ニュース
人工知能(AI)で胎児の「心臓異常」を出生前に検知 早期治療を可能に
2018年09月26日

理化学研究所は、人工知能(AI)を用いて胎児の心臓異常をリアルタイムに自動検知するシステムを開発したと発表した。
胎児の「先天性心疾患」は出生前の早期診断が重要
生まれつき心臓の形と機能に異常のある「先天性心疾患」は、生まれてくる胎児100人に1人の割合で発症する頻度が高い疾患だ。
先天性心疾患の治療では、胎児期に早期診断することで、出生前から治療計画を立てることが重要となる。
近年、小児循環器内科や小児心臓血管外科の治療技術の進歩により、先天性心疾患の新生児に治療を施した際の予後が著しく改善している。
さらに、胎児期に診断され出生直後から1週間以内に治療を行うと、出生後に診断され手術などの治療を行った場合に比べ、治療成績が良好であるということも分かっている。
そのため、早期診断後に、産婦人科・小児循環器内科・小児心臓血管外科の協力のもと、出生前より綿密な治療計画を立てる必要がある。
心臓超音波検査は高度な技術が必要
しかし、胎児の心臓は小さく、複雑で動きが速いため、超音波検査での観察には高度な診断技術が必要とされ、検査者間で技術力に大きな差があるのが課題になっている。
また、昨今の日本における産婦人科医の減少・都市部への偏在による人材不足も相まって、地域間で受けられる医療レベルに格差が生じている。
今回の理化学研究所の研究は、「先天性心疾患」のいまだ満たされていない医療ニーズに応えるものだ。
関連情報
人工知能(AI)によりエキスパートと同じ診断が可能に
近年、急速に進歩している「ディープラーニング」(深層学習)に代表される「機械学習」の技術が注目されている。
機械学習に必要な正常データと異常データを十分に(それぞれ10万以上)集めることができれば、人工知能(AI)技術により、人間の能力を大幅に超える認識精度が実現可能で、一部の疾患ではすでに実用化されている。
正常胎児の心臓の構造には個体差が少なく、心臓の同じ位置に同じ弁や血管などの部位が存在する。
超音波専門医など胎児心臓超音波診断エキスパートは、重篤な症例ごとに、どの部位がどの位置に映るか、あるいは映らないかを熟知し、超音波動画像からその兆候を発見する。
先天性心疾患の見落としを防ぎ治療計画を立案

地域間の医療格差や医師不足にも対応
今後、昭和大学病院4病院の産婦人科で実証試験を本格的に進め、数十万枚もの胎児超音波画像を追加取得しAIに学習させることで、スクリーニング精度の向上・実証と検査対象の拡大を図る予定。
さらに、2020年度までに富士通のAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」への適用を行い、クラウド、オンプレミス、超音波機器メーカーとの提携など、多様な形態でAIによる胎児心臓超音波スクリーニングの世界に先駆けた社会実装(早期臨床応用)の実現を目指すとしている。
研究グループは、「本システムの社会実装により、検査者のトレーニングやクラウド化による遠隔診断の実現で、地域間の医療格差の大幅な是正が行われ、医師不足に悩む周産期、新生児医療の発展を通して、さらなる安全な妊娠・出産の実現が期待できる」と述べている。
この研究は、理化学研究所革新知能統合研究センターがん探索医療研究チームの小松正明研究員、浜本隆二チームリーダー、理研AIP-富士通連携センターの原裕貴副連携センター長、昭和大学医学部産婦人科学講座の松岡隆准教授らの共同研究グループによるもの。
理化学研究所革新知能統合研究センター理研AIP-富士通連携センター
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2019 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「保健指導リソースガイド」に関するニュース
- 2019年02月20日
- 府民のための健活マイレージ「アスマイル」が始動 700万人の健康づくりを支援 大阪府
- 2019年02月20日
- 高カロリーの清涼飲料は肥満やメタボの敵 腎臓病のリスクも高める
- 2019年02月20日
- 認知症と腸内細菌が強く関連 認知症患者で少ない菌が判明 長寿医療研究センター
- 2019年02月19日
- アルコールががんや生活習慣病を引き起こす「少酒の勧め」 全国生活習慣病予防月間2019 公開講演会 レポート
- 2019年02月15日
- 【書籍プレゼント】保健指導リソースガイド10周年特別企画 第1弾!『保健師と放射線 すぐ使える講義・演習・事例検討』を10名様にプレゼント
- 2019年02月13日
- 子宮頸がんは2000年を境に増加 世界では31万人超が死亡 専門家は「早期診断とHPVワクチンの普及が欠かせない」と強調
- 2019年02月13日
- 低所得が糖尿病リスクに 1.2〜1.4倍の格差 ストレスや就労困難が原因か?
