楽しい食事は骨粗鬆症の予防・改善に効果的 食事の「楽しみ」や「充足感」は大切 タンパク質をとることも
骨粗鬆症のある人のための食事は、▼タンパク質の摂取量が多い、▼フレイル(虚弱)の状態ではない、健康関連のQOL(生活の質)が高いことが、食事関連のQOLの高さと関連することが、大阪公立大学が骨粗鬆症の通院患者を対象に行った調査で明らかになった。
「これまでの食事療法は、栄養素摂取量という生物学的側面を着目したものが主流でしたが、"食事の楽しみ"や"食事の充足感"といった観点に着目することも重要であることが分かりました」と、研究者は述べている。
「おいしい・楽しい」といった充足感のある食生活が大切
食生活には、生きていくために必要な栄養素を体内に取り込むという生物学的な意義があるほか、食文化や食事の楽しみから満足感を得ることや、食事の場でのコミュニケーションが社会とのつながりをもたらすといった多様な意義もある。
骨粗鬆症のある人のための食事は、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKなど、健康な骨を作るために必要な栄養素を過不足なく摂取することが重視される。
骨粗鬆症患者は、骨が脆くなっているだけでなく、低栄養状態や、加齢と疾患により虚弱状態にあることが多い。そのため健康的な日常生活の維持につながる食事療法が必要とされている。
一方、食生活が健康に与える影響について、栄養素の摂取量に着目した研究はこれまで多くが報告されているものの、食事の楽しみや充足感、食事環境、食の多様性などとの関連にも着目した検証は少ない。
そこで大阪公立大学は、骨粗鬆症の通院患者532人を対象に、食事の楽しみや充足感などと、栄養素の摂取状況、健康状態、主観的健康観との関連について検証した。
その結果、食事関連QOLが高いことは、▼タンパク質摂取量が多いこと、▼フレイル(要介護状態に至る前の可逆的な虚弱)の状態ではないこと、▼健康関連のQOL(生活の質)が高いことと関連することを明らかにした。
「研究結果は、おいしい・楽しいといった充足感を得られる食生活が、健康的な身体づくりや生活の質の向上につながる可能性があり、栄養素の摂取量だけでなく、食生活全般に着目した食事療法が、骨粗鬆症の治療で有効であることを示唆しています」と、研究者は述べている。
研究は、大阪公立大学大学院生活科学研究科の松本佳也准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Geriatrics & Gerontology International」にオンライン掲載された。
骨粗鬆症のある人の食生活の充実と健康状態の関連について検証
研究グループは今回、骨粗鬆症患者532人を対象にした1年間の前向きコホート調査のデータを用いて、▼食事の楽しみ、▼食事の充足感、▼食事環境、▼食の多様性の4つの側面を評価できる「食事関連QOL」という概念に着目して解析した。
骨粗鬆症の通院治療を受けている患者の、食事関連QOLと栄養素摂取状況、健康状態、個人が感じる身体面や精神面などの健康度合いを表す健康関連QOLを調査し、各要因との関連性を検証した。
さらに、食事関連QOLは、健康関連QOLに直接寄与するだけでなく、タンパク質摂取量やフレイルを介して間接的にも寄与する可能性もみいだした。
「研究結果により、ふだんから食事関連QOLの向上を意識することが健康的な生活につながる可能性が示されました」と、研究者は述べている。
「今後は調査対象を骨粗鬆症患者だけでなく、他の病気の患者や健康な人に広げ、食事関連QOLの意義を検証するとともに、どのような要因が食事関連QOLに影響するかを、介入研究も含めて検証していきます」としている。
大阪公立大学大学院生活科学研究科
Diet-related quality of life may directly and indirectly affect health-related quality of life through protein intake and frailty in patients with osteoporosis: Results from a prospective cohort study (Geriatrics & Gerontology International 2025年1月2日)
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