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【取材】多職種連携でも必要な「保健師の技術の可視化」を考える【平成30年度 日本保健師連絡協議会】
2019年03月07日
日本保健師連絡協議会は3月2日、平成30年度活動報告集会を開催。「保健師の技術を可視化し、未来につなぐ」をテーマに、構成6団体の活動報告およびグループディスカッションを行った。
平成19年に発足し今年で12年目を迎える日本保健師連絡協議会は、保健師関連6団体で構成されている。本協議会では、各団体の連携を図るとともに課題の解決に向けて話し合い関係機関へ働きかける等、保健師の活動基盤と専門性の保証に向けて活動を行っている。
このほど開催された今年度の活動報告集会のテーマは、「保健師の技術を可視化し、未来につなぐ」。メインプログラムの話題提供と各団体の活動報告、そしてグループディスカッションを通して、本テーマを登壇者と参加者が一緒に考えた。
日本保健師連合協議会 構成団体(五十音順)・一般社団法人 全国保健師教育機関協議会
・全国保健師長会
・公益社団法人 日本看護協会
・一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
・一般社団法人 日本産業保健師会
・日本保健師活動研究会
時代に応じた国の施策と保健師の役割の変化
会の冒頭で厚生労働省健康局健康課 保健指導室長の加藤典子氏が登壇。少子高齢化および人口の減少が世界でもトップレベルに進んでいる日本において、時代の変化とともに保健師の活動内容も変化の時を迎えており、地域での連携等においても個々への関りとともに、ヨコのつながり、連携が重要と述べた。
また、同じく厚生労働省の労働基準局労働衛生課 産業保健支援室長の小沼宏治氏は、産業保健分野の視点からの情報を提供。本年4月から、心身の負担が増えている昨今の労働者への対策として働き方改革が施行されるなかで、各都道府県産業保健総合支援センターに常勤保健師の配置を進める等の国の施策を紹介した。小沼氏は、今後、産業保健師に求められるものが増え、その存在の重要性はさらに高まっていくと予想。そこで、関係各所との役割分担や連携が不可欠との見解を示した。
時代の変化に対応し厚生労働省は2017年4月、「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会 報告書」を取りまとめた。その中で看護師のキャリアの複線化・多様化として、その役割の大きさと、多職種連携の重要性を明記。
これを受けて2018年4月から開始された厚生労働省の看護基礎教育検討会では、保健師ワーキンググループが10年ぶりに設置された。
このように保健師の役割がクローズアップされ、多職種との連携が今後の保健師の活動においてより重要になっていくなかで、多職種から見ても分かりやすい保健師特有の技術を明確化することが肝要だ。しかし、看護師や助産師の技術のように明文化された定義が保健師の技術においては存在しない。そこで今年度の日本保健師連絡協議会のテーマは、「保健師の技術を可視化し、未来につなぐ」となった。
明確化が難しい保健師の技術の定義
公衆衛生看護技術開発研究会の岡本玲子氏は、保健師の公衆衛生看護技術について話題提供を行った。
岡本氏は、保健師の活動の技術が"見えにくい"ことを指摘。なぜ見えにくいかを次のように説明した。
「保健師は、"ものごとを良くする活動"を行っています。また、ターゲットは多様で常に変化しています。状況依存と予測不能性があり、その技術は可視化しにくいのです」。
さらに岡本氏は、保健師は自身の活動を他社に伝達する技術に関して遅れており、今後、日本保健師連合協議会における課題として取り組んでいくべきとの見解を示した。
「保健師の技術の可視化」と「未来につなぐ」具体的方法
多職種連携において保健師の技術の可視化は重要だが、その明文化は難しい。そこで、保健師が行った活動内容を具体的に明らかにすることにより、他の職種にはない保健師の仕事の独自性を伝えるという方法は有効だ。
日本保健師活動研究会は活動報告の中で、アンケート調査結果を発表。調査結果を分析すると、保健師の仕事の独自性が浮き彫りになった。
調査テーマは、「保健師が考える乳幼児健診の目的・意義」。結果から見えてきたのは、乳幼児健診において保健師は、疾患・異常の発見や親子の心身や生活状況の把握とともに、それらの健診結果を踏まえて支援の検討や連携各所との情報共有、支援や指導の際には親の想いの尊重や傾聴、寄り添い、安心感を与える等、心のケアもしているということ。
一般的に公衆衛生活動としての健診の目的は、「疾病や障害の早期発見、スクリーニング」だ。しかしこの調査により保健師は、その先にある支援や指導、心のケア等、複合的な目的・意義を持って活動していることが分かった。これは、保健師の独自視点であり、独自技術。アンケート調査によってこのような保健師の技術を明らかにすることができた。
全国保健師長会では災害時の保健師活動に焦点を当て、保健師の技術の可視化をしている。
1995年に発生した阪神・淡路大震災での保健活動をもとに、「災害時における保健活動のマニュアル」を作成。また、東日本大震災における保健師の体験記「希路」も発行している。
これらのマニュアルや体験記は保健師の活動内容を具体的に紹介することでその技術を周知できるとともに、現任保健師への情報提供にもなる。現任者教育ツールとしても活用が可能だ。本活動報告集会のテーマである「保健師の技術の可視化」と「未来につなぐ」の両立を実現している。
保健師の技術と能力
各団体からの発表等、メインプログラムの後は、参加者と登壇者を交えて6名程度のグループに分かれ、下記3つのテーマのもと、グループディスカッションを行った。
・保健師の技術の定義・保健師の能力と技術の違い
・保健師の技術を可視化する必要性の有無と、必要な場合の方法
ディスカッション後、各グループからの発表を受け全国保健師教育機関協議会の岸恵美子氏は、「保健師の技術の定義はまだ明確化されていませんし、明文化するのは非常に難しいです。しかし、グループディスカッションを通して、皆さんが考えている保健師の"あるべき姿"は一致していると感じました。保健師は、さまざまな技術を目的に合わせて組み合わせることで能力を発揮します。さらには、個々への対応だけでなく、ポピュレーションベースで活動することができます」と、まとめた。
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