- 2019年02月13日
- 地域活動に参加する高齢者はうつになりにくい ソーシャル・キャピタルの整備が必要 3万人を調査
- 2019年02月13日
- 「脂肪の味」は6番目の味覚 味覚に敏感になると食欲を抑えられる?
- 2019年02月13日
- 後期高齢者の6割が3疾患以上の慢性疾患を併存 後期高齢者約131万人分のレセプト情報を分析
最新ニュース
- 2019年02月21日
- 【参加者募集中!】第5回年次講演会/医療や保健指導の現場で役立つプログラム「スローカロリーのアンケート結果」も発表
- 2019年02月21日
- 【健やか21】梅毒予防に向けた啓発動画の作成について(東京都)
- 2019年02月20日
- 府民のための健活マイレージ「アスマイル」が始動 700万人の健康づくりを支援 大阪府
- 2019年02月20日
- 高カロリーの清涼飲料は肥満やメタボの敵 腎臓病のリスクも高める
- 2019年02月20日
- 虐待対策ワーカー配置など児童相談体制強化に向けた取組を強化―東京都
- 2019年02月20日
- 認知症と腸内細菌が強く関連 認知症患者で少ない菌が判明 長寿医療研究センター
- 2019年02月19日
- アルコールががんや生活習慣病を引き起こす「少酒の勧め」 全国生活習慣病予防月間2019 公開講演会 レポート
- 2019年02月15日
- 【書籍プレゼント】保健指導リソースガイド10周年特別企画 第1弾!『保健師と放射線 すぐ使える講義・演習・事例検討』を10名様にプレゼント
- 2019年02月14日
- 風疹のワクチン接種と妊婦への予防を呼びかけ―先天性風疹症候群の報告を受け
- 2019年02月14日
- 【健やか21】シンポジウム「社会で守る子どもの安全 〜『ネットの声』を分析してみてわかったこと〜」3/3(日)
- 2019年02月13日
- 子宮頸がんは2000年を境に増加 世界では31万人超が死亡 専門家は「早期診断とHPVワクチンの普及が欠かせない」と強調
- 2019年02月13日
- 低所得が糖尿病リスクに 1.2〜1.4倍の格差 ストレスや就労困難が原因か?
- 2019年02月13日
- 地域活動に参加する高齢者はうつになりにくい ソーシャル・キャピタルの整備が必要 3万人を調査
- 2019年02月13日
- 「脂肪の味」は6番目の味覚 味覚に敏感になると食欲を抑えられる?
- 2019年02月13日
- 後期高齢者の6割が3疾患以上の慢性疾患を併存 後期高齢者約131万人分のレセプト情報を分析
- 2019年02月07日
- 【PR】 【資料ダウンロード開始】健康的にダイエット! 保健指導で活用したい「おにぎりダイエット」のススメ
- 2019年02月07日
- 【健やか21】第71回「保健文化賞」の募集について
- 2019年02月06日
- H31年度実施を目指す未就園児等全戸訪問事業で児童虐待を防止
- 2019年02月06日
- 特設ページ「妊産婦のための食習慣」を開設~健やか親子21公式HP
- 2019年02月05日
- 高齢者は運動をどこまでできる? 強めの運動でも楽しんで続けられる
- 2019年02月05日
- 宮城県がメタボ対策のアプリを配信 働き盛り世代に「あと1500歩 歩こう」
- 2019年02月05日
- 牛乳やヨーグルトの成分が炎症を抑制 血管を改善し脳の活性化にも効果的
- 2019年02月05日
- 母親のストレスが子どもの肥満に影響 生後1歳までがとくに重要との結果に
- 2019年02月05日
- 「適正受診が医療を守る~上手な医療のかかり方~」へるすあっぷ21 2月号
- 2019年02月03日
- 大人のがん教育への活用も。がん医療の現状とサバイバーの今をていねいに描くドキュメンタリー映画「がんになる前に知っておくこと」を鑑賞して
- 2019年01月31日
- 【健やか21】子ども予防接種週間(3/1~3/7)/低年齢層の子供の保護者向け普及啓発リーフレット
- 2019年01月30日
- 肥満より怖い「サルコペニア肥満」 食事と運動で筋肉低下を予防
- 2019年01月30日
- 糖尿病発症の予測アプリは「医療機器」ではない スマホアプリにも規制の波
- 2019年01月30日
- 健保組合加入者の37%が肥満 健診検査値で「リスクなし」は19% 健保連
- 2019年01月30日
- すべてのがん患者は運動を治療として行うべき 運動が乳がん患者のQOLを改善 欧州臨床腫瘍学会
~保健指導・健康事業用 教材~
-
アイテム数は2,800以上! 保健指導マーケットは、健診・保健指導に役立つ教材・備品などを取り揃えたオンラインストアです。 保健指導マーケットへ