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大人のがん教育を始めよう がん患者の就労問題に取り組む企業を支援 がん対策推進企業アクション

 がん対策推進企業アクションは11月に東京大学医学部附属病院で、2018年度メディアセミナー「今から始めよう! オトナのがん教育」を開催した。
 がん治療と仕事との両立についての体験談を講演するなど、啓蒙活動を行っているがんサバイバー9人が紹介された。
がんと前向きに取り組む社会を醸成するために
 日本はがん死亡者数が年々増加を続けているが、がん検診受診率はOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で最低レベルにとどまる。

 厚生労働省が推進する「がん対策推進企業アクション」は、がん検診の重要性を啓発し、企業でのがん対策をサポートするために立ち上げられた。

 企業にとって、がんによる人材喪失リスクは上昇の一途をたどっている。このアクションは、職域におけるがん検診受診率を企業連携で引き上げ、がんと前向きに取り組む社会気運を醸成することを目的としている。

 アクションでは、推進パートナーとなる企業の募集が行われている。推進パートナーになることで、事業面では▼がんの早期発見・早期治療による人財損失の回避と経営基盤の安定確保、社会面では▼CSR(企業の社会的責任)をはたす企業として好イメージを確立できるなど、大きな効果を得られるとしている。

関連情報
今から始めよう「大人のがん教育」
 日本人の生涯がん罹患リスクは、男性で62%、女性で46%と高水準にあり、がんによる死亡者は年間約38万人で年々増え続けている。にもかかわらず、がん検診受診率は向上していない。

 セミナーでは、がん対策推進企業アクションの事務局長を務める大石健司・東京大学病院放射線科准教授が、日本のがんに対するヘルスリテラシーの低さを指摘。

 学校ではがん教育が行われている。2017年度に小・中・高等学校でがん教育が始まり、学習指導要領にも明記された。文部科学省の調査によると、5割を超える学校でがん教育が行わている。

 こうした教育を受けた子どもたちが増えることで、将来的にはがん対する知識が広がり、がん検診の受診率を引き上げられる可能性がある。

 「今後の課題は、職場での大人に対するがん教育。がんはわずかな知識の差が運命を分ける病気であり、適正な知識をもち検査と治療を受けることが重要」と、大石氏は強調する。

 「企業が率先してがん検診受診の大切さを呼びかけることにより、受診率50%以上を目指す」としている。
がんはいまや「長く付き合う病気」
 一般にはがんは怖い病気だというイメージがもたれているが、本庶佑氏のノーベル賞受賞が記憶に新しい免疫チェックポイント阻害薬など、がん医療は目覚ましく進歩している。いまやがんの5年生存率は全体で65%に、早期がんであれば5年生存率は95%に向上している。

 がんはいまや共生が可能な病気であり、「長く付き合う病気」になりつつある。企業に求められているのは、がん患者が仕事と治療を両立できる環境作りだ。

 日本人でもっとも多いがんは、近年までは胃がんだったが、ピロリ菌保菌者の減退により10年で年齢調整死亡率は3分の2まで減った。

 一方、大腸がんは年間5万人強が死亡している。米国では大腸がん検診を受ける人が多く、死亡率の低下につながっている。日本のがん対策は立ち遅れている。

 がんを発症した場合には、患者がしっかりとした知識をもち治療に取り組むことも望まれる。

 がんの治療は、手術と放射線治療、化学療法(薬物治療)が3つの柱となるが、それぞれの治療法にはメリットもデメリットもある。

 たとえば、ステージ1の子宮頸がんの治療では、欧米では放射線治療がメインとなるが、日本では手術が行われることが多い。患者側が治療方法に選択肢があることを知っておくことが大切だという。
仕事と治療を両立できる環境作りが必要
 当日、講演したがんサバイバーの1人は、2014年に人間ドックで胃がんがみつかり、胃の3分の2を摘出。職場復帰を果たし定年まで勤め上げた。

 がん検診の受診率をアップし、がん患者の就労を支援するために、自身の経験を伝えたいと応募。

 もう1人のがんサバイバーは、2016年4月に初期の乳がんとリンパ節転移がみつかり、左乳房全摘とリンパ郭清の後、化学療法を1年続けた。現在はホルモン治療中。

 「がん患者が治療と仕事を両立するため、がん教育や検診について正しい認識をもつことが大切。自分の経験から、仕事と治療は両立できることを伝えたい」と言う。

 乳がんを発症したもう1人の患者は、自己触診で乳房にしこりを発見、検査し1ヵ月後に乳がんが判明。抗がん剤治療の後、左乳房を全摘した。

 「会社側の理解が足りなく、家族よりも会社に伝える方が大変でした。仕事と治療の両立、子育ての経験をもとに、企業のがん対策やがん教育を進めたい」と話す。
人材が失われない、安心して働き続けられる会社づくり
 がん対策推進企業アクションの調査によると、がんと診断された従業員がいた企業は約半数に上る。しかし、実際に「がんと診断された従業員の有無」を把握している企業は全体の3割程度しかない。

 厚生労働省は2016年に「事業場における治療と職業生活の両立のためのガイドライン」を策定。がん、脳卒中、心疾患、糖尿病、肝炎などの治療が必要な疾病を抱える労働者に対して、事業場において適切な就業上の措置や治療に対する配慮が行われることを求めている。

 企業などに求められているのは、▼労働者や管理職に対する研修などによる意識啓発、▼労働者が安心して相談・申出を行える相談窓口の明確化、▼短時間の治療が定期的に繰り返される場合などに対応するため、時間単位の休暇制度、時差出勤制度などの検討・導入、▼主治医に対して業務内容等を提供するための様式や、主治医から就業上の措置等に関する意見を求めるための様式の整備――などだ。

 がん対策推進企業アクションでは、推進パートナーとして登録した企業・団体に対し、ポスターやニュースレター、メールマガジン、小冊子「がん検診のススメ」などの啓発ツールを無料で提供している。事業説明会、推進パートナー勉強会、全国7ブロックでのセミナーも実施。

 「がんについて正しく知ることで、人材が失われない、社員が安心して働き続けられる会社づくりができる。推進パートナーとしてがん検診受診率向上を目指す国家プロジェクトにぜひ参加してほしい」と呼びかけている。

がん対策推進企業アクション
事業場における治療と職業生活の 両立支援のためのガイドライン(厚生労働省)
治療と仕事の両立支援(労働者健康安全機構)
[Terahata]

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