「新しい認知症観」普及へ 希望を持って自分らしく暮らせる社会に
『認知症施策推進基本計画』閣議決定
政府は昨年12月3日、『認知症施策推進基本計画』を閣議決定した。認知症になっても、希望を持って自分らしく暮らすことができるという「新しい認知症観」の普及を打ち出し、日常生活でのバリアフリー化や社会参加の機会を増やすなどの方向性を掲げた。
今後、各自治体が地域の実情や特性を踏まえ、認知症の方や家族の意見を起点として推進計画を作る予定だ。
「新しい認知症観」を明記
政府は2024年12月3日、『認知症施策推進基本計画』を閣議決定し、公表した。
基本計画は同年1月に施行された「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」に基づくもので、認知症本人や家族、関係する有識者で作る「認知症施策推進関係者会議」でまとめられた。計画は令和11(2029)年度までの5年間。
誰もが認知症になり得ることを前提に、認知症になった人も「個人としてできること・やりたいことがあり、住み慣れた地域で仲間と共に、希望を持って自分らしく暮らすことができる」という考え方を「新しい認知症観」として明記した。
平成16(2004)年、「痴呆」という用語は「認知症」に変更され、認知症に対する誤解や偏見の解消に努め、各般の施策を推進していくとされた。しかし、認知症になると「何も分からなくなり、できなくなる」という考え方が現在も根強く残っており、本人の意思が十分に尊重されず、地域で孤立しがちな状況となっている。
その現状を変え、認知症と共生していく社会へつなげることが、本計画の狙いだ。
12の基本施策と4つの重点項目
今回の基本計画では、認知症の人の視点に立って12の基本的施策を推進するとした。
たとえば、「認知症の人の生活におけるバリアフリー化の推進」の施策では、認知症サポーター養成や認知症の人が便利に移動できる交通手段の整備、使いやすい製品・サービスの開発を進める。
また、社会参加の機会を増やすためには、認知症の当事者同士で体験や思いを共有する「本人ミーティング」や、認知症と診断されて間もない人の相談に乗る「ピアサポート活動」を広げる。介護保険のデイサービスを利用しながら、地域で介護事業所・施設などの活動に参加し、謝礼を受け取る仕組みの普及も盛り込まれている。
また、重点的に取り組む目標として、①「新しい認知症観」の理解、②認知症の人の意思の尊重、②認知症の人・家族等の地域での安心な暮らし、④新たな知見や技術の活用―の4項目を挙げた。さらに、それぞれ達成状況をみる評価指標も設定した。
「認知症基本法」は、都道府県と市区町村に対し、基本計画に沿って、地域の実情や特性に応じて認知症の人や家族の声を聞きながら推進計画を策定するよう努力義務を課している。


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