[高血圧・肥満・喫煙・糖尿病]は日本人の寿命を縮める要因 4つがあると健康寿命が10年短縮

▼高血圧、▼肥満、▼喫煙、▼糖尿病のすべてがあてはまる人は、健康寿命が男性で9.7年、女性で10.1年、それぞれ短くなることが、東京科学大学などの研究により明らかになった。
▼血圧値を管理する、▼血糖値を管理する、▼健康的な体重を維持する、▼タバコを吸わないといった対策が、健康寿命を延ばすために必要であることがあらためて示された。
高血圧・肥満・喫煙・糖尿病は日本人の寿命を縮める要因
▼高血圧、▼肥満、▼喫煙、▼糖尿病のすべてがあてはまる人は、健康寿命が男性で9.7年、女性で10.1年、それぞれ短くなることが、日本人の健康寿命や生活習慣病に影響を与える要因を明らかにするために実施されているコホート研究「NIPPON DATA90」に参加した6,569人を20年間追跡した調査で明らかになった。
▼血圧値を管理する、▼血糖値を管理する、▼健康的な体重を維持する、▼タバコを吸わないといった対策が、健康寿命を延ばすために重要であることがあらためて示された。
健康寿命は、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のこと。健康日本21では、「日常生活に制限があること」が不健康と定義されている。NIPPON DATA 90では、基本的日常生活動作を評価するための尺度のひとつである「カッツ日常生活動作」が用いられている。
4つの要因のある人は健康寿命が10年短くなる
研究グループは今回、NIPPON DATA90の20年間の追跡データを分析し、全国300地区の6,569人を対象に、日本人での血圧、肥満度、喫煙状況、糖尿病の組み合わせが、65歳健康寿命に与える影響を明らかにした。
NIPPON DATA90の対象者は、1990年に国が実施した循環器疾患基礎調査および国民栄養調査の参加者で、全国から無作為抽出された300地区の一般住民。5年ごとの追跡調査で、生死と死因の追跡、および日常生活動作(ADL)、生活の質(QOL)などが調査されている。
その結果、血圧が160/100mmHg以上のII/III度高血圧、体格指数(BMI)が30以上の肥満、喫煙習慣、糖尿病のすべてに該当する群の65歳健康寿命は、これら危険因子をまったくもたない群に比べて、男性で9.7年、女性で10.1年短いことが明らかになった。
高血圧は、糖尿病や喫煙と並んで、日本人の健康寿命に大きく影響している。
日本高血圧学会の高血圧診断基準は次の通りで、診察室での最高血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、または最低血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上の場合が高血圧と診断される。
自宅で測る家庭血圧の場合は、診察室よりも低い基準が用いられる。
糖尿病のある人は、高血圧が合併しやすく、糖尿病と高血圧があることで動脈硬化がさらに進みやすくなり、脳卒中や心筋梗塞、腎臓病などが引き起こされる危険性が高まる。血糖値と血圧値を適切に管理することが重要になる。
分類 | 診察室血圧 | 家庭血圧 | ||
---|---|---|---|---|
最高血圧 (収縮期血圧) |
最低血圧 (拡張期血圧) |
最高血圧 (収縮期血圧) |
最低血圧 (拡張期血圧) |
|
正常血圧 | <120 かつ <80 | <115 かつ <75 | ||
正常高値血圧 | 120-129 かつ <80 | 115-124 かつ <75 | ||
高値血圧 | 130-139 かつ/または 80-89 | 125-134 かつ/または 75-84 | ||
I度高血圧 | 140-159 かつ/または 90-99 | 135-144 かつ/または 85-89 | ||
II度高血圧 | 160-179 かつ/または 100-109 | 145-159 かつ/または 90-99 | ||
III度高血圧 | ≧180 かつ/または ≧110 | ≧160 かつ/または ≧100 | ||
(孤立性)収縮期高血圧 | ≧140 かつ <90 | ≧135 かつ <85 |
低体重も健康寿命に影響
研究グループは、日本人集団での非感染性疾患の主要危険因子である血圧、肥満度、喫煙状況、糖尿病の集積度に応じた65歳健康寿命を、192通りの体系的なチャートとして示した。
なお、肥満度については、低体重が健康寿命の短縮に影響を及ぼすことも示された。低体重は、病気による体重減少を反映している場合も考えられる。
肥満については、普通体重と同程度の健康寿命であることが示されたが、この結果は、日本人では肥満者の割合が欧米に比べて少ないため、明確な影響があらわれにくかった可能性があるとしている。
やはり健康的な体重を維持して、肥満ややせを避けることが大切だ。
日本からエビデンスを発信
研究は、東京科学大学大学院保健衛生学研究科公衆衛生看護学分野の月野木ルミ教授、東邦大学医学部社会医学講座医療統計学分野の村上義孝教授、滋賀医科大学NCD疫学研究センターの三浦克之教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Epidemiology」にオンライン掲載された。
研究グループは、「今回の研究成果は、健診結果を活用した保健指導や診療での生活習慣改善・治療の動機づけ、また各自治体の健康づくり活動への応用が期待されます」と述べている。
「今回の研究で用いた主要危険因子以外にも、健康寿命に影響を与える要因は多岐にわたることが知られています。今後もこれらの要因が健康寿命に与える影響について検討を進め、日本からのエビデンスを発信し続けていきたいと考えています」としている。
東京科学大学大学院保健衛生学研究科
Comprehensive assessment of the impact of blood pressure, body mass index, smoking, and diabetes on healthy life expectancy in Japan: NIPPON DATA90 (Journal of Epidemiology 2025年1月11日)


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