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腸内細菌がつくるアミノ酸が腎臓を保護 なぜ「発酵食品」は健康に良いのか

 腸内細菌によってつくられる「D-アミノ酸」が、腎臓を保護する働きをしていることを、金沢大学らの研究グループが世界ではじめて突き止めた。健康な食生活で腸内環境を整えることが、腎臓の健康にとっても有用であることが示された。
腎臓が体のホメオスタシス(恒常性)を維持
 最近の研究で、腸内にはさまざまな細菌生息しており、集団で生態系をつくり互いに作用したり、生体に影響を及ぼしていることが分かってきた。腸内に生息する細菌の集団は「腸内細菌叢」と呼ばれている。

 ヒトの体は約60兆個の細胞でつくられているが、腸内にはそれを超える数百兆個もの多様な細菌が共存している。腸はこうした細菌への反応を通じて、体の免疫をかたちづくる中心的な場所と考えられている。

 一方、腎臓は尿をつくり老廃物を体外へ排出するのに加え、全身の臓器と連携して生体のホメオスタシス(恒常性)を維持する働きをしている。たとえば、さまざまなホルモンを産生することで、骨髄から赤血球を産生させたり、ビタミンDを活性化して骨を丈夫にしたり、血圧の調整なども行っている。最近では、寿命そのものにも影響することも分かってきた。

 研究グループは今回の研究で、腸内細菌叢と腎臓の連関について解明しようと考えた。そのカギとなるのが、腸内細菌によってつくられる「D-アミノ酸」の働きだ。

 タンパク質の構成要素となるアミノ酸には、「L-アミノ酸」と「D-アミノ酸」の2つがある。これらの分子構造は左手と右手のような関係にあり、構造は同じだか性質は異なる。

 「L型アミノ酸」は体でタンパク質合成に利用されるに対し、「D-アミノ酸」はタンパク質合成には使われない。限られた生命現象で利用されていると考えられているが、その機能などはよく分かっていなかった。

関連情報
腸内細菌叢が腎臓を保護している 「D-アミノ酸」の働き
 近年の分析技術の発達により、生体内の約20種類全てのアミノ酸を「L-アミノ酸」と「D-アミノ酸」に識別できるようになり、「D-アミノ酸」が哺乳類の腸内細菌によって作り出されており、哺乳類が分泌する酵素によって腸内で調節されていることが分かってきた。

 金沢大学らの研究グループは、マウスに腎障害を誘発する処置を行い、腸内細菌叢がどのように変化するかを調べ、特定の腸内細菌が変化することを確かめた。さらに、腸内細菌をもたない無菌マウスに同じ処置を行うと、通常のマウスよりも腎障害が悪化することから、腎臓に対する何らかの保護的因子が腸内細菌から産生されていることが分かった。

 続いて、腸内細菌から産生される腎臓病に関連する因子を同定するために、アミノ酸網羅解析を行った。その結果、腸内細菌からさまざまな「D-アミノ酸」が検出され、腎臓ではそのうちのD-セリンが検出された。

 無菌マウスからはD-セリンが検出されなかったことから、D-セリンは腸内細菌によって産生され、血液を介して腎臓へ到達することが分かった。また、腎臓では腸内細菌由来のD-セリンに加えて、腎臓によるD-セリンの合成亢進も起きており、Dセリン濃度が上昇することを明らかにした。

 最後に、D-セリンの腎臓への作用を調べた。D-セリンを投与したマウスは、投与していないマウスに比べて、腎障害が軽減することが分かり、D-セリンが腎臓に対して保護的に働くことが明らかとなった。

 ヒトの急性腎障害の患者でも、血液中のD-セリンが健常者に比べて高い値を示し、腎臓病の指標であるクレアチニンと高い相関を示すことを確認した。ヒトの体でも、腸内細菌がD-アミノ酸を産生し、血液を介して腎臓を保護する仕組みが働いていると考えられる。
腸内細菌由来のD-セリンに腎臓を保護する作用がある
「D-アミノ酸」は発酵食品に多く含まれる
 最近の研究で、「D-アミノ酸」が生命現象のさまざまな局面で重要な働きをしていることが分かってきた。「D-アミノ酸」を合成できるのは細菌だけだ。

 発酵食品にも「D-アミノ酸」は多く含まれる。チーズやヨーグルト、納豆などに加え、味噌や醤油、漬物など、日本の伝統的な発酵食品にも多種類のD-アミノ酸が含まれることが報告されている。

 機能性だけではない。「D-アミノ酸」は、少量でも甘みやまろやかさを増す、食品のおいしさの元でもある。

 今回の研究は、「D-アミノ酸」が腸内環境を維持しているのに加え、腎臓を保護し、免疫システムや病気の成り立ちにも関わっていることを明らかにしたものだ。「D-アミノ酸」を通じた感染症の新たな治療法の開発が期待されている。

 研究は、金沢大学医薬保健研究域医学系の和田隆志教授と大学院医薬保健学総合研究科医学博士課程の中出祐介氏が、早稲田大学理工学術院の服部正平教授、理化学研究所の須田亙研究員、岡山大学大学院環境生命科学研究科の森田英利教授、九州大学薬学研究院の浜瀬健司教授、北里大学薬学部の本間浩教授の研究グループと共同で行ったもの。

金沢大学大学院医薬保健学総合研究科
Gut microbiota–derived D-serine protects against acute kidney injury(Journal of Clinical Investigation Insight 2018年10月18日)
[Terahata]

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