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「2022年問題」に対策 団塊世代の後期高齢者入りに備えて健保組合が活動を強化

 団塊の世代が後期高齢者になりはじめて健保組合の拠出金が急増する「2022年危機」への対策が早急に必要であることが、健康保険組合連合会(健保連)が発表した2019年度「健保組合予算早期集計結果の概要」で明らかになった。すでに赤字の組合数は61%を超えている。
3年後に迫った「2022年危機」
 団塊の世代が後期高齢者になりはじめて健保組合の拠出金が急増すると見込まれているのが「2022年危機」だ。

 後期高齢者の伸びが一時的に鈍化する2021年までの間は、健保組合財政は高止まりの状態で急激には悪化しないものと見込まれている。しかし、人口のさらなる高齢化と現役世代の減少が進行するなか、とくに団塊の世代が後期高齢者に到達しはじめる2022年度から、全員が後期高齢者になる2025年度にかけて、後期高齢者の医療費が急増する。

 これにともない、後期高齢者支援金の急激な負担増、保険料率の大幅な上昇が予想されている。「2022年危機」は3年後に差し迫っている。保険料率の大幅な引き上げを余儀なくされ、健保組合の解散のリスクがよりいっそう高まる。早急な対応が必要とされている。

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健保組合の保険料率は2025年度には10%超
 健保連の試算によると、2022年度には高齢者医療への拠出金額が3兆9,343億円になり、義務的経費に占める拠出金の割合は49.6%(50%以上は733組合)となる。平均保険料率は9.8%、介護保険料率は2.0%になる。

 2019年度の経常収支は、経常収入8兆2,315億円(前年度に比べて0.09%増)、経常支出8兆3,301億円(同0.35%減)、経常収支差引額は986億円の赤字となる見込だ。赤字の組合数は856(61.7%)に上る。

 赤字額は前年度予算に比べ371億円減少した。大規模組合などの解散により被保険者数が大幅に減少したが、平均標準報酬月額および平均標準賞与額がそれぞれ1.66%、3.91%上昇し、平均保険料率が0.011ポイント増加したことが影響している。一方、支出面でも解散組合の影響を受け、拠出金が525億円、1.50%の減となった。

 全組合の平均保険料率は、2019年度には9.218%(前年度から0.011ポイント増加)となり、前年度に続いて5年連続で9%を超えた。

 国民医療費は2022年度には48.8兆円、2025年度には52.2兆円と予測されている。健保組合の保険料率は、2022年度には平均9.8%、2025年度には平均10.4%に上昇し、被保険者1人当たり保険料も2022年度には54.9万円、2025年度には58.5万円に増えると見込まれている。
「後期高齢者の医療費負担を原則2割に引き上げ」を要望
 政府は「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」を公表しており、2019~2021年度を社会保障改革を軸とする「基盤強化期間」と位置づけている。

 健保連では「早急に高齢者医療費の負担構造改革等に取り組むべき。負担構造改革による現役世代の負担軽減にあわせ、医療費の適正化や保険給付範囲の見直しなど多岐にわたる施策を講じることが不可欠」と強調。

 健保連や協会けんぽなど5団体は2018年5月に、医療保険制度の持続可能性を考慮し、75歳以上の後期高齢者の医療費一部負担を早急に「原則2割」に引き上げるとともに、高齢者医療制度への拠出金負担の軽減、医療費の適正化推進などを、骨太方針に盛り込むべき――という要望書を厚生労働大臣にあてて提出した。

 健保連は2019年2月には、「2022年危機」を乗り切るため、「2022年対策プロジェクトチーム」「保険者機能強化プロジェクトチーム」という2つのプロジェクトチームを常任理事会(要求実現対策本部)のもとに設置するなど、体制の強化をはかっている。

 政府が毎年策定している「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針)に健保連の主張をおりこむため、「組織をあげて政策実現活動にあたり、国・政府・世論などへの働きかけに注力していく」と提言している。

健康保険組合連合会
[Terahata]
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