ビール中瓶 1本(500mL)、ワイン小グラス 2杯(200mL)、ウイスキーダブル 1杯(60mL)、日本酒 1合(180mL)が目安になる。

 牛乳には良質なタンパク質が含まれるのに加えて、ビタミンB、カルシウム、リン、マグネシウムなどのビタミンやミネラルも含まれる。

 「カルシウムが含まれる牛乳は、大腸がんの予防に役立つと考えられます。牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品が、大腸がんのリスクを低下させることは、これまでの研究でも報告されています」と、研究者は述べている。

大腸がんリスクを下げる食品3
超加工食品の食べすぎは大腸がんリスクを高める
油は体に良いものを選ぶ

 ポテトチップスなどのスナック、菓子パン、インスタント食品、ソーセージ、ドーナツなどの「超加工食品」は、工業的な過程を経て製造されている。

 超加工食品は、糖質・脂肪・塩分を多く含む、高カロリーのものが多い。色・風味・食感を良くしたり、保存期間を延ばすために、さまざまな食品添加物も使用されている。

 超加工食品の食べすぎは、大腸がんのリスクを高める可能性があることが、米国のサウスフロリダ大学の新しい研究で示された。

 「食生活が不健康な人の体内では、炎症が起こりやすいことが知られています。不健康な超加工食品を毎日食べすぎていると、体の免疫システムを調整し炎症や傷を治す力が低下し、がん細胞が増えやすくなるおそれがあります」と、同大学がん研究所のティモシー イェットマン教授は言う。

 研究グループは、毎日の食事で超加工食品を減らして、加工度の低い健康的な食品をバランス良く食べるようにすることを勧めている。加工度の低い食品として、ホウレンソウや芽キャベツなどの野菜、海藻類、サーモン・カニ・ハマグリなどの魚介、脂肪の少ない肉などを挙げている。

 さらに、肉などの動物性食品に含まれる飽和脂肪酸を減らして、トランス脂肪酸を避け、魚の油などに多く含まれるn-3系脂肪酸や、リノール酸やリノレン酸などの植物由来のn-6系脂肪酸をとるようにすると、炎症を抑えられる可能性があるとしている。

ACS Study Finds Early-Onset Colorectal Cancer Cases Surge Globally (米国がん協会 2024年12月11日)
Colorectal cancer incidence trends in younger versus older adults: an analysis of population-based cancer registry data (Lancet Oncology 2025年1月)
Association between body mass index and the colorectal cancer risk in Japan: pooled analysis of population-based cohort studies in Japan (Annals of Oncology 2012年2月)
Diabetes mellitus and cancer risk: Pooled analysis of eight cohort studies in Japan (Cancer Science 2013年7月26日)
High intake of dietary fiber and whole grains associated with reduced risk of non-communicable diseases (Lancet 2019年1月10日)
Carbohydrate quality and human health: a series of systematic reviews and meta-analyses (Lancet 2019年2月2日)
New Report Finds Whole Grains Lower Colorectal Cancer Risk, Processed Meat Increases Risk (米国がん研究所 2017年9月7日)
ミリオン女性研究
Diet-wide analyses for risk of colorectal cancer: prospective study of 12,251 incident cases among 542,778 women in the UK (Nature Communications 2025年1月8日)
How ultra-processed foods may drive colorectal cancer risk (サウスフロリダ大学 2024年12月10日)
Integration of lipidomics with targeted, single cell, and spatial transcriptomics defines an unresolved pro-inflammatory state in colon cancer (Gut 2024年12月20日)

[Terahata]
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