ウォーキングなどの運動が肥満・高血圧などの慢性疾患のリスクを減少 座ったままの時間を減らして運動に置き換え
ウォーキングなどの運動を行う習慣があり、身体活動量が多い人は、19の慢性疾患のリスクが低いことが明らかになった。
座ったまま過ごす時間を1日に30分間減らして、体を動かす時間に置き換えるだけで、健康リスクを軽減できることも分かった。
どれだけ運動を行っているかなどについて、定期的に尋ねることは、その人の自覚を促し、運動や身体活動などの健康的な行動により多くの時間を費やすことにつながるとしている。
身体活動量が多い人は19の慢性疾患のリスクが低い
ウォーキングなどの運動を行う習慣があり、身体活動量が多い人は、糖尿病・肥満・高血圧・うつ病・がん・心血管疾患・呼吸器疾患など、19の慢性疾患のリスクが低いことが明らかになった。
逆に、運動不足で身体活動量の少ない人は、慢性疾患を発症するリスクが高いことも示された。
この結果は、米アイオワ大学ヘルスケア医療センターが、7,261人の患者を対象に実施している、運動習慣について尋ねる「エクササイズ バイタルサイン調査」で示されたもの。
運動ガイドラインでは、活発なウォーキング、自転車こぎ、動きのあるヨガ、水泳、テニスなどの球技など、中強度以上の運動を週に150分行うことが勧められている。
保健指導でどれだけ運動を行っているかを尋ねるのは効果的
「運動を行う習慣がなく、運動不足になっている人に対し、医師による運動処方や、地域の健康・保健関連の専門家による支援などを提供できるようにすると効果的と考えられます」と、同大学健康・ヒューマン生理学部のルーカス カー氏は言う。
「実際には、米国のほとんどの医療機関で、患者に運動を行う習慣があるかや、どれくらいの運動を行っているかなど、運動・身体活動について尋ねることをしていません」。
「タブレットなどを活用すれば、患者さんはそうしたアンケート調査に30秒もかからないで答えることができます」としている。
研究グループは、運動習慣についてのアンケート調査を受けたことのない3万3,445人の患者と比較する調査も行った。
その結果、アンケートに回答した患者は、健康状態がより良好で、若々しい傾向があることが示された。
「どれだけ運動を行っているかなどについて、定期的に尋ねることは、その人の自覚を促し、運動や身体活動などの健康的な行動により多くの時間を費やすことにつながる可能性があります」と、カー氏は指摘している。
心血管疾患や死亡のリスクは減少
1日のなかで座ったまま過ごす時間が長い人は、心血管疾患や死亡のリスクが高いことが、8万9,530人を平均8年間追跡した調査で明らかになった。
心血管疾患は、心臓の血管や心筋に異常が生じ、心臓に血液が十分に行きわたらなくなる病気。心血管疾患は、日本人にとっても死因の第2位で、とくに心筋梗塞は突然死の最大の要因とされている。
研究は、米国心臓病学会(ACC)が発表したもの。とくに座位時間が1日に10時間半以上と長い人は、心血管疾患や心不全を発症するリスクが高いことが示された。
「運動ガイドラインなどでは、運動を行うことを習慣にして、運動や身体活動の量を増やすことが推奨されていますが、座位時間をなるべく減らす必要があることも加えるべきです」と、マサチューセッツ総合病院の心臓専門医であるシャーン クルシッド氏は言う。
座ったまま過ごす時間を1日に30分間減らして、体を動かす時間に置き換えるだけで、心臓の健康リスクを軽減できるとしている。
活発なウォーキングなどの中強度以上の運動を毎日30分間行うと、心血管疾患による死亡のリスクは10%減少し、心不全のリスクは15%減少するという。
ゆっくりとした散歩や体操などの軽めの運動であっても、まったく体を動かさないのに比べ、心血管疾患による死亡のリスクは9%減少し、心不全のリスクは6%減少する。
研究グループは、英国で行われている大規模研究である英国バイオバンクに参加した、平均年齢が62歳の8万9,530人の男女のデータを解析した。参加者に活動量計を身に着けてもらい、7日間の体の動きを記録した。1日あたりの座位時間の平均は9.4時間だった。
Get moving! UI study finds physical activity reduces chronic disease risk (アイオワ大学 2025年1月2日)
Identifying Patients at Risk for Cardiometabolic and Chronic Diseases by Using the Exercise Vital Sign to Screen for Physical Inactivity (Preventing Chronic Disease 2025年1月2日)
Sitting Too Long Can Harm Heart Health, Even for Active People: Approximately 10 hours or more of sedentary behavior per day is associated with heightened risk of heart failure and cardiovascular death, even in those who regularly exercise (米国心臓病学会 2024年11月15日)
Accelerometer-Measured Sedentary Behavior and Risk of Future Cardiovascular Disease (Journal of the American College of Cardiology 2024年11月15日)
「特定保健指導」に関するニュース
- 2025年01月20日
- 高齢者の要介護化リスクを簡単な3つの体力テストで予測 体力を維持・向上するための保健指導や支援で活用
- 2025年01月20日
- 楽しい食事は骨粗鬆症の予防・改善に効果的 食事の「楽しみ」や「充足感」は大切 タンパク質をとることも
- 2025年01月20日
- ウォーキングなどの運動が肥満・高血圧などの慢性疾患のリスクを減少 座ったままの時間を減らして運動に置き換え
- 2025年01月14日
- 特定健診を受けた人は糖尿病と高血圧のリスクが低い 健診を受けることは予防対策として重要 29万人超を調査
- 2025年01月14日
- 子宮頸がん予防のHPVワクチンをもっと知って欲しい【キャッチアップ接種の期間が延長】
- 2025年01月14日
- 妊娠前の健康的な生活習慣が母子の健康リスクの低下につながる 妊娠前から健康的な習慣を1つでも増やすことが大切 エコチル調査
- 2025年01月14日
- コロナ禍で低所得の高血圧患者が医療機関の受診控え とくに女性は受診を控えるリスクが3倍超に上昇
- 2025年01月06日
- 「温泉療法」により⾼⾎圧が改善 ストレスによる睡眠障害を緩和 冬の温泉⼊浴では注意点も
- 2025年01月06日
- アルコールを適量飲んでいる人は肥満リスクが減少 ただし少しでも飲みすぎると健康は悪化 アルコールによる健康障害は深刻な問題に
- 2025年01月06日
- 愛情ホルモン「オキシトシン」が社会的つながりを強める 孤独は愛情ホルモンを減らす 動脈硬化にも影響