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母乳で育てた女性は脳卒中リスクが低下 8万人を12年以上調査

 子どもを母乳で育てた女性は、閉経して60歳頃になると、脳卒中の発症リスクが低下するという研究が発表された。授乳には脳卒中に対する保護作用がある可能性がある。
長期にわたる母乳育児をした女性は健康的
 「女性の健康寿命を延ばすために、健康的な習慣により脳卒中の危険性を減らすことが必要です。一方で、授乳には女性の健康を促進する働きがあることが多くの研究で示されています」と、カンザス大学公衆衛生大学院予防医学部のリセット ジェーコブソン氏は言う

 母親が授乳によって、主に心血管系疾患のリスク低下という、潜在的な保護作用を得られるという研究は過去にも報告されている。さらに、9ヵ月以上の授乳により短期的に高血圧や高血糖が改善し、メタボリックシンドロームが減少することも明らかになっている。長期にわたる母乳育児をした女性は、2型糖尿病と産後体重増加のリスクが低下するという報告もある。

 しかし脳卒中のリスクについて調べた研究は少ない。「今回の研究は、母乳で子どもを育てた女性は脳卒中のリスクも低下することを示した最初の研究です。そしてそのリスク低下の程度は民族によって差があることが分かりました」と、ジェーコブソン氏は述べている。

 この研究は、女性の健康増進の方策をさぐる目的で、米国立衛生研究所(NIH)などが1991年に開始した大規模研究「女性の健康イニシアチブ」(Women's Health Initiative)の一環として行われた。

関連情報
授乳の期間が長いほど脳卒中の発症が減少
 調査は、1人以上の子どもを産んだ経験のある、平均年齢63.7歳の閉経後の米国人女性8万191人を対象に行われた。

 4万6,699人(58%)が母乳で子どもを育てており、うち51%が1~6ヵ月の授乳を、22%が7~12ヵ月の授乳を、27%が13ヵ月以上の授乳を経験していた。

 12.6年の追跡期間に、2,699人(3.4%)が脳卒中を発症。解析した結果、授乳をした経験のある女性は、脳卒中の発症率が23%減少することが分かった(HR 0.77、95%信頼区間(CI) 0.70-0.83)。

 授乳の期間が長いほど、脳卒中の発症が減ることも分かった。脳卒中のリスクは、母乳で子どもを育てなかった女性に比べ、1~6ヵ月の授乳をした女性で19%低下し(HR 0.81、95%CI 0.74-0.90)、7~12ヵ月の授乳をした女性で25%低下した(HR 0.75、95%CI 0.66-0.85)、13ヵ月以上の授乳をした女性で26%低下した(HR 0.74、95%CI 0.65-0.83)

 またこの関連は、非ヒスパニック系黒人女性でもっとも強く、脳卒中リスクは48%低下した。
「少なくとも6ヵ月間は授乳を続けて」とアドバイス
 今回の研究は観察研究であるため、授乳と脳卒中リスクの因果関係は不明であるが、「母乳で育てることが女性の健康増進につながる、何らかの生物学的メカニズムがあると考えられる」という。

 米国小児科学会(AAP)や世界保健機関(WHO)は、乳児の健康の観点から生後6ヵ月間は母乳で育て、母乳栄養を1年以上続けることを推奨している。

 米国腎臓学会(AHA)は「母乳育児は子供にとって健康的であるだけでなく、母親が年齢を重ねてから心臓発作や脳卒中を発症する危険性を低下させる可能性がある」と指摘。

 AHAは母乳育児を12ヵ月行い、生後4~6ヵ月以降は他の栄養源を追加し、微量栄養素を十分に摂取させることを推奨している。

 研究者は、授乳をした女性はそうでない女性に比べ、喫煙率が低く、BMI(体格指数)が低く、研究的な食事をとり、運動の実施率も高い傾向があることを指摘。
日本でも「授乳経験のある女性は死亡リスクが低下」という結果に
 脳卒中を予防するために、健康的な食事、適度な運動、血糖値やコレステロール値を正常に保つことが必要となる。「今後はより詳しい調査をする必要がある」としながらも、「子どもを母乳で育てることも女性の健康増進では重要である可能性がある」としている。

「母親は自分と子供の健康を保つために、少なくとも6ヵ月は授乳を続けることを考慮してほしい」と、ジェーコブソン氏はアドバイスしている。

 今回の研究は日本人女性を対象としたものではないが、日本でも国立がん研究センターなどが実施している「JPHC」研究で、出産経験がある日本人女性はそうでない女性に比べ、心疾患や脳卒中、がんによる死亡リスクが低い傾向があり、授乳経験のある女性でこの傾向が顕著であることが示されている。

 この研究は、40~69歳の日本人女性4万149人を対象に、平均で20.9年追跡して調査したもの。授乳経験がある女性では授乳経験がない女性と比べて、死亡リスクは19%低いことが示された。

 研究者はその背景として、親となったことで意識や生活習慣が向上した可能性や、エストロゲンや授乳中に分泌されるオキシトシンなどのホルモンによる影響を挙げている。

Breastfeeding may help protect mothers against stroke(米国心臓学会 2018年8月22日)
Breastfeeding History and Risk of Stroke Among Parous Postmenopausal Women in the Women's Health Initiative(Journal of the American Heart Association 2018年8月22日)
Breastfeeding(世界保健機関)
[Terahata]

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