ニュース
「子宮頸がん」の抗ウイルス薬の開発に成功 年内に治験を開始する予定
2018年05月23日
子宮頸けいがんの前がん病変を抑える抗ウイルス薬を開発したと、京都大学のチームが発表した。今年度中に京都大学病院で臨床試験(治験)を始め、3年以内の実用化を目指す。
子宮頸がんの罹患者数は今後も増加が続く
子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によっておもに引き起こされるウイルス性のがん。HPVは性交渉により感染し、多くの場合⾃然に消失するが、子宮頸部の上⽪組織で持続感染が起こることがある。
そして、数年の期間をかけて前がん病変である「子宮頸部異形成」(CIN)を経たのち、⼀部の症例では子宮頸がんへと進展する。
子宮頸がんは年間約1万人が罹患し、約2,900人が死亡しており、患者数・死亡者数とも近年増加傾向にある。とくに20歳~40歳台の若い世代での罹患の増加が著しい。
HPV感染予防ワクチン(子宮頸がんワクチン)の導⼊が世界で進みつつあるが、日本での普及率は0.5%を下回っている。そのため、子宮頸がんの罹患者数は今後も増加が続くと予想される。また、いったんHPVに感染した⼈では、HPVワクチンによる予防効果を得られない。
前がん病変であるCINの治療は、子宮頸部を部分切除することが⼀般的だが、子宮頸部の機能が損なわれることにより、⼀定の割合で早産・流産などの周産期予後のリスクが生じる。
関連情報
年度内に治験を開始する予定
そのため、HPVに対する抗ウイルス薬による、切除を行わず体を傷つけない新しい治療法が望まれている。研究グループは、これまでに抗ウイルス活性のあるCDK9阻害剤「FIT-039」が抗HPV活性を示し、新たな治療薬となりうることを確かめていた。
多くのウイルスは感染したヒトの細胞がもつタンパク質の一種であるCDK9を利用して増殖する。CDK9の働きを妨げる化合物を投与すると、ウイルスの増殖を抑制する効果を得られる。
新しい抗ウイルス薬FIT-039はCDK9を標的としており、ウイルス性疾患の治療薬となる可能性がある。
がんと関連するHPV型(おもに16・18型)は⼝腔・⽣殖器などの粘膜上⽪組織に感染する。研究チームは、FIT-039によるHPVを抑える効果を調べるために、粘膜上⽪⾓化細胞にHPVを導⼊してFIT-039の効果を調べた。
その結果、細胞増殖やCINの特徴である異形成が抑えられるなど、治療の効果があることが分かった。
また、マウスにおける子宮頸がん細胞のゼノグラフト腫瘍でもHPV感染腫瘍の増殖を抑えられることが分かった。FIT-039の投与による有害事象はみられなかった。
現在、京都大学ではCINに対する治療効果を確認する治験を計画しており、年度内に開始される予定だ。
研究は、京都⼤学⼤学院医学研究科の萩原正敏教授と網代将彦特定助教らの研究グループによるもので、医学誌「Clinical Cancer Research」に発表された。
CDK9 Inhibitor FIT-039 Suppresses Viral Oncogenes E6 and E7 and Has a Therapeutic Effect on HPV-Induced Neoplasia(Clinical Cancer Research 2018年4月30日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2024 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「健診・検診」に関するニュース
- 2023年08月09日
-
8020達成率は5割以上 若い世代の歯周病増、口腔ケアが課題に
厚労省「令和4年歯科疾患実態調査」より - 2023年08月08日
- 若い世代でも「脂肪肝疾患」が増加 やせていても体脂肪が蓄積 肥満とどう違う?
- 2023年07月28日
- 2022年度版「健診・保健指導施設リスト」状況を報告します【保健指導リソースガイド】
- 2023年07月24日
- 標準体重でも3分の1は実は「肥満」 BMIは健康状態をみる指標として不十分 やせていても安心できない
- 2023年07月11日
- 自治体健診で高齢者のフレイルを簡便に判定 「後期高齢者の質問票」でリスクが分かる 「フレイル関連12項目」とは?
- 2023年06月20日
- 肝臓学会が「奈良宣言2023」を発表 肥満・メタボの人は「脂肪肝」にもご注意 検査を受けることが大切
- 2023年06月12日
- 自治体健診で「心房細動」を早期発見 健康寿命と平均寿命の差を縮める 日本初の「健康寿命延伸事業」 大分県
- 2023年06月05日
- 要介護認定リスクと関連の深い健診6項目が明らかに 特定健診・後期高齢者健診のデータから判明 名古屋市
- 2023年05月19日
- 令和4年度「東京都がん予防・検診等実態調査」 受診者増加のための取組み率は健康保険組合で85%に上昇
- 2023年05月18日
-
さんぽセンター利用の5割以上「健診結果の措置に関する説明力が向上」
-『令和4年度産業保健活動総合支援事業アウトカム調査報告書』